2章

第27話 女神の愉悦 女神視点

「あはっ! 聖女ミラベルちゃん、今の状況はー?」


 ここは女神アテナの居城、ホーリーパレス。


 この世界の聖なる神殿。


 その一番奥にある、女神アテナの部屋——


 部下の聖女ミラベルから、アテナは【英勇選定】の報告を受けていた。


「現在……異界の勇者たちは、3つのグループに分かれています。ササヤマのグループ、サクラニワのグループ、あともうひとつは……」


 ミラベルは、言葉に詰まる。


「もうひとつは、何かしらー?」

「信じられないことですが……ミナトガワユウトのグループです」

「えっ? ミナトガワくんって、ゴミスキルの【鑑定】待ちじゃなかったっけ?」

「そうなのですが……なぜかミナトガワは一番レベルが高く、迷宮攻略も進んでいます」

「ふーん。雑魚のくせにやるじゃない。で、今のササヤマくんのレベルは?」


 ミラベルは、ステータスプレートを取り出して、


 笹山のステータスを呼び出す。


「現在、ササヤマのレベルは15です」

「あれ? レベル50はなかったっけ?」

「それが……【経験値分配】を持つアリスガワがミナトガワのグループに合流したせいで、ササヤマのレベルは一気に下がってしまったのです」

「ぷ……っ! あはははははっ! あんなにイキってたのにー? マジウケるですけどぉwwwwww」


 女神は大笑いする。


「女神様……?」


 爆笑する女神に、引いてしまうミラベル。


「あはは……ごめんね。ついおかしくて。じゃあ、ササヤマくんの【ハーレム】は、崩壊しちゃったんだ?」

「いえ、辛うじてまだ女子たちは離れていませんが、崩壊は時間の問題かと……」

「へーそれは面白そうねー」


 アテナは薄笑いを浮かべる。


「あの、女神様……いったい?」


 ミラベルは不安そうな表情をする。


「あー気にしないでっ! ミラベルちゃん、ほーこくありがとっ! 下がっていいわよー」

「はい。失礼します……」


 ミラベルが部屋を出ようとした時、


「忘却魔法、レーテ……っ!」


 アテナの瞳が怪しく光ると、


 ミラベルの意識が一瞬、飛んでしまう。


「……えっ? あたしはいったい何を……?」

「聖女ミラベルよ、そなたは仕事で疲れていたようです。今日は帰って休みなさい」

「はい……女神様ぁ……」


 ぼんやりとした表情で、ふらふらとミラベルは部屋を出て行った。


「ふう……女神様って疲れるわね。はあ。……ササヤマくん、もしかしたら、【逸材】かもしれない」


 アテナは水晶玉を覗き込む。


 ササヤマの歪んだ顔が、ガラスの中に浮かぶ。


「力も女の子も失って、きっとキミは【絶望】してるよね! ふふふ。キミならすごい【邪神】になれるよー! あ、いや、待って……」


 アテナは顎に手を当て、考え込む。


「そーだっ! いいこと思いついちゃった! レベルを奪ったのはミナトガワくんだって、教えてあげよー!」


 悪どい笑みを浮かべるアテナ。


「もし……いじめてたミナトガワくんが、自分のレベルと女の子を奪ったって知ったら、憎しみでいっぱいになるよねっ! そしたら、もっと強い【邪神】になれるから……あははははははははっ!」

 

 


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