新たな出会い。


 俺はあれからも特訓を重ねて9歳になった頃、魔術の扱いは自分で言うのもあれだが、神の領域に足を踏み入れてしまったと思う。

 使える魔術は全て独学、超低火力、超広範囲の攻撃をかなり速い速度で撃てるようになってきた。


 それでも一度以降は外に行ってモンスターと対峙した事はない。

 父が意図的に避けている。

 俺は何度も「行きたい」と言ってるのに、何度もそれを断り続けて今になってしまった。

 

(お父さんの事だ、何か考えがあるに違いない)

 そう思って俺もそう深くは考える事もなく、自分の探究に日々精進して来た。

 今日はあいにくの大雨、外で練習は少し難しいと考えたが、、


「この雨を俺がどかせば……いける!」


 俺は飛び上がって外に出る準備をする。

 それに反応して父はを俺を止める。

 外は大雨、最近の俺は少しオーバーワークにも程がある。

 父には、「少しは休んだ方が…」とまでに心配もされてしまう有様。

 俺も成長した事、母がいなくなってから数年経った事で、少し父との距離も分かって来た。


 父は親として「見守る」と言う姿勢でいる。

 助言や否定も特にはしない。

 何故しないかは俺も理解している。

 父も分かっている。 才能の違い。


 俺は魔術は秀でているが、他の全ての項目は平均以下、かろうじて筋力、俊敏性くらいはなんとか平均。

 しかし父は魔術以外の才能があり、単純に言えば、考えが合わない。

 

 努力したら強くなれると思ってる父と、強くはならないけど魔術を楽しんでる俺との差は大きかった。

 それを互いに理解した時から、あまり父も俺に言う事は減って来た。

 

 それが珍しく、魔術の練習に口を出して来た。

 俺は少しむっとした。


「どうして、こんな日次いつ来るか分からないのに、

 やらせてよ」

「濡れるし、体が冷えちゃうだろ」

「それくらいじゃ、死なないよ!

 お父さん、ずっと外にも行かしてくれないし、魔術の練習も止めるし何考えてるかよく分からないよ」


 俺は遂に思ってた事を言ってしまった。

 素直で優しい父はまた感情的になるかと思ったが、今回は違った。自分の意見を貫いたのだ。


「………」

「どうして何も言わないの!!

 何とか言ってよ!」

「……」

「お父さん!」


「ウィル、これだけは譲れない…絶対練習に出るな

 後、外は今危険なんだ これ以上は言えない」


 俺も何か言えない事情があるのは父の言っている事からも感じ取れている。

 俺も大人だ。

 そこはしっかり守って心配をさせないようにしよう。



 俺はそのまま今日は家で大人しく休憩をする事にした。



 父は1人悩みを抱えていた。

 電話を取る。

 この世界は携帯電話は無く、固定電話が主流らしい。


「何?急にどうしたのさ、アーノルド

 ……あの話かい?」

「悪いな、俺電話越しでもやばいか…」


 俺が寝ているのを確認してから

 女性と電話をしている。

 変な誤解だけは防ぎたかったのだろう。



「今から家に来れるか?」

「はあ?無理に決まってるでしょ

 あんたこそこっちに、ってそれは無理か

 …分かったよ、娘も一緒に行く、文句言わないでよね」

「すまん、ありがとう」



 数十分後に子どもを連れた女性がやって来た。

 俺もその時にはリビングにいて、出会ってしまったと言うべきだろうか。


「誰?」


 俺は当然知らない人、再婚相手なのかと思ってしまった。

 

「ウィル君、目上の人にその言い方ちょっと失礼、私パルナよ

 ごめんねちょっとお父さんと話があるからアイリスと喋っててくれる?」

「…はあ、分かりました」


 俺は訳がわからないまま自室に戻って行った。

 アイリスといった、女の子は俺の後ろをついてくるだけで見るからに大人しく人見知りだ。

 歳は俺と同い年か、下か、そのくらいだろう。



 俺とアイリスが部屋に戻った事を確認して、2人は話を始める。



「俺はウィル、アイリスであってるかなよろしくね」

「……よろしく?」


 アイリスは少し首を傾げて俺の方を見る。

 決して下心がある訳ではないが、そんなキョトンとした目で俺を見られると少し変な想像が……


(いかんいかん、妹になるかもしれないのにそんな想像

 法律的にアウトだろ)


 俺の自制心の働きがちゃんとしてて良かった。

 それにしても、話しかけようとはしてくれない。

 が、遂に口を開いた。


「ウィル…魔法、使える?」

「う、うん一応…こんな感じ」


 俺は急に言われたから咄嗟に答えてしまう。

 さらに実演までやってしまうのだから少し気持ち悪がられてないかと、手のひらから出した火を消す。


「…すごい、私ね、魔法使えない

 ちょっと羨ましい」

「そうかな」

「何その顔、変」


 おっと、ついつい、嬉しさのあまり顔がキモくなってしまった。魔術を褒められるなんて未来永劫無いと思ってた。

 これから続く人生で最初で最後かもしれない。

 それがこんなに可愛い女の子なんだから嬉しいこの上ないぞ。


「でも、ちょっとおかしい」

「どうした?俺、何か変かな」

「もう一回、魔法使ってみて」


 積極的に話しかけて来てくれるようになったから、俺はさらに嬉しくなって、さっきより少しだけ大きな火を出すと、躊躇なく、その火に手を入れた。


「何やってんの」

 

 俺は慌てて火を消す。

 何も言わずに危ない事をしてくる所は何考えてるか分からない。


「やっぱり……あんまり、熱く…ない」 

「………!!」


 俺はそれを言われてドキンとなった。

 見抜かれている?

 

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