第63話 ノル箱ちゃんねる Finals-2解説
「ファイナルズ、二戦目……リーグD、蒼の
紅めのうが唾を飛ばして結末を告知する。バーチャルな唾なのできらきらしていて綺麗だ。
ステージ上にデカデカと表示されているスクリーンの中では、膝をついたリョーマ・ザ・ゴッズと背を向けて立ち去るLSの明暗くっきり分かれる姿が映っている。
「一部を除いて『極東騎士団』の援護があるリョーマ・ザ・ゴッズさんが有利との下馬評でしたが、LSさんの切り札、
運営が胴元になって開いている優勝予想で、リョーマに賭けた者たちが怒りの罵声と共にゴミと化した賭け券をステージに投げ入れている。一枚でブロンズカードパックが買える豪華な紙吹雪。
>リョーマに賭けるヤツおる???
>なぜかLSの倍率高くて儲けたわありがとな
>ギルド厨恥ずかしすぎwww
>強いやつはどこにいようと強いってこった
「解説の焼きいもホクホークさん、今の対戦を振り返ってみていかがでしたか?」
「いやー、撮れ高のある対戦でしたね! まさか本戦だけで三枚もの
「対戦後なのでこうしてお伝えできますが、実況・解説の我々はリプレイを確認する上でデッキ内容が分かるんです。焼きいもホクホークさんは明日以降も解説としてフェスに参加くださるのであしからず! それで、リョーマさんとLSさんの構築されたデッキを比較すると……違いは一目瞭然なんですよね」
スクリーンにそれぞれのデッキ内容が一枚ずつ並べられていく。
さすがにカード名などの詳細は表示されない。代わりに明示されているのは
「リョーマさんは見事にほぼ無能力一色……かろうじて数枚の特殊能力持ちが含まれているようですね。
「これは典型的な初心者のデッキです。とはいえカードのランクが高いので大会のレベル的には本戦まで勝ち上がれる陣容でしょう。実際に勝ち上がってきたわけですし」
めのうと焼きいもホクホークがコメントを残していく。
>ノースキルばっかで草
>でも気持ちは分かるわ、NSは戦闘力高めなの多いしつい入れたくなる
続いてLSのデッキへと総評の対象が移る。
「対してこちらはLSさんのデッキですが、これまた潔し! 無能力カードは一枚も含まれておりません! そして今大会でもほとんど出番のなかった
「すごく対称的なデッキで……いや、ぼく、このデッキ構成を見た時はマジかよって思いました」
焼きいもホクホークが少なからず興奮した様子で言う。
>ぼく「マジかよ(マジかよ)」
>神秘なんて消費0のカードしか入れてねえわ
>民話クラスのカードがかなり強そうなのは分かったけど持ってねえ
>使うにはデッキをまるまる変えなきゃならんだろうなー
「『六つ星』の焼きいもホクホークさんからしても、LSさんのデッキには見るべきところがあると?」
「と言うよりも、全プレイヤーが参考にする余地があります。【トラブルハンター・フラワリィ】というカードの特異性もありますが、これほどの割合で
「なるほど!
「そもそも
>サーヴァントを神秘力に変換する手間もあるから、どうしても遅くなるしな
>三体くらい変換しなきゃ使えない神秘を使うくらいなら、その三体で殴った方が早そう
>だから神秘は流行らん(*´ω`*)
>その顔文字も絶対に流行らせない
>なにそれ
確かに、とめのうはLSのデッキ構成に目を向けた。
「手札が全部
「それを回避するための初手『ノルンの憂い』かつ大量に仕込まれたドローとサーチ用サーヴァントなんでしょうが。ここまで
「トップ環境でも類を見ないデッキで立派なプレイングを魅せたLSさん、死の旋風がどこまで届くのか気になるところです!」
ここでめのうが耳に手を当てて、軽く頷いた。
「……はい、まだ時間があるようなので、プレイングについても解説いただいてよろしいでしょうか?」
「分かりました。えー……、プレイングとしては、双方に大きなミスはなかったと思います。むしろお手本にしてほしいくらいで。こんな十連戦以上もした後で、このプレイができるのは、お互いに相当な積み重ねをして動き方を身に付けているんでしょう」
「具体的にはどういった部分が良かったんでしょうか?」
めのうの問いに、焼きいもホクホークは顎に手をかけて少し考えた。
「そう……ですね……。個人的にはLSさんの……ココ、3ターン目で前列まで突出したシーンかな」
焼きいもホクホークが手元で操作をすると、別のスクリーンに映るリプレイが該当シーンまで飛んだ。
「リョーマ・ザ・ゴッズ……リョーマさんの『
「立て続けにサーヴァントを出陣させまくるレミングの行進みたいな絵面が並ぶわけですか」
>あるある
>うまくいくとプレイヤー以外の16マスがサーヴァントで埋められて気持ちいい
>なお、そこまでうまくはいかない模様
「ええ。お見合いみたいになって間延びするのはよくあるパターンですね。対してLSさんは後列に支援系のサーヴァントを最初に置いています。4ターン目になってようやく主力が登場しますが、主力無しで耐え忍ばなければならないターンがある」
「4ターン目の先手、リョーマさんの手番ですね」
「そこで絶対に回避しなければならないのが……マスを潰されること」
焼きいもホクホークが3ターン目、LSが中列に移動したところを指した。
「こうして観ると分かりやすいですが、自陣後列は潰れており、敵陣前列のサーヴァントはみな行動力2だから隙間なく詰めてくる。この位置で次のターンに入ってしまうと、次の手番で引いてくる【フラワリィ】を出す場所が無くなるんですよね。結果的には後列が空いたので、なんとでもできますが、右側の出陣だとちょっと遠く感じるのもあります」
「あえて前列にプレイヤー自身を置くことで壁かつ囮とし、リョーマさんの移動を阻害したワケですね!」
「そうですね。あそこで前に出ることで自陣への浸透を遅らせ、マスを確保したファインプレイかと。痛覚を完全カットしていない状態であの手段を取るのは……ぼくでも躊躇います。あれ、本当に痛いんですよ」
焼きいもホクホークが遠い目をして言うと、紅めのうも深く頷いた。
プレイヤーの大半は「痛み? どんなもんか試したろ!」と手を出して、本当に痛い目を見ている。
>痛覚全カットしてないやつはマゾか狂人
>このゲーム、マゾと狂人しかおらん
>血灰さんは痛覚最大だぞ見習え
>絶対にいやだ、それができたら歯医者に行ってる
>歯医者には行けよw
それらの経験からすると、痛覚カットしていないプレイヤーは狂人と称しても差し支えはない。
「とはいえ、勝敗の差を分けたのはやはりカードの質……『極東騎士団』は見誤ったな、というのが全体を通しての感想です」
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