第4話 謎への挑戦

 2日後。


 俺は見事に盗賊団を騙し、ただの石ころを売りつけてやった。


「ほら、金貨500枚だ。お前にも半分やるよ」


 俺はファルグスに金貨の入った袋を差し出す。


 異世界では金より鉄の価値の方が高い。ここでは金貨は二束三文だが、現世に持ち帰れば高値で換金できる。


「ほう。見事だ。君には詐欺師の才能があるようだな。いっそそれで食っていけばどうだ?」


「なんだかお前にいいように仕向けられたようで気に入らん。なにが目的だ?」


「黒田大河。お前には生きていてもらわないと困るのだよ。そうしないと、この異世界自体がなかったことになる」


「ハァ?」


 何を世迷言を言っているのだ?


 俺はこんな世界を創った覚えはないし、これから創れるようになるわけもない。


「まぁいい。いずれ分かる。詐欺師として食いつなぐのが正解だったと。で? その隣にいる少女は誰だい?」


「俺を殺そうとした女だが、ヘマをやらかしてスカーレット・ウィンドに捕まっていた。もう少しで売られそうだったんで、俺が買い取った」


「良い心掛けだ」


「チッ、魔法を無効化するあの変な鎖さえなければ、すぐに脱出できた!」


 アルハスラはまだそんな恨み言を言っている。


 もう少し俺に感謝したらどうなんだ?


「それより、なんで邪竜の鱗なんか持ってるわけ? 私、邪竜の死体を見たけど、灰になってたわよ」


「おやおや」


 ファルグスは可笑しそうに笑う。


 アルハスラはまだ鱗が偽物だと気付いていないのか。


 まぁ、黙っておこう。


「辛うじて頭部が残ってたけど、眼球に赤い紋章みたいなのが刻まれてた。あれは洗脳の類のものね」


「それってつまり……」


 アデオダトスが意図的にドラゴンを暴走させ、それを自分で討伐した? つまり、マッチポンプ?


「フフッ、奇天烈なことも起こるものだなぁ。アデオダトスは既に名の知れた騎士であったというのに、なぜそんなことをしてまで【邪龍狩り】の称号を欲したのか。とかくこの世は謎が多い。ククッ」


 なぜだかファルグスは可笑しそうに笑った。


「この謎に挑みたまえ、青年。そこの元大聖女様と共にな。ちなみに、真相は既に先人たちが解き明かしている」


「じゃあその真相ってなんだ?」


「それを教えてしまってはつまらないだろう。解を導くプロセスこそが大事なのだ。せいぜい過程を楽しみたまえ。君にはまだ、多くの時間が残されているのだから。ま、ヒントは与えよう」


 そうとだけ言い残し、俺に何やら古びた本を押し付けると、ファルグスは去っていった。


 なんとも不可思議な人物だった。


 いや、それよりあいつ。


 なぜ俺の名を知っていたのだ?


 入界カードに個人情報は記載されていないし、そもそもポケットにしまっていた。


 どういうことだ?

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