あの夏の魔女の森へ
鬼容章
第1章 魔女の森入り
第1話 魔女の森入り(1)
幼馴染の
彼女は、新人看護師として働く成人女性だ。
だけど今、彼女の落ち着きない口調は、小学校の頃を思い出す。
「大変!
ディーゼルエンジン音のする
お尻がずり下がっていた。
冷静なフリをして、席に座り直し、俺は彼女に尋ねた。
「なぁ、
「
「うーん、そうみたい」
俺たちは
この先の
たぶん、運賃の清算も出来るだろう。何なら駅員さんから戻り方を教えてもらえるはずだ。
パニックになった
「心配すんなって。
「本当に……戻れるの?
「いや、そんなことは……記憶の限りではないとは思うけど……」
奇妙な現象に、俺も歯切れが悪くなる。
今、車内に運転手がいないのだ。
俺たちが乗り込んだときには、運転席に座っている男性運転手がいたはずだ。
列車が止まらない場合は、どうやってブレーキをかける?
そうだ、緊急連絡だ!
iPhoneを取ると、8月32日(金)11時52分、圏外の表示。
人生オワタ!
無情にも、車内に電子音声が流れた。
『つぎは
俺たちの心配をよそに、無人列車はちゃんと停まってドアが開いた。
駅の窓口まで行くと、駅員はいなかった。運賃の清算はどうしよう。
俺が驚いたままの顔をしていると、後ろから
「
「にゃわーッ!」
「あ、猫さん? ふふッ」
「おーい、
不思議な話だ。
神秘的な場所だから、逆に俺たちが
そりゃ、俺も猫みたいに驚くよ。
再会後はじめて、
大きい目が細くなるんで、相変わらず可愛い顔だな、と俺は思った。
まじまじと見過ぎていたのだろう。
彼女は不思議そうに、俺の顔を見返す。
「何を見ているの?」
「ごめん。混乱して、思考停止していた」
「ねぇ、
「高いところだし、何か分かるかも。で、どうやって、移動するんだよ?」
「
「フリーターだけど、一応持っているよ! もう~!」
不安になった俺は、怒りっぽい。
一方で、
これ、迷子がする反応だ。
車内の揺れが心地よくて、寝てしまった結果がこれだよ。
今のところ、フリーターの俺に良いところなし。
すぐに
「
「ペーパードライバーの俺が山道を運転するってかい。そもそも、車はどうすんのさ」
「駐車場で借りよう」
「他人がいないのに、車が借りられるってかー。都合良すぎるぜ、
「その通り! さすが、
謎のハイテンションな裕希に手を引かれて、恐る恐る、
やはり他人の気配がせず、町全体が異様な感じだ。
今の結論。
ここ、異世界の
俺が
俺は怖がりながら喜んだ。
「
「おお、良かったじゃん!」
2人とも、正気を失っていた。
車が手に入れば、さっさと国道105号線で
でも、異世界だと
うーん、山へ行くのが安パイか。
俺は
車の運転はかなり久々だったのに、夢のような感じで上手く出来た。
ここ、現実と夢が半々の世界なのかな。
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