テープで人は殺せる。 ロープでも人は殺せる。 なら希望では......

上殻 点景

第1話


 そんなあどけない春の日差しが入る、教室の片隅で、佐内内洋子は、春を感じていた。洋子というありふれた、しみったれた名前を付けた親にはいささか苦言を申し伝え上げたいところではあるが。私がため息を吐いたところで、春の日差しにかき消されてしまうのが関の山であろう。


 山といえば、山ではないが、山の近くにある桜の木の下で、人が死んだ。

死んだというには語弊がある、正確には死んだかもしれないのである。


 では、何故そうか、それは木の下にロープと制服が転がっていたのである。

ロープと制服だけだ、決して肉体の肉の字もなければ体の字もないのである。


そもそもそれだけの話なのだが、どこかで聞いた馬鹿がポリにチクったらしく、めんどくさいことに朝からサイレンの音が鳴りやまぬ。

全く陽気な春の日差しを台無しにしてくれる。


 だが、だが、まあ気持ちもわからないことでもない。木の下にそんな事情体があればだれでも驚くだろう。例えるならラーメン屋にかれーがああるものである。

 そのれべるで違和感というものが存在する。存在するだけで事実ではないというのが、サイレンの鳴りやまぬ一員なのかもしれない。


 ちなみに先にいっておくが、ウチの学校の木の下には別に伝説という伝説すらない。

ただの創立60周年を祝う桜の木なのである。しいて言うなら、昔タイムカプセルを埋めた程度なのである。


程度であるが如くであり、だがしかし手だ。

奇妙であるは、今日は教室の人数が少ない。大方野次馬の限りなのではあるが、

それにしては違和感がある。妙というより勘の部類だ。話せば笑われる、理がないそんな考えなのである。


まあ、いいか。そんな考えの元授業の準備をする。春の日差しがこんなに気持ちいいんだ。この話もそのように忘れ去られていくに違いない。そう思うのであった。


――――――2日目

 今日は、家庭科室で制服とテープが見つかった。正直、ここまでくるとめんどくさいの一択なのだが、またもや私の平和的気分は朝から鳴りやまぬサイレンのおとでかき消されることになる。


 本当に迷惑だ、迷惑すぎる。1日までならともかく2日もこうなると、荘厳なるオペラをそこら辺のじぇんきーなぎたーでかき消されたような、そう胸糞な悪さがこみあげてくる。


 ともかくだ私は決意した、こんなしょうもないことというか、なんというかうっとをしいことを起こしている犯人をとっちめてやると。そう純然な少女にすぎないが、私の頭は少し人より多く回る。決して物理的にではなくてだ。


 まあ、そうと分かると、私はテープ張り巡らされる家庭科室に入り込み。中を見る、中では警察が何をしていいのかわからない蟻のように、なかで動き回っていた。肝心なものを見yプと思ったのは束の間私は、警察に外に出される。折角まるで先生のように服を着て、威風堂々と歩いてみたが駄目だったらしい。まあ、無理なもんは無理である。そう思い、私は数々のトロフィーが飾られる校長室の前を通り抜け、教室に戻るのであった。


 結果、まあ何もわからなった。

 正直わからないというレベルではなく、何も成果がなかったというのが適切なのだが、正直いったい何が起こってるというレベルである。まあ、現状残されているのは制服のみ、人は死んでいないのであろう。

 そう思う、いや思うというのは不可能か。人は死んでいる、死んでいるからこそあそこに制服は残っているのである。そういうことだ。今回の件は、まるでブリキのロボットがさびるように、そう起こるべくして起こったような話なのである。


――――――3日目

 警察は来なくなった。春の陽気は取り戻し、私はすやすやと眠ることができる。やはり、窓際の席は最高である。このためだけに、班員や先生をおどして勝ち取っただけがある。話を戻そう、今回の件、結局死亡事件として解決された。

 原因は自殺。そう自殺だ。死体は無く、肉体もなく、思いだけが残った。故に死亡事件である。


 まあ、妥当なところだ。やや古臭い制服も、よく考えれば気づくことである。そもそもうちには制服がない。なのに制服なんぞがあるから事件になるのである。

まあ、死んだのは60代の男女の二人、別に彼女彼らに接点はなく。たまたま同級生だったそんな話である。そう、たまたま思い出したようにタイムカプセルを掘り出し、自分たちの過去の希望に殺されたそんな話。


 なれなかった憧れ、そんな思いは歳とともに忘れ去られていく。日々を生きるのは結構だがその日々は何のために浪費されるのか。なぜそうなのか、そう理解しなければ日々は、無作為に無為に過ぎていく。意味がなければ意味はない。


 故に彼らは殺された。いや殺されたというか、何かを残したくなったというのが適切か。まあ、残したのが古臭い思い出というのは何ともな話である。せいぜい、彼らの老人ホームに花でも送ってやるのが情けというものなのかもしれん。


まあ、そういって、今回の話は締めくくる。

この話に意味はなく、何もない。ただ感じただけに、この針は進む。


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テープで人は殺せる。 ロープでも人は殺せる。 なら希望では...... 上殻 点景 @Kagome_20off

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