Cフラットな番外編

畔戸 ウサ

いつかのクリスマス

 凍てつく街を鮮やかなグリーンのコートが通り過ぎて行く。


 一筆書きのように迷いのない速度を保ちながら緑の軌跡は信号機の前でようやく動きを止めた。楽しそうに笑いながら歩く人々には目もくれず、真帆は真一文字に口を結んで視線を前方に向ける。道の向こうに見えるイルミネーションの明滅が、先程見たエコー画像に重なった。


「八週に入っていますよ」


 笑顔で告げた医師の言葉を思い出して、真帆はマフラーに半分顔を埋めるようにして鼻をすすった。

 生理不順は昔からで、大して気にも止めていなかった。食欲がないのも気分が優れないのも、公演前にはよくあることだ。

 そして今日、昼食を食べた後に猛烈な嘔吐感に襲われてようやく異変に気付き、病院を受診した。悪いものでも食べたのだろう、と軽く考えていた。渡された問診票の『最終月経日は?』という質問を見るまでは。


 あの日、真帆はとにかく気分が良かった。演奏家として活動する中で、そうそう経験することがないほど、素晴らしい演奏ができたのだ。

 音の海にどっぷりと浸かり、身を委ね、指先が奏でる音は変幻自在で淀みもない。楽器が、音楽が、振動する空気が自分と溶け合って世界を彩っていく……そんな感覚に包まれて真帆は多幸感の中にいた。

 打ち上げの席でワインを飲み、そのままバーをハシゴして、そこで一人のジャズピアニストに出会った。父親が日本人だというそのピアニストは真帆よりも一周り年が上で、最近離婚したばかりだと言った。彼の演奏に聴き惚れ、流暢な日本語で語りかけられた真帆は、アルコールの影響と郷愁の念から警戒心を緩めてしまった。男が勧めるまま酒を飲み、酔っ払って羽目を外した。目覚めてみれば裸でベッドに横たわり、その隣にはあの男がいた。


 馬鹿だ。

 本当に自分は馬鹿だ。


 真帆の脳裏に浮かぶのは後悔ばかりで、そんなものをかき集めたところで、この現実は何一つ変わらない。

 何故、すぐに病院に行かなかったのか。あの時、アフターピルを処方してもらえばこんな事態には陥らなかった。

 忙しさにかまけて、先送りにしてしまった。まさか子供なんて出来るわけがない、と他人事のように思っていた自分の馬鹿さ加減を呪ってやりたい。避妊をしなければ、妊娠の可能性がある。小学校で習うような事がこの世の中では、もっとも重要だと今更になって思う。

 黒い瞳からこぼれ落ちた涙が、黄色と青のチェックのマフラーに吸い込まれた。

 妊娠したことを、マネージャーの香奈子に知らせると、程なくして母から電話がかかってきた。こんなこと、到底隠し通せるはずがない。師弟ではなく、雇用者と従業員でもなく、実の母に実の子として相談をしたかったのに、母は開口一番に「堕ろせ」と言ってきた。

 当然だ。

 この状況で、この年齢で望んでもいない子供など持つことなど真帆にも想像できなかった。自分でもそれが最善策だと頭の中ではわかっていた––––それなのに。

 真帆は会話の途中で電話を切り、折り返しのコール音を無視し続けている。

 考える時間がほしかった。


 ……考える? 何を?

 体を苛み、混乱しかもたらさない新しい命に猶予を与える必要などないはずなのに。


 大きな瞳から、また涙が溢れる。

 当てもなく歩いていた足は、気がつくと世話になっているコンセルヴァトリウムへと向かっていた。母の監視を逃れ、ゆっくり出来る場所は限られている。そんな中、真帆の心に思い当たったのが、恩師であるレナ・ルプレヒトの存在だった。

 母と同世代で、母と同じ楽器を演奏し、それでいて、母とは異なる人生の選択をした女性。

 散らばった思考を整理することも出来ず、何を求めてやってきたのかわからないまま、真帆は階段を登り、一つの扉をノックした。


「あら珍しい。どうしたの?」


 そして、この部屋の主人の姿を見た途端、それまで我慢していた涙が一気に溢れてきた。


「せ……んっ、せい……私……」


 胸に渦巻いていた感情が嗚咽になって言葉を遮る。五十代半ばのダークブロンドの女性は何も言わず真帆の元へ歩み寄り、背中にそっと手を当てた。しゃくりをあげて泣き続ける真帆を労るように見つめ、彼女は波立つ感情を鎮めるように背をさする。


「赤ちゃんがいるの……私の中に……気持ちが悪くなって……病院に行ったら……母は中絶しなさいって……」


 時系列もめちゃくちゃに、ただ思いつくまま言葉を絞り出す真帆を、先生と呼ばれた女性––––レナ・ルプレヒトはそっと抱きしめた。

 コンセルヴァトリウムの学科の中でも一番苦手だったピアノ。その指導教官であるレナ・ルプレヒトは真帆にとっては天敵のような存在だった。意見をぶつけ合って喧嘩したこともある。しかし、そんな時間の積み重ねが二人の間に師弟関係を超えた友情をもたらした。

 レナはプロのピアニストだ。結婚を機に表舞台から去った真帆の母とは違い、今も精力的に演奏活動を続けている。

 きっと、彼女も母と同じことを言うのだろう。

 真帆はそう思った。それでも彼女に会いに行ったのは、きっと、叱って欲しかったからだ。


『自分が何をしたか分かっているの⁉︎』

『明日にでも病院を受診しなさい!』


 そう言って、頬っぺたを叩いて、尻込みしている自分に喝を入れて、正気に戻して欲しかった。

 母も恩師もそう言うのだから、真帆よりもずっと先をゆく音楽家の先輩がそう言うのだから、仕方がないことなのだと、無理矢理にでも自分を納得させなければ、到底、自らの意思で芽吹いた命を摘むことなど出来そうになかった。


 レナは真帆の告白に目を瞠り、絶句したが、開口一番に子供を堕ろせなどとは言わなかった。


「とにかく落ち着いて。さぁ、座りましょう」


 そう言って、真帆を椅子へと導いて自分はサイドボードの一角に設けられた給茶セットへと向かった。


「寒かったでしょう? ココアを淹れるわ」


 大きなマグカップを2つ準備したレナは、ゴムで縛っていたココアの袋を開き、目分量でカップに粉を入れた。ふんわりと香る甘い臭いと、不器用なレナがココアを入れる様子に、真帆の嗚咽勢いも少しだけ衰えを見せる。


「相手は知っているの?」


 レナからの問いに真帆は無言のまま首を振る。


「初めて会った人なの。ジャズピアニストだって言ってた……連絡先も聞いてない」


「……どうするの?」


「わからない」


 ただ、彼が奏でるピアノに心を惹かれた。精密に計算され、洗練された自分の音楽とは全く違う。そして、何より、ピアノを弾く男は心底楽しそうで、ワインのアルコールに意識を揺蕩えながら、真帆はまだ、音楽が何物でもなかった子供の頃のことを思い出していた。

 渡独して音楽大学に通い、レナからも何度も問われた。


『あなたは何を表現したいの?』


 もう何年も前の事なのに、真帆は今になってレナが言っていた言葉が理解できたような気がした。

 自分の中にまだこれほどの感情が、言葉が眠っていた。人目も憚らず慟哭するような激しい思いに胸が苦しくなる日が来るなんて、想像もしなかった。


 自分は一体何者で、何を望んでいるのか。

 自分で選んだはずの人生が、いつの間にか母の意向を汲むようになっていたこと。


「産んだらきっと後悔する……」


 真帆は手の甲で涙を拭いながら答えた。


「……でも、産まなかったらもっと後悔する」


 まだ、イルミネーション程の小さな塊でしかない見も知らぬ命なのに、体はそれを受け入れ、育てようとしている。

 気持ちが追いつかない真帆を置き去りにして、明日になれば明日になった分、この子供は成長し、細い血管を真帆の胎内に張り巡らせていくのだ。


「……答えは出ているのね」


 レナは静かに、穏やかに、真帆の意見を受け止める。


「無理よ……子育てなんて、私には……」


 子供の頃は、大人になれば当然に結婚して子供を育てていけるのだと思っていた。でも、成人して真帆が感じたのは、大人は大して大人ではないということだった。

 真帆は他の同級生たちとは少し違う道を歩き、他では味わえない経験を積むことができた。それでも、他人から褒められたり頼られたりするような立派な人間に成長したという実感はない。

 あまつさえ、こんな事件を巻き起こし、途方に暮れている最中なのだ。そんな自分がたった一人で子供をまともに育てられるはずがない。

 甘い香りを放つマグカップを、両手で包み込むようにして真帆は首を振る。厭わしく感じることもあった母に、この時ほど一緒にいて欲しいと願ったことはなかった。寄り添って、話を聞いてほしい。自分が犯した過ちは反省している。でも、今現に、この身体の中に宿った命を、その重みを、否定することなく、正面から受け止めて考えてほしかった。


「マホ……」


 レナはそっと囁いて、真帆の肩に手を置いた。


「貴方はもう大人よ。自分で決めていいの」


 そう言って、涙に濡れた真帆の顔を覗き込む。


「一人が無理なら、二人で育てればいい」


 慈愛に満ちた瞳で笑いかけ、真帆を安心させるように背中をさする。


「私で良ければ力になるわ」


 信じられない言葉に、真帆はハッと顔を上げた。そんな事を望んでレナの元へときたわけではない。ただ、音楽家の先輩として……母親と同世代の人生の先輩として、アドバイスを求めたかっただけなのだ。


「違う……そうじゃないの。迷惑をかけたいわけじゃないの」


 真帆は子供のように頭を振った。

 しかし、レナは真帆の言葉を遮るように口を開く。


「この年になるとね、お友達に会っても孫の話ばかりなのよ」


 そして、はぁ、とため息を吐き、


「結婚しなかったことは悔やんでいない。でも、自分が選ばなかった人生を想像しない日はなかった」


 レナはささやかな秘密を打ち明けるように真帆に微笑んだ。

 

「夫がいたら……子供がいたら……一体どんな人生だっただろうって。人に誇れる人生を歩いてきたはずなのに不思議でしょう?」


 真帆は涙を拭ってレナの言葉を待った。

 ピアニストとして第一線を行くレナの人生は真帆がこの先歩む人生だ。レナは真帆を受け止め、女性として、友人として、語りかけてくれている。


「後悔しているわけではないのに、私に欠けているものがあるんじゃないかって、ずっとそんな気がしていたの。もう歳なのかしらね。音楽の深淵を見つめ続けることが、時々怖くなる時がある。昔みたいに、どこまでも探求することができないでいるの。旅立つことを……冒険することを私は躊躇している」


「先生……」


「貴方の中には未知の世界が沢山眠っている」


 泣き腫らした目は、子供のように無垢で淀みがない。レナにはそれが眩しく、そして希望の光のように見えた。


「マホ。私は貴方を支持します。どんな決断を下しても、ずっと貴方の味方よ」


 だから……


「強くなりなさい。何にも負けないように。本当の自分と向き合えるように」


 レナは真帆の頬にキスをして、ぎゅっと体を抱きしめた。

 そして、自分のマグカップを持って窓際まで移動すると、そこから見える景色に目をやった。真帆も釣られるようにそちらを見て、ココアを一口飲んだ。甘くて温かいココアの匂いがささくれだった心に染みる。

 いつの間にか窓の外には雪がチラつき初めていた。今更のように寒さを思い出して、真帆は再びココアを口に運んだ。


 窓際に立つレナは、今年も去年と同じ、山吹色のカーディガンを着ていた。ぼってりとした袖のカーディガンは彼女のお気に入りで、部屋にいる時はいつもこれを着ている。

 窓の外を見ていたレナの鼻歌が聞こえてきた。ドイツではポピュラーな聖ニコラウスの歌だった。

 今週はクリスマスだ。


「先生……私、考えてみる。ちゃんと……自分の心に聞いてみる」


「ええ。困ったらいつでも来なさい」


 レナは微笑み、そして、


「ついでにピアノの方も見てあげるわよ」


 指導教官らしく真帆に語りかける。


「ありがとうございます。でも、それはまたの機会に」


 真帆が即座に辞退すると、レナはプッと吹き出した。涙でぐちゃぐちゃの真帆も釣られるように微笑んだ。

 真帆はカップを両手で包み、レナの鼻歌を聞きながら、あの明滅を思い出していた。

 チカチカチカ……暗い海を漂う生命の信号だ。あの命は何を語っていたのだろう。聞いてみたい……不意にそんな感情が込み上げできて、真帆はココアの温かさと同じ温もりが自分の中に生まれていることに気づいた。


***


 ––––あれから五年


 はぁ。全く、この親子はどうにかならないものだろうか……。


 レナは泣きながらドアベルを鳴らした幼児を家に招き入れ、ため息を吐いていた。

 結局、真帆は親の反対を押し切り子供を産むことを選択した。相手が既婚者であったことから世間の批判に晒され、実家にも縁を切られるような状況に陥ったが、それでも子供とヴァイオリンを手放すことはなく、演奏家として真帆は今も舞台に立ち続けている。

 八月のよく晴れた朝に生まれた子供に、真帆は『陽夏はるか』と名付けた。それは日本語で『Sonne太陽』と『Sommer』の意味だと教えてくれた。

 英語表記はレナに決めてもらいたいという真帆の意向で、レナは少年にHULLKAという名前を贈った。hullのスペルには『船体』という意味がある。真帆と一緒に人生を切り拓いていけるよう、レナは目一杯の愛情と祈りを込めてこの名を考えた。


「ハル、どうしたの?」


 訊かなくてもハルカの涙の理由は想像できるがレナは敢えて尋ねてみることにした。ハルカ自身に説明させることで、本人の気持ちを落ち着けるためだ。


「ママが叩いた」


「それは感心しないわね……」


「そうでしょ? ボクはネコちゃんを助けようとしただけなのに……」


 猫? どうにもこうにもきな臭い匂いがする話である。

 子供に暴力を振るうなんて許される話ではないが、世界的名器を保有している真帆にとって動物は御法度だ。


「お庭にいたネコちゃんが寒そうだったから、ボクのヴァイオリンケースをあげたの」


「…………」


 レナは言葉を失い、額に手を当てて天を仰いだ。しかし、善行だと信じて疑わないハルカは憤懣やる方ない様子で、真帆に一方的に叱られて頭を叩かれたのだと主張する。


「ハル……ネコちゃんがケースの中に居たら、ヴァイオリンはどこで寝るの?」


「ボクのベッドの上」


 ハルカは自分のヴァイオリンケースにネコに与え、練習を放っぽり出してここへ来たという事だ。純粋な好奇心と保護欲に突き動かされるまま、ネコを匿った気持ちは理解できなくもないが、それを見た時の真帆の衝撃は想像に難くない。


「ネコちゃんが困っていたのはわかったけど、ヴァイオリンケースの中のネコちゃんを見たマホはどう思ったかのしら? ハルは考えてみた? それに、今日はヴァイオリンのレッスンの日よね?」


「……いいよ。ヴァイオリンは……」


 ハルカはそう言って、自分のつま先に視線を落とした。いじけているのか、レッスンをサボった罪悪感からか、いつもの覇気がない。


「練習しても上手く弾けないんだもん」


「最初は誰でもそうだわ」


 レナはハルカを宥めるためにそう言ったが、ハルカがヴァイオリンを上手く弾けないのは、本人の所為ではなく、比較対象が規格外であることが問題なのだ。


「ボクもうヴァイオリン弾かない。ママにも勝てないし、ネコちゃんもそっちの方がいいに決まってるもん」


 あまりにも利己的で子供らしい理由に、レナは吹き出しそうになった。ハルカに悟られぬよう、口元を引き締め頬の内側を噛んで平静を保つ。


「ハルはマホに勝ちたくて練習していたの?」


 レナが訊ねるとハルカはコクンと頷いた。

 それは大きな目標だな、とレナは内心苦笑する。

 子供を産んで何かが吹っ切れたのか、あの日のレナの言葉通り、真帆は強く、逞しい女性に成長した。評価に怯え、親の陰で言いたいことも言えず、じっと黙っていた昔の彼女はもういない。本来彼女が内に秘めていた煮えたぎるような感情と生命力がヴァイオリンの音に乗って、人間味の溢れる魅力的な演奏をするようになった。

 世界トップクラスの奏者である真帆がその追随を許さないほど、今も尚成長し続けているのだ。血を分けたハルカであっても追いつくのは至難の業だろう。

 しかも、真帆は人に物を教えるのが絶望的に下手だ。ハルカが辟易して庭のネコに心を奪われるのも頷ける。


「だったら、尚更、今よりもっと練習しなきゃ」


「やだよー」


 ハルカはむぅ、と口を結んでピアノの蓋を開けた。

 涙の滲む淡い茶色の瞳は、真帆とそっくりな形をしているが、ピアノの音は似ても似つかない。

 ハルカが弾き始めたのは、聖ニコラウスの曲だった。音楽漬けの生活をしているだけあって、ハルカはピアノにしろヴァイオリンにしろ、同年代の子供達に比べて突出した技術を身に付けている。今この瞬間も、通常のメロディにアレンジを加え、自分の頭の中の物語を描き出しているのだから大したものだ。


 レナはハルカのためにココアを準備しながら、ハルカの演奏に耳を傾ける。時折入る高音のトリルは、空から降る雪か夜空に輝く星々か……。ジャズなのか、クラシックなのか、確固とした概念のないハルカの演奏はどこまでも自由で広がりがある。

 子供にしか描けない情景だが、大抵の子供は技術に問題があってここまで巧みにピアノを操ることはできない。


「おやおや……」


 ハルカは更にアレンジを効かせ、ルバートをかけ始めた。先ほどの雪が吹雪になってしまったらしい。大きな大気の塊が畝って左右から吹き付ける姿が見事に再現されていた。

 ルバートの話をしたのはつい3日前のことだ。ハルカはもうそれを自分のものにしようとしているのだから、空恐ろしいものがある。しかも、リズムも破綻することなく、心地よい揺らぎを保ちながらメロディに重ねているのだからレナはただただ感心するしかない。

 カップを二つ手に取り、レナは五年前にもこうしてココアを淹れたな、と一人感慨に耽った。この母子が作り出す音楽はいつでもレナを幸せな気持ちにさせ、輝く未来を映し出してくれる。


 強くなりなさい。そして光に向かって進みなさい。


 レナはいつでも心の中でこの親子のために祈っている。

 ピアノの前に座るハルカの口元には笑みが浮かんでいた。実に楽しそうに、音楽と戯れる姿を見て、レナはハルカに声をかけた。


「ねぇ、ハル。今でもマホに勝ちたいと思ってる?」


 ハルカがピタと演奏の手を止めた。


「マホに勝てる方法、教えてあげようか?」


「そんなこと、出来るの?」


 弾かれたように顔を上げたハルカにレナは頷いて、少女のように笑って耳打ちをした。


 ––––マホはね、ピアノがとても下手なのよ––––


(完)


 

 

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