第16話 別離

「それじゃあ気を付けて」

「行ってきますあなた」

「パパバイバイ」

「うんバイバイ」


46巡目の暖かくなって来た頃に女は娘を連れて森林の白の集落の点在する場所に行く事になった。本当は44巡には出ていくという話が出ていたけれど、娘が猛烈に嫌がりエレメントを使役までして暴れ出したので説得する期間を要してしまった。どうやら僕は結構娘に好かれていたらしい。


僕はこれから巨大樹の家を離れて世界を旅をする準備をする予定でいる。ママだった女が最後に僕の所に来るにしても700巡程度の時間の後の事だ。100巡に1度ぐらい森林の白の集落に立ち寄ればいいだろう。


僕は保管していた落雷で落ちた巨大樹の枝で背負子を作った。採取に行くとき用の布の背負い袋は持っていたけれど、旅をするならもう少し多くのものを運んでいるように見せたかった。空間のエレメントが大っぴらに使えるなら良いのだけれど、便利過ぎて要らぬトラブルを抱えそうなので隠すつもりでいる。


他にも巨大樹の実を大量に収穫し空間と時間のエレメントを使役して作った保管庫に入れた。しばらく実の落下は減るけどすぐに再生してくれる筈だ。巨大樹の苗木も作りたかったけれど、巨大樹の実には種が無い。だから他の方法で増やす方法を探そうと思っている。確か接ぎ木とか挿し木とか方法があった筈だ。


僕は巨大樹の家に行き、少しづつ家を丁寧に解体していった。解体したものは空間と時間のエレメントを使役して作った、時間が経過しない空間倉庫に保管していった。

ウロの倉庫に大量に作り置きしてある巨大樹の実だけで無く周囲で採れるアプやカラやレグの実で作ったお酒や蒸留酒やピューレの他にも大量の魔石と魔石道具とそれぞれ別々の空間倉庫に保管した。


「さて行くか」


何も無くなった巨大樹の家のあった場所、名残は倉庫代わりに使っていた木のウロの倉庫の扉と中に残された未成熟の酒の入った壺ぐらいだ。そのままでは扉が飛び蜥蜴などによって破壊されてしまう事も考え、土のエレメントを使役し頑丈な石の壁でさらに塞いでおく事にした。


旅の準備が終わったので、重力と光のエレメントを使役して迷彩を施しながら空を飛び巨大樹から離れた。振り向くと巨大樹がどんどん遠ざかって行った。

目的地は僕がまだパパの所から出たばかりの時に使っていて、先程娘に引き継がれた鉤爪を作ってくれたという山岳の赤の集落がある地域に向かおうと思っている。山岳の赤はお酒が好きな種族だと聞いている。だからお酒で物々交換をして色々手に入れる事が出来るのではと思っている。


森の中を通る帯がの上を進むと段々と川は枝分かれして細くなるけど1番主流と思われる川を登っていく。そうすれば山岳の赤が住む地域に行きつくと昔教えられた事があったからだ。


目の前に山岳が見えだした頃には岩場が多く木はまばらになって、川は細いケド結構な急流になっていた。川を横切るように吊り橋がかかっているので道があり川を往来する人がいる事が分った。


道に下りてダミーの背負子を背負う。その背負子には各種酒の入った小ぶりの酒の壺が各種3壺と芋を蒸して切って天日に干して乾燥させた保存食の入った木樽とテント用の布が乗せられていた。結構な重量だけど重力のエレメントを使役して重量を軽減しているので余裕だ。


岩場が多く起伏ある道を歩くと分かれ道があった。立て札があって片方の道が集落に続いている事を教えてくれていた。

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