誕生日の、最高なプレゼント②
レンガでつくられた建物がずらりと並んでる。そのお店はほとんどがお店。八百屋さんがあれば、お肉屋さんもあるし、果物屋さんだってある。
「おや、
「あらあらあら。シュヴァルツちゃんってば、こんな可愛いお弟子さん捕まえて……絶対に弟子はとらない、なんて言ってたのに」
シュヴァルツちゃんって、確か魔女さんの名前……
「おばちゃん。魔女さんのこと知ってるの?」
僕がたずねると、
「シュヴァルツちゃんのお師匠さんが、この国の
「きゅーてい、まどうし?」
なんだかむずかしい言葉が出てきた。いや、むずかしいっていうか、専門用語ってやつかも。
おばちゃんは僕が理解できてないことがわかったみたいで、優しく教えてくれた。
「
王様は私たち国民を守ってくれる人だから、
おお。なんだかすごい人っぽい。つまりは王様の家来みたいな感じかな。
「
……ふーん。
……え? 何だって?
「魔女さんが弟子になったのが、五百年前?」
「そうだよ。シュヴァルツちゃんは魔女だから」
僕の頭はぐるぐるしちゃって、今にもバクハツしそうだった。
キレイなお姉さんに見えた魔女さんが、実は五百歳のおばあちゃん。そのお師匠様はグリムニルさんの古い知り合いらしいから、多分六百歳以上……
うわぁ……なんか……なんかすごい……
「ちょっと! 私のいないところで私の話をするのはやめてくれないか!」
その時いきなり魔女さんがお店から出てきて、怒り肩でおばちゃんにそう言った。怒ってるのか、はずかしがってるのか、顔は真っ赤っかになってた。
「いくら君たちエルフが年齢を気にしないたちとはいえ、こちらはそうじゃないんだ!」
「あらあら、五百歳なんてまだ若いじゃない」
「若くない。他種族なら老人だよ」
いや、人間ならとっくに死んでるけどね?
「空?」
「ひい、ごめんなさい!」
魔女さんににらまれて、僕は縮み上がってしまった。細くなったするどい赤目ににらまれたら、さすがに怖い……ていうか、頭をのぞくのやめてください……
「まあ、こっちに来てるんだったら、また魔法具を買わせてもらおうかしら。この前買った『好みの水差し』、四十年くらい前にこわれちゃって。また同じのが欲しいのよ」
「あー……じゃあ、同じの作るよ」
「うれしい! じゃあ、晩ご飯が終わったらそっちに行くわね」
おばちゃんは笑顔を浮かべて
残された魔女さんと僕は、なんだか居心地が悪くて顔を見れないでいた。
「……空」
な、なんでしょう……?
魔女さんを横目で見るものの、僕は返事ができない。
「今のは忘れて」
今の……?
「あの、このみのみずさし?」
「ちがう。その前」
あ……えっと……
「魔女さんが五百さ」
「言わなくていいから。いいね?」
は、はい……
魔女さん、年齢気にしてるんだなぁ……
「って、ちがうちがう。そんなことを話しに来たんじゃないんだ。
空、グリムニルが呼んでるから、店の中に来てくれないかい?」
グリムニルさんが、僕を呼んでる? 何でだろう。
僕は魔女さんに連れられて、
「空に頼みたいことがあってね」
「僕に?」
僕は、たよられることがなんだかうれしくて、ちょっとだけスキップしながらグリムニルさんに近付いた。
グリムニルさんは、杖をふって空中に映像を映し出す。そこには、グリムニルさんにそっくりな女の人が映ってた。
多分この女の人が、グリムニルさんのお母さん。見た目は僕のお母さんと同じくらいの年齢に見えたけど、エルフっていう種族だから見た目はあてにならない……んだと、思う。
「二千年生きてると、何に対しても
「プレゼントを、作るんですか?」
「そう。エルフの母は長生きだけど、流石に異世界のことは知らない。異世界のヒトであるソラの感性で、あっとおどろくような魔法具を作ってほしいんだよ」
僕はちょっとだけ不安になった。そんなに大きい仕事を任されたことなんてなかったから、キンチョーしちゃったんだ。
だけど、魔女さんは優しく背中を押してくれる。
「空ならできると思って、私がそうすすめたんだ。やってくれるかい?」
魔女さんが、僕を信用してくれてる。
僕はすごくうれしくなって、心がぶわっと熱くなった。魔女さんのお墨付きってやつをもらったなら、僕、できる気がするよ。
「わかりました。僕、頑張ります!」
「ほんと? うれしいよ。よろしくね」
グリムニルさんは、僕の両手をにぎってブンブンと上下にふった。
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