第161話 神秘の香りは危険な匂い
二度目の空中ブランコは使えないかもしれない。遊園地のフリーフォールより怖かった……。
想像以上の恐怖に一抹の不安を感じながらも、【精鋭ピッカリン騎士団】の対角に移動し僕はターンを終えた。
僕と【アクロバット】以外にもこの手番で触れるサーヴァントはいるが、それは利点を打ち消す悪手だ。
【イリュージョニスト】が創り出す
『
欠点はおよそ二つあると考えている。
それは【ラビッツサーカス】の面子しか対象にならないこと、そして『設置』タイプがゆえに分身を出現マスから移動させられないのだ。
サーヴァント本体それぞれは移動可能だが、移動させた時点でそのカードが本物だとバレてしまう。理由がなければ、動かしてはならない。
見た目からは僕にも判別できない【ラビッツサーカス】トークンだが、カード
けれども、あえて確認をしないようにした。僕自身が知らないからこそ、エドアルドをも欺ける性能を誇るワケだ。僕が本物を知っていたら態度に出てしまうだろうから。
「私のターンか。ドローをしよう」
エドアルドが山札から新たに三枚のカードを追加し、計十枚の手札となる。
……そろそろ、エドアルドにも手札を大量消費してもらいたいが、どうだろうか。
現在のフィールド状況は、僕と【ラビッツサーカス】がトークンを含めて10マスを埋めている。エドアルドは【黄金騎士:ピッカリン】と【精鋭ピッカリン騎士団】で3マス。
最大で18マスしかないフィールドの半分をうさぎが占めている、あまりにも可愛らしい絵面だ。
行動力2の【精鋭ピッカリン騎士団】が自陣右側中列の現在地から、僕のいる敵陣左側後列までたどり着くには最低でも2ターンを要する。その半ばで【クラウン】にでも騙されたらそれでは済まないかもしれない。
エドアルドが勝利を確実にするためには、手札収奪に代わる手を打ちたいところだろう。
あるのなら僕としても、ぜひともその手を打っていただいて、豪勢に手札をガンガン減らしてもらいたい。
理由は二つ。
スクルドフェイズを終えた後にやってくる時空嵐の場では、手番がやってくるごとに手札を二枚捨てる処理が挟まれる。
僕は今回、先手番なのでエドアルドよりも先に判定がやってくる。同じ手札枚数で突っ込むと、僕の方が先に手札を全損してしまうのだ。
もう一つの理由は、僕が二度と空中ブランコに乗らなくて済むよう、別の手段を模索してほしいからだ。
【精鋭ピッカリン騎士団】のような手札干渉の能力を持つサーヴァントが近付いてくるのでなければ、僕が長距離移動をする必要はない。
スプリンガー・バトルフェスの時も高所は怖かったが、足の踏み場というか支えられている感じがあったので耐えられた。二度目の自由落下は耐えられないかもしれない。
「ふむ。いやはや、いささか取り乱したが……少年のおかげで落ち着いたよ」
「キレたり落ち着いたり、忙しい人だな」
どうやら状況を打開するカードを引いてきたようだ。
乱数に恵まれ、空いている後ろのマスにカードを放るエドアルド。
「私は【ピッカリン騎士:射手】を出陣させることにしよう」
戦闘力1000を超える
ピッカリン家の紋様を鎧に刻み、弓矢を担いだ騎士が鈍色の光と共に現れ――間髪を入れず脇にさりげなく手配されていたウルズの泉へポチャンと投入されていった。
「……
「サーヴァントだけで少年を追い詰めるのは確かに困難だと認めよう。だが、全てを焼き払ってしまえば問題なかろう?」
迷いなく出陣させたばかりのサーヴァントを神秘力に変換する判断。
十中八九、エドアルドが引き入れたカードは範囲を対象に取る攻撃系の
それは大変困る。うさぎたちに、
使用する
神秘力1000で広範囲かつ300の生命力を消し飛ばす
うさぎのシリーズはランクが上がっても、基礎能力が上がるのではなくバリエーションが広がっていく方向に伸びている感触があった。
戦闘に耐えるカードもあるはあるが、【ラビッツサーカス】にはちょっと厳しい要求だ。
エドアルドは手札からスッとカードを引き抜いて、宣言を行った。
「まずは
「げっ!」
それは不味い!
「私はプシュケーを支払い、カードを引かせていただこうか」
どこかから現れた知らないおじさんの持っていた金貨袋を力任せに奪ったエドアルドが、そのままおじさんが隠し持っていたナイフで腹を刺される。
プシュケーダメージにくぐもった唸り声を漏らし、エドアルドがカードを追加する。刺されたのにノーリアクションか、使い慣れていやがる。
おじさんは苦悩に表情を悩ませながら消えていった。
せっかく僕よりも少ない枚数になったのに、カードを補充されてしまった。しかも代償を支払う代わりに、神秘力消費のないタイプ。
この短い間に削り切るのが大変なプシュケーは、消費し放題のリソースだ。プシュケー消費でカードを引けるのはかなり羨ましい。
エドアルドのターンは終わらない。
手に取った次なるカードは、今度こそ攻撃系の
精悍な表情にニヤリと笑みを浮かべて言った。
「神秘力を1000消費し――
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