9度目の人生
「そろそろ着きますから
準備出来ましたか?」
今逃げても俺には勝ち目が無い、だがこのまま着いて行って母もいたらもっと勝ち目が無くなる。
今なら相手は1人、さらにはこいつの力は恐らく洗脳に特化している。
母と離れて2年は経ってる。相手には俺の真の実力は漏れていないはずだ。
(落ち着け、やらなきゃ、やられる!
勝負は一瞬、失敗したら確実に死!
俺ならやれる…やれる、自分の出せる最大の魔力を解放する!!!)
「準備?
勿論出来てますよ!」
俺はそう言って手を上に掲げ、男には干渉しないよう細心の注意払って巨大な炎の渦を作り上げる、その中心には太陽の様な周りが歪んで見えるほどの熱(実際には魔力で歪ませてるだけ、暑いは暑いが死ぬほどの暑さでは無い)。
「熱くなって来たなあ!
もうこれで会う事もない、喰らいたくないなら速くこの場から立ち去れ!」
俺は強い!
そう見せてるだけの攻撃力1の雑魚。
普通に考えて、歪むほどの暑さの中心がここにあるとしたら溶けるに決まってた。
何故かその知識が俺には抜けてしまっていた。
男は冷静にこの状況を理解していた。
「工夫は面白いです流石と言ったところです…が、無力化させてもらいます。」
俺はあっさりと倒れてしまった。
「……ここ、は?」
「久しぶりね」
目の前には憎き母親がいた。
俺を見捨て、父も見捨て自分はのうのうと生きてる最低の人間がいた。
「何がしたいんだ?
もうあんたとは縁を切ったはずだが、何か用でもあんのかよ」
「そうね、私も貴方とは縁は切っているけど、周りはそうは行かないみたい。
だから……死んで」
その言葉を発した瞬間に俺をこの場所に連れてきた奴が剣を持って攻撃してくる。
(喰らった瞬間に俺は確実に死ぬ、避けるしかない!)
俺は魔術を駆使して必死に避ける。
相手は間違いなく手加減をしている。俺の攻撃が弱い事を理解しているからだ。
「どうして、どうして俺を殺そうとするんだ!」
「別に?貴方が死んで今悲しんでくれる人がいるの?」
「……」
俺は一瞬声に出す事が出来なかった。
「俺のお父さんが…」って言いたかったが、俺は父の目を盗み家出をしてしまっている、結果がこれだ。
父の事だから心配して探してくれてると思いたいけど、もし、俺の事が鬱陶しくて家出ラッキーとか思われてるかもしれない。
だから俺はすぐに言葉が出なかった。
でも言った。
「アーノルドもあんたがいなくなった方が楽だよ、私たち10傑と戦う時、貴方が1番邪魔だもの」
俺はその理由よく分かる。
俺から見える父は誰よりも優しくて平和主義の人間。
だからずっと家も金はあるのに都市部から少し離れて暮らしていた。
俺を人質にでもされたら来てしまう。
でもどうして引退となった人をまだ狙われているのか疑問だった。
「だからね貴方を私は殺したい、アーノルドも殺したい。
じゃあ最善手は何かって考えて貴方を使う方法にしたの」
「お父さんが来ないかも知れないだろ……」
「来るわ、必ず…そう言う人間だから私は彼を好きになったの……」
「じゃあ殺す必要なんて…」
「うるさい!!」
取り乱した母はいきなり俺に襲いかかってきた。
魔術師として、最高の地位までたどり着いた人だ俺が敵うわけがない。
最後に成長した俺の魔法を見せてやる。
「あんたは強い、でも俺は負けないよ
スポーツだって点を取られなきゃ負けない、」
「何を言ってるの?」
「どんなに良い攻撃も当たらなければ俺は死なないって事だよ!!」
俺が魔術を使っていて分かった事が一つある。
(物体に干渉さえしなければ俺の攻撃は減衰しない、相手の魔法に全てぶつける、俺の出せる最大出力を!)
俺は拳を強く握り締め強大な炎の渦を創り出した。
これは俺にしか出来ない芸当、さっきは周りに人が沢山いて出さなかったが、ここなら本気を出せる。
「焔の力よ!全てを焼き尽くせ!」
まだ相手の魔法に撃ったことは無い、だから出来るかは分からないけど、やるしか無かった。
「うおおおおおっ!!」
失敗した。
行けそうな感触はあったが、母の魔法に俺の戦術は通用しなかった。何か見落としてしまっていたのか、もしかしたらあの状況でも何か出来ることはあったのかも知れない。
(頼む何も無かったらまだ俺は死ぬ、神様俺にチートスキルを下さ…)
ここまできてこれは流石にダサすぎる。
けどもう俺には何もすることはできなかった。
しかし俺には攻撃を喰らった感覚がない。
さらにふわっと浮いた感覚がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます