性癖マッチングアプリ
@maruko_yoshida
第1話 変態アプリ発見
「ふーっ、金曜の夜までお疲れさん。」
人もまばらになった駅のベンチで座りながら、桑田誠は鞄から出したビールを一口飲んだ。
終電まで仕事をし、飲み会帰りのサラリーマンや学生が多いなか、駅前でビールを買い、家の最寄駅に着いた時に、一杯飲むのが金曜の唯一の楽しみだった。
「あーっ、美味いなぁ」
都心の駅であれば、人目を気にしてアルコールを飲むことなどできないが、ここ桑田が住んでいる最寄り駅は、郊外のため金曜の夜、しかも終電ともなると、人もいないのだ。
桑田は、ビールの残りを飲み干すと、一息吐いた後、改札に向かった。
家は駅から歩いて二十分ほどの山手にある。「あーぁ、あの時あんな事がなかったら、この道も億劫じゃないんだよ酒だなっ‥」
仕事場から片道一時間半かけ出勤し、駅から徒歩二十分の場所に家を買ったのも、その昔、妻となる人と住むためだった。
結婚直前で、破棄され今はまだローンが残ってる家に一人で住んでいる。
家に帰り、冷蔵庫にあったビールを飲み、
乾き物を食べる。これが金曜夜のいつもの過ごし方だ。
「あーっ、なんかつまんねぇなぁ‥」
そんな調子でビールが終わった缶を、流しに置きつつ、次のハイボール缶のプルトップを開けながら、携帯ゲームをしていた。
「しかし、このゲームアプリ広告が多いなぁ」とハイボールの飲みながら歩いていると
ケーブルに引っかかり、
「あっ!」そう叫んだ時には、倒れこみ、あたり一面にハイボールが飛び散り、テーブルにあった乾き物があたりに散乱していた。
一週間の疲れが、余計にどっと押し寄せ、あたりを掃除し、携帯を覗くと見たことないアプリをダウンロードしていた。
さっき、倒れた拍子に指で広告のアプリをダウンロードしてしまったらしい。
「ん?ラブリード?」と、酔いの勢いもあり
面白半分でアプリを開いてみた。
開いてアプリの内容を読んでいるうちに、ソファに沈み込んでいた背中が起き上がり、酔いも冷めてきた。
最初は、ラブリードと言うセンスのない名前からマッチングアプリかと思ったが、ただのマッチングアプリではなかった。
「性癖」がマッチングした人同士を繋ぐアプリだつた。
まだそれなりにある性欲を、どこかにぶつけたいと思っていたが、なかなか機会がなかった。
暇つぶしにでも、登録をしてみた。
『現在地より、近い人を探す』で、思いのほかヒットした。
かと言って、これと言った性癖がない桑田は近くの人から、一人一人の性癖を見ていくことにした。
一人目は、四十代、独身、騎乗位が好きで、首を紐で縛られながら野外でセックス希望。
「うわぁ〜、ハードル高いなぁ〜」と笑いながら、世の中には変態がいるもんだなぁ、と思い、次へスワイプ。
二人目、六十代、旦那と死別、複数人数希望。
「ん〜、これって本当に実在してる人?」と言い笑いながら、もちろんスワイプ。
三人目、三十代、既婚者、駅の構内希望。桑田は身を乗り出して、少し考えた。
「駅の構内か‥、ちょっと興味があるかもな」と考えたのち、ラブ申請をした。
数分後、三十代、既婚者から申請許可がおりた。
名前は、『さやか』と書いてあった。
性癖マッチングアプリ @maruko_yoshida
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