キミと夜に関しての考察【0:1:1】20分程度

嵩祢茅英(かさねちえ)

キミと夜に関しての考察

女1人、不問1人

20分程度


真夜中に出会った、不可思議なキミ


アサヒ

恋におちた青年。


マヨイ

白いワンピースが似合う少女。


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「キミと夜に関しての考察」

作:嵩祢茅英(@chie_kasane)

アサヒ(不問):

マヨイ♀:

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アサヒ「月がとっても青いから〜遠回りして帰ろ〜(歌っても歌わなくても)

……ん?」


マヨイ「こんばんは」


アサヒ「っ!…こ、こんばんは」


マヨイ「ごめんなさい、驚かせちゃったかしら?」


アサヒ「あっ、いえ、大丈夫…です…(見惚れる)」


マヨイ「?」


アサヒ「あっ…ご、ごめんなさい…!

ここら辺、いつも散歩で通るんだけど、人に会ったのは初めてだったから…」


マヨイ「あぁ、そうだったの。私、夜にしか外に出られないから」


アサヒ「…そ、そう」


マヨイ「うん」


アサヒ「…病気か、何か?」


マヨイ「太陽に当たるとね、良くないって、ママが言うの」


アサヒ「…へぇ」


マヨイ「…」


アサヒ「…」


マヨイ「いつも」


アサヒ「え…えっ?」


マヨイ「いつも、この辺りを散歩してるって」


アサヒ「あ…あぁ、うん…」


マヨイ「また会ったら、お話してくれる?」


アサヒ「…あー…うん。また、会えたら」


マヨイ「ふふ。ありがとう。約束よ!」


アサヒM「これが不可思議な彼女との、出会いだった」



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次の日の夜


アサヒ「あっ…」


マヨイ「あ!こんばんは!」


アサヒ「こんばんは……昨日ぶり…」


マヨイ「ふふ。昨日ぶり!」


アサヒ「あの…昨日はごめんなさい」


マヨイ「え、なんで謝るの?」


アサヒ「その…病気?、とか、軽率に聞いちゃったから…」


マヨイ「?」


アサヒ「失礼だったな、と思って…」


マヨイ「あぁ!全然!気にしてないよ」


アサヒ「そ、そう?」


マヨイ「うん!」


アサヒ「…あー……あ、あの、名前…」


マヨイ「え?」


アサヒ「自己紹介、とか、」


マヨイ「あ!そうね、名前、言ってなかった!

私、マヨイ!真っすぐな夜って書いて、マヨイ」


アサヒ「俺、アサヒ。

旭川の旭に、太陽の陽で、アサヒ」


マヨイ「え!私たちの名前、似ているのね!」


アサヒ「意味は、正反対だけどね」


マヨイ「ねぇ、アサヒはなんで夜に散歩しているの?」


アサヒ「…ウチ、親がね…仲良くなくて…」


マヨイ「うん」


アサヒ「昼は仕事で家空けてるからいいんだけど、

夜はずっと喧嘩してて…それが嫌で、外に出てる…」


マヨイ「そうなの…」


アサヒ「マヨイは…あ、夜しか外に出られないから、だっけ?」


マヨイ「そう」


アサヒ「…なんだっけ、光線過敏症?」


マヨイ「なぁに?それ」


アサヒ「え、と…紫外線に当たると、痒くなったり水ぶくれになったりする、病気」


マヨイ「ふぅ〜ん」


アサヒ「ふぅ〜ん、て…」


マヨイ「よく分からないんだ

でも、ママがダメって言うから」


アサヒ「あ〜…そう…」


マヨイ「そう」


アサヒ「マヨイの肌、すごい白いもんね

確かにこれは日に弱そうな色してる」


マヨイ「色で分かるの?」


アサヒ「…ごめん、適当な事言った…」


マヨイ「ふふ。なぁに、それ〜」


アサヒ「あ、はは…あ、マヨイのウチは?親とか、心配しないの?」


マヨイ「…うん。私、一人なの」


アサヒ「え、そうなの?」


マヨイ「うん。昼間は部屋から出ないから分からないけど。

夜にキッチンに行くとね、ご飯が置いてあるから、それを食べて、あとはこうやって、散歩したりしてる」


アサヒ「そっか…でも女の子が夜中に一人で外にいるのは危ないんじゃないかな」


マヨイ「大丈夫よ。今まで誰とも出会わなかったもの」


アサヒ「俺とは出会ったじゃん」


マヨイ「アサヒとしか出会わなかったから大丈夫」


アサヒ「それって本当に大丈夫なの?」


マヨイ「大丈夫!」


アサヒ「そ、か」


マヨイ「ん。…今日は明るいね」


アサヒ「満月だからね」


マヨイ「満月?」


アサヒ「月が欠けてないでしょ?」


マヨイ「月が欠けていないと、明るいの?」


アサヒ「うん。難しいことは分からないけど」


マヨイ「ふぅん。私、満月、好きだなぁ」


アサヒ「そうなんだ?」


マヨイ「なんだかワクワクする」


アサヒ「ふ。狼男みたい」


マヨイ「狼男?」


アサヒ「満月を見ると、獣の姿になっちゃうの

あ、でもマヨイはどちらかと言うと吸血鬼かな」


マヨイ「吸血鬼ってなぁに?」


アサヒ「え。吸血鬼、知らないの?」


マヨイ「知らない」


アサヒ「マジ?あー、うちに本があるから、今度持ってくるよ」


マヨイ「アサヒが読んでくれるの?」


アサヒ「いいよ」


マヨイ「ふふ。嬉しい!楽しみにしてる!」


アサヒ「あぁ、じゃあ俺、そろそろ帰るね」


マヨイ「分かった!またね、アサヒ!」


アサヒ「うん。またね、マヨイ」



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次の日の夜


アサヒ「おーい」


マヨイ「アサヒ!」


アサヒ「こんばんは」


マヨイ「こんばんは!本、持ってきてくれた?」


アサヒ「お〜…すごい目を輝かせている〜

ほら、ちゃんと持ってきたよ」


マヨイ「やった〜!!早く早く!」


アサヒ「ちょ、せめてどこかに座らせて」


マヨイ「じゃあこっち!ここ、どうぞ」


アサヒ「どうも」


マヨイ「どんな本を持ってきてくれたの?」


アサヒ「児童書だよ」


マヨイ「絵本みたいな感じ?」


アサヒ「そうねぇ〜。んじゃ、読むよ」


(間)


アサヒ「どう?」


マヨイ「うん!とっても楽しかった!」


アサヒ「マヨイ、吸血鬼だったりして」


マヨイ「確かに夜にしかお外に出られないけど…もしかして、私、吸血鬼なのかな?」


アサヒ「口の中見してみ?」


マヨイ「あーーーー」


アサヒ「ん〜…牙、牙…どうなんだろ…俺の方が尖ってるかも」


マヨイ「じゃあ私は吸血鬼ではないってこと?」


アサヒ「人の血を飲みたくなる?」


マヨイ「ならない、わね」


アサヒ「銀製品とか、十字架、ニンニクは?」


マヨイ「気にした事なかった。ニンニクは平気よ」


アサヒ「じゃあ違うんじゃない?」


マヨイ「そっか〜残念」


アサヒ「残念なんだ」


マヨイ「だって吸血鬼、楽しそうだもの」


アサヒ「そうかな?」


マヨイ「そうよ」


アサヒ「そうか〜」


マヨイ「アサヒは吸血鬼になりたいって思わないの?」


アサヒ「思わないかなぁ…血、まずそうだし」


マヨイ「空を飛び回れるわよ?」


アサヒ「それはちょっと楽しそう」


マヨイ「ふふ」


アサヒ「でも日光を浴びたら死んじゃうのは、怖いかな」


マヨイ「あ〜」


アサヒ「あ…ごめん」


マヨイ「?」


アサヒ「マヨイも日光ダメなのに、無神経な事言った」


マヨイ「大丈夫。それに私は日光を浴びても死なないもの」


アサヒ「そっか。なら安心」


マヨイ「アサヒ、私が日光を浴びて死んじゃったら悲しい?」


アサヒ「そりゃ、まぁ」


マヨイ「そっか」


アサヒ「うん」


マヨイ「ふふ」


アサヒ「嬉しそう」


マヨイ「そりゃ、まぁ?」


アサヒ「さっきの俺の真似じゃん」


マヨイ「真似しちゃった」


アサヒ「…変な子」


マヨイ「私?」


アサヒ「うん」


マヨイ「…変な子は、嫌い?」


アサヒ「え?…いや、嫌いじゃないよ」


マヨイ「じゃあ、好き?」


アサヒ「なっ!、そ、そう言う事はさ、」


マヨイ「そう言う事って、なぁに?」


アサヒ「〜〜〜、…す…好き、だよ…」


マヨイ「えっへへ〜」


アサヒ「………変な子。マヨイって、変な子!」


マヨイ「そんなに変って言わないで」


アサヒ「ふ。ごめん」


マヨイ「…うん」


アサヒ「あ、明日さ、海まで歩かない?」


マヨイ「海?」


アサヒ「うん。マヨイと海見たい」


マヨイ「私、海、行ったことない」


アサヒ「え?そうなの?こんなに近いのに?」


マヨイ「うん…でも、海、近くで見てみたかったの」


アサヒ「じゃあ、一緒に行こう」


マヨイ「連れてってくれるの?」


アサヒ「うん。明日、タオル持ってくるからさ。波打ち際を一緒に歩こう」


マヨイ「わぁ、楽しみにしてる!」


アサヒ「ん。じゃあ、今日はそろそろ帰るね」


マヨイ「うん。また明日ね!」


アサヒ「また明日」



----------



次の日の夜


マヨイ「アサヒ!」


アサヒ「こんばんは」


マヨイ「こんばんは!今日は海に連れていってくれるのよね?」


アサヒ「うん。タオル持ってきた」


マヨイ「楽しみ!」


アサヒ「俺も、楽しみ」


マヨイ「波の音、夜だと家まで聞こえるから。ずっと気になってはいたんだけどね」


アサヒ「こんなに近くに海があるのに、行った事ないって言うから、嫌いなのかと思った」


マヨイ「ううん。でもなんか、ドキドキする」


アサヒ「え?」


マヨイ「ふふ」


アサヒ「…ふ。マヨイ、手を出して」


マヨイ「?、はい」


アサヒ「危なっかしいから、手を繋いで行こう」


マヨイ「失礼ね!…でも、お願いします」


アサヒ「はい」


マヨイ「…私、波の音、好きよ」


アサヒ「うん、俺も好きだよ」


マヨイ「でもね、たまに不安になるの」


アサヒ「この音が怖い時、あるね」


マヨイ「うん…海って大きいでしょう?」


アサヒ「うん」


マヨイ「私なんか簡単に飲み込んで、暗い暗い、海の底に閉じ込めてられてしまう。そんな想像をするの」


アサヒ「うん」


マヨイ「おかしいわよね」


アサヒ「そんな事ないよ。地球の70%は海なんだ。そんな想像もつかないくらい大きなものに飲まれてしまう恐怖は、誰にだってある」


マヨイ「アサヒは物知りね」


アサヒ「そうかな」


マヨイ「うん。アサヒと話すの、とても楽しいわ」


アサヒ「そりゃ良かった」


マヨイ「アサヒと出会えて良かった」


アサヒ「俺も、マヨイと出会えて良かった

ほら、角を曲がったら、もう海だよ」


マヨイ「…わぁ…」


アサヒ「どう?初めての海は」


マヨイ「…素敵」


アサヒ「ふ。 もっと近くまで行こうか

靴は濡れちゃうから、ここで脱いでいこう」


マヨイ「うん!(靴を脱ぐ)よいしょ、っと…」


アサヒ「水、冷たいかな」


マヨイ「海の水は、冷たいの?」


アサヒ「うん、びっくりするかも

ほら、おいで」


マヨイ「…わ…冷たい!」


アサヒ「大丈夫?」


マヨイ「わ、わ…あ、足の裏が!なんかヘン!沈んでしまうわ!」


アサヒ「大丈夫、沈まないよ」


マヨイ「あは、あははっ!くすぐったい!」


アサヒ「転ばないでね」


マヨイ「海って、こんな感じなのね…!」


アサヒ「気に入った?」


マヨイ「うん!とっても!」


アサヒ「…マヨイは、吸血鬼より、人魚姫の方が似合うね」


マヨイ「人魚姫?」


アサヒ「もしかして、人魚姫も知らない?」


マヨイ「知らない」


アサヒ「下半身がね、魚なの」


マヨイ「それで、お姫様なの?」


アサヒ「そうだね」


マヨイ「海の中を自由に泳げるのは、いいわね」


アサヒ「海の中もね、とてもきれいだよ

珊瑚礁とか、熱帯魚とか」


マヨイ「アサヒは海の中の世界も知っているの?」


アサヒ「写真で見ただけだけどね」


マヨイ「そう。でも人魚姫はやめておくわ」


アサヒ「どうして?」


マヨイ「魚になったら、アサヒとお散歩できないもの」


アサヒ「っ、…はぁ〜〜〜…」


マヨイ「どうしたの?」


アサヒ「…マヨイって、ズルいよね」


マヨイ「え?」


アサヒ「本当に、ズルいよ(マヨイを抱きしめる)」


マヨイ「っ!…どうしたの?急に。…アサヒ、苦しい」


アサヒ「ごめん。今だけ、許して」


マヨイ「…うん」


(間)


アサヒ「…さぁ、今日はもう帰ろうか」


マヨイ「うん」


アサヒ「マヨイ、俺の家に寄っていかない?」


マヨイ「え…でもお父さんとお母さんは?大丈夫なの?」


アサヒ「うん。もういなくなったから」


マヨイ「いなく、なった?」


アサヒ「マヨイと一緒。一人になったんだ」


マヨイ「そう…そうなの。それは寂しいわね」


アサヒ「寂しい…だからマヨイ、俺と一緒にいてくれる?」


マヨイ「ええ、もちろん」


アサヒ「良かった。あ、マヨイ、犬は平気?」


マヨイ「アサヒ、犬を飼っているの?」


アサヒ「うん。犬も猫も、鳥もいるよ」


マヨイ「素敵!御伽話の世界みたい」


アサヒ「マヨイが喜んでくれるなら、俺も嬉しいよ」


マヨイ「名前はなんていうの?」


アサヒ「…名前?」


マヨイ「うん。犬の名前。猫も。鳥も」


アサヒ「…そうだな………マヨイ」


マヨイ「えっ?」


アサヒ「マヨイ。みんなみんな、マヨイにしよう

マヨイを家に連れてくる練習台だったから」


マヨイ「ア、サヒ?」


アサヒ「だから、ずっと一緒に、そばにいてね、マヨイ

マヨイが日の光苦手っていうからさ、大変だったんだよ?

でも大丈夫、日の光なんてこれっぽっちも入らない、君だけの…いや、君と俺だけの、部屋を作ったから…


今日からずっと、ずぅーと、一緒だよ

俺の、ラプンツェルになってね、マヨイ」



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ネグレクトを受けている女の子

太陽に当たると良くないからと、部屋から出してもらえない

親が寝ている夜の間だけ、部屋の外に出られる

小さい頃、親に「変な子」と言われた

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キミと夜に関しての考察【0:1:1】20分程度 嵩祢茅英(かさねちえ) @chielilly

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