第23話 コラボ

「……美羽さん、美羽さん」

「……え?」


 小さく私のライバー名を呼ぶ声がし、振り向くと……帽子を深く被ったスーツ姿の人物が立っていた。

 スーツと言っても、赤いジャケットに黒のシャツ……傍目で見ればそっちの人みたいに見える……。


「もしかして……純ちゃん?」

「……はい、こんにちは、美羽さん」


 ……純ちゃん、なんでそんな恰好してるの!?

 私たちはお互い他人のふりをしながら小声で話し合った。


「……何その恰好?」

「いや……普段着だと目立ちますし……」

「……そっちの方が目立つよ! もっとマシな服無かったの!?」

「いや、だって……配信で使っていない服と言えばこれしかなかったですし……」


 純ちゃんの身長で赤い服は、東京に立っている333メートルの鉄塔並みに目立ってしまっている。

 まったくもう……変なところで抜けてるなぁ。


「とりあえず申請しに行くよ!」

「は、はい」


 私たちは受付へと足を運んだ。



 申請を終え、私たちは樹海の中に入り……その中心にあるダンジョンの中に入った。

 配信の告知は純ちゃんが着替えている間に済ませたので、さっさと配信を開始してしまおう。


「じゃあ、最初は純ちゃんのチャンネルで放送するんだよね」


 このバーチャルチェンジャーには「コラボ機能」というのがあるらしく、コラボ相手に掛け声を言わせると、その人のチャンネルで放送できるようになるらしい。

 私は携帯を純ちゃんに手渡した。


「確か……こう叫ぶんでしたよね? 『コラボ』」

『コラボ、オーソライズ、井上純』


 純ちゃんが掛け声を叫ぶと、テクノポップ調の待機音が流れ始めた。

 確か、この状態で……。


「ライブオン!!」

『オーソライズ、百地美羽、ログイン』


 私が掛け声を叫ぶと、前回と同じように待機音が流れ始めた。


「なんか……恥ずかしいな、これ」

「いいじゃないですか、早く始めましょうよ」

「うん……」

 

 私は携帯電話を腕輪に嵌めた。


『百地美羽、ライブ、スタート』


 そんな音声と共に、私はVtuber百地美羽の姿となった。

 ドローンカメラとコメント欄が表示され、ライブスタートだ。

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