第9話 コラボ
「あの! 井上さん!」
私は去ろうとした井上純を呼び止め、彼女に近づいた。
私の呼び止める声に反応したのか、井上純はその場に立ち止まった。
彼女が立ち止まったのを確認し、私は咄嗟にカメラに向かってこう訴えた。
「じ、実は! 今回の案件、井上純さんとのコラボだったんです! いやー実はサグッターで告知する予定だったんですけど、時間が無くて……私のミスです! 申し訳ございません!」
私は井上純の頭を掴み同時に頭を下げた。
……すると、彼女は困惑したのか、頭を下げた状態で、視聴者に聞こえないような声で話し掛けてきた。
「……何言ってるんですか!? ……ボク聞いてないんですけど!? ……案件ってなんですか!?」
「……すみません! ……ちょっとコメント欄が荒れちゃって……できれば、しばらく同行願いませんか!? ……井上さんのスポンサーってセンテンドーですよね? 実は今回の案件、センテンドーからでして……」
「センテンドー? ……でも、いきなりコラボなんて」
「……そこをなんとか! ……コメント欄が荒れまくっててこのままじゃ、案件どころじゃないんですよ!
私がコメント欄に目線を送ると、彼女は全てを理解したのか、小さく頷いた。
「……わかりました、ここはコラボ配信という事で」
「……はい、すみません……案件先のセンテンドーには私が言っておくので!」
……小声の作戦会議を終え、私たちは頭を上げた。
「……と、いう事で! 百地美羽アンド井上純、今回はセンテンドーさんの新製品を私ことVtuber百地美羽が体験させていただくわけなのですが、私はダンジョン未経験なので、経験豊富なベテラン配信者の井上純さんにお越しいただきましたー!」
「あ、改めまして井上純です! いやー、ボクもすみません! 案件の事すっかり忘れてて、プライベート気分でいつものようにダンジョンに入っちゃってましたーあはは……」
私たちは口裏を合わせ、それとなく自己紹介をした。
……大丈夫かな? なんかすごい不自然な流れだけど……視聴者は怪しまないのだろうか?
『うおおおおおおおお!! 奇跡のコラボ!?』
『なんだよ、コラボかよ、びっくりした』
『コラボなら告知してほしかったな、まぁでもいっか!』
……ふぅ、大方大丈夫なようだ。
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