第3話 だんまり

 じっと動かない口に、私はやれやれとため息をつく。

「ナツメさんでしょ、お菓子食べたの」

 相変わらず嘘が下手な生首である。黙りこくったまま、たらたらと汗が額に滲み出ているのを私は見逃さなかった。

「あーあ、あのお菓子、一緒に食べようと思って取っておいたのになぁ。悲しいなぁ。残念だなぁ」

 わざとらしく肩をすくめる。その間もだんまりを決め込んだナツメさんの額には汗が滲み、目はあっちへこっちへと泳いでいる。

「……ごめんなさい」

 蚊の鳴くような声の謝罪に、私はふぅ、と息を吐き出す。

「二度目はないからね、ナツメさん?」

「はぁい」

 本当にもう、しょうがない生首だ。

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