第29話 笹山、女子から見捨てられる「はっきり言うね。笹山こそ、クラスに【不要】なの」 追放者視点

「桜井……今更、俺を裏切るのか?」


 笹山は桜井をギロっと睨みつける。


「裏切るとかじゃなくてさ……女子はみんなレベル1だし、笹山はレベル15しかない。これじゃもう、生き残れないよ」


 桜井は呆れた調子で言った。


「俺がなんとかする。なんたって俺は、剣聖だしな!」

「でも、こないだオーガに負けたでしょ?」

「ぐ……っ!」


 現実を突きつけられて、言い返せない笹山。


「委員長が言ってたように、本当に湊川は【攻略者】なのかもしれないじゃん? それに、クラスメイト全員でいたほうが安全だよ」

「…………」


 桜井が言うことは、正論。


 しかし、笹山は絶対に認めたくなかった。


 自分がいじめていた優斗が、正しいということを。


【そうよ! そうよ! 湊川くんと合流しましょう!】


 他の女子たちも、桜井に賛同する。


「……おいおい。桜井、ひとつ忘れてねえか? お前は湊川の追放に【賛成】したんだぞ? 自分を追放した奴を、湊川が許すと思うか?」

「それは……なんとか謝って許してもらう」

「許さねえよ。お前は、俺と一緒にいるしかない」


 笹山は薄笑いを浮かべる。


 実は桜井は、追放に賛成したわけではない。


 賛成も反対もしていない。見て見ぬフリをしてしまった。


 一方、笹山が考えていることはひとつ。


 女子たちを優斗に、渡したくなかった。


 特に【可愛い女子】の桜井は。


「大丈夫だよ。湊川くんなら謝れば、きっとわかってくれる。同じクラスメイトだもん」

「はは。都合良すぎだぞ。許されるわけない」

「……それでも、あたしは湊川くんのところに行く。許してもらえるなら、どんなことでもするから」


 笹山が一番寝たかった女子は、桜井だった。


 尻加よりもずっと可愛い。


 自分に着いて来たが、唯一、笹山に身体を許すことはなかった。


 (クソっ! 全部、あの陰キャに取られちまう!)


「もし湊川に許されなかったら、俺のところに帰って来るのか? 帰って来ても、お前を仲間に入れないぞ」

「……別にいいよ。その時は、女子だけで迷宮攻略するから」

「な、なんだと……っ!」


 つまり、桜井と女子たちは、すでに笹山を見限っていたのだ。


「はっきり言うね。笹山こそ、クラスに【不要】なの」

「こ、この俺が、不要……?」

「弱いし、自分勝手な行動ばっかするし、クラスメイトを見殺しにするし……もう着いていけないの」


 (なんて恩知らずな奴らなんだ……)


 ドス黒い感情が、笹山の胸に渦巻く。


 (全部、全部、湊川のせいだ……っ!)


 自分が築き上げた【王国】が、崩れていく——


【あたしも笹山から離れたい】

【湊川の方がマシ】

【笹山、どっか行ってよ!】


「そうか。この俺を裏切るか……なら死ね」


 ザク。


「……えっ?」


 桜井の腹に、バスターソードが刺さった——


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