ショートショート
non
第1話
祐介は言った。
「俺、大丈夫だから。」
最後の力を振り絞って伝えた。声は声にならず、掠れていたが、京子には聞こえていた。祐介の手を握って何度も頷いた。涙で溢れて、顔は見えないものの、しっかりと感じられるものがあった。何か言いたいがなんと言えばいいのかわからない。ただただ、涙が止まらない。
それを察したのか、祐介は
「ほら、早く行って。」
と優しく言う。京子は涙を拭った。そして、祐介からそっと手を離した。もう二度と、繋ぐことはない。そう思うといつまでも居たかった。が、時間は迫っている。
「じゃあね、母さん。」
そう言って祐介は静かに消えていった。
辺りはいつも通りの風景に戻った。
京子は思った。血の繋がりがなくたって、かけがえのない繋がりを持つことはできる。それが世間からどんなに歪だと思われたとしても。
京子は大きく深呼吸をした。そしてゆっくりと歩き出した。その背中にはまるで、母が子に自分の生き様を見せるような固い覚悟があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます