3度目の生は立派な木の苗床になることを目指す

まする555号

第1章 転生編

第1話 衝撃

「何でも言うことを聞いてくれる不細工な女と、何にも言うことを聞いてくれない絶世の美女、恋人にするならどっちがいい?」

「どっちもいらねぇ」

「そもそも何にも言うこと聞かない女は恋人なのか?」

「俺は何でも言うこと聞いてくれるブスだな」

「ギャハハハお前の女不細工だもんな!」

「不細工じゃない、個性的なだけだ」


講義の時間になっても講師が現れないため暇を持て余した男共が馬鹿騒ぎをしている。女子達が白い目をしているが彼らには見えて居ないのだろうか。

そんな選択をしている彼らを少し可哀そうに思った。最近僕にも念願の優しく可愛い彼女が出来たからだ。


「おい!タカツキ教授が急病で休講になるとよ!」

「やったぜ!」

「だったら早く知らせに来いよな」

「学食行こーぜ」

「早くねぇか?」


そう言ってぞろぞろと講義室を出ていく奴らの後から僕も講義室を出ていった。そしてスマホを操作し彼女にメッセージを送る。


『講義が休講になった、今から会わない?』


うーん既読がつかないな。向こうは講義中か?仕方ないな、家に帰って夕方からのバイトまで仮眠でも取るか。

最近夜間のバイトが忙しすぎて少し眠いんだ。


駐輪場でメットを被りながらバイクに跨ろうとしたところでスマホが震えたので見てみる。


『私達別れましょう』


はぁ?最近誕生日にバイト代貯めて買ったブランドもののバッグを贈ったばっかだぞ?


『どういう事?』


すぐにメッセージを送るとすぐに返事がある。


『私達は気が合わないと思う』


その後何度かメッセージのやり取りを繰り返したけど彼女の意思は変わらなかった。

その後電話をかけ口論をした後に「二度と連絡してこないで」という怒鳴り声の後に切られた。


そのメッセージも電話も着信拒否をされて彼女・・・いやあの女は僕に対する拒絶を示した。


「家に行って眠らなきゃ・・・」


僕はすっかり眠気が治まりつつも酩酊としたフラフラした状態でバイクに跨るとアパートに向かってエンジンを起動させて発進させた。

そうか・・・僕は騙されたのか・・・あのバッグを買わせるために・・・。体を使ってでも欲しいものだったのか・・・あんなモノが・・・。


どんな馬鹿でも付き合い始めの不自然さと別れるタイミングを考えれば良く分かる。

僕がバイトをしていてそこそこ良いバイクを大切に乗っている事は少し知り合えばすぐに分かっている。そのバイクにかけるお金を少し貯めさせれば中々良いプレゼントを買って貰う事が出来るという事も。


「はは・・・これが女か・・・」


始めての彼女だった。

中学校までチビでモテなかった。

小学校から始めたミニバスから継続して中学校でもバスケ部に所属したけれどレギュラーになる事は出来なかった。高校時代に体が急成長し3年の最後のシーズンに初めてベンチに座り、途中で何回か出場をしたのが僕の唯一の誇りみたいなものだった。

そんな状態だからか彼女が出来た事が無かった。自分に自信がなかったので奥手だったのだ。

大学に入りコンパの数合わせで呼ばれその女に出会った。最初に連絡先を交換はしたけれど連絡が来るとは思って居なかった。けれど翌日に連絡が来て二人きりで会った。バイクの後部座席に乗せてドライブデートを行った。ツーリング中に良くよるレストランに寄って食事を取って帰るだけだったけど、僕には夢の様な時間に思えた。何度かそんなデートを繰り返した後には彼女が出来た時にお金に困らない様にバイトのシフトを増やして貰っていた。そして念願かなって女の方から告白されて僕達は付き合う事になった。その次のデートでは僕の家に上がり込んで来てて料理をふるまってくれ僕とお酒を飲んだ勢いで体を重ねた。その後僕が初めての体験で夢見ごちになり寝てしまったと時にでも僕の部屋を物色でもしたのかもしれない。貴重品はナンバーが分からなければ開けられない手持ちの金庫に入っていた。けれど引き出しの中にバイト代の明細書が入っていた。それを見た後なら僕が結構バイトを頑張っている事は良く分かった筈だ。


そんな考えをしながら運転していたところ、僕は少し見通しの悪い交差点で横から強い衝撃を受けてしまった。セダンの車と衝突したのだ。僕はボンネットの上に乗り上がった時にメット越しに、その車の助手席側の窓にあの女が乗っている事が見たあと、車の屋根に駆けあがるよう転がって車から振り落とされたあと背中に強い衝撃を受けた記憶を最後に僕は意識を失ってしまった。

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