第29話 美少女JKモデル、ガチで炎上する①


 季節はマジで秋。

 憎きクーラーが、ようやく全教室で止まり始めた。


 冷え性のウチはガチでホッとした。

 もう少しで、教室にガチの布団持ってくるところだったわ。

 

 まる子インタビューから数日経って。


 雨降ったと思ったら、いっぺんに冷えてきたこの世界でも、ウチらは変わらず家庭科室に入り浸ってた。

 今や、学校中の有名人になっちゃったウチらにとって、そこが唯一落ち着ける隠れ家みたいなもんだ。


 よしひとは、雑談するウチと紗凪の前にスマホを突き出した。


「これ、この前言ってた、りりあさんのアカウントっス!」

「あぁ、あったねそんなん」


 ウチらが画面を覗き込むなか、よしひとが一人演説を始める。


「SNSが提供する真のバリューっていうのは、バーチャル上でカスタマーとのエンゲージにコミットできて、ボーダーレスかつソーシャルなコネクションを誰でも作れることなんス。だから、アカウントにはエモーショナルなポリシーを書いて、イノベーターとアーリーアダプターに見つかりやすくすることが肝要なんス」

「日本語で言うと?」

「全部日本語っすこれ!」


 よしひとが騒ぐ。


「よくわかんねぇけど、バーチャルでどーたらがこーたらになった結果がコレだっつーワケ」

「はいっス!」


 ウチはスマホ画面を前に顔を顰める。


『山崎りりあ@K高ミスコンNo.22』


 ウチの名前を冠したアカウントのプロフィール画面。

 許可なく本名が使われてる……まぁ、これは許してやろう。

 自己紹介文がマジでありえんかった。


『ブスが虐げられる社会にケンカを売る! 間違った価値観はウチが糺す! りりあはこの世に復活したジャンヌダルク! ブスたちを自由の名の下に解放する!』


 ウチは絶句した。


「ねぇ、なにこれ……」

「りりあさんがいつも言ってることをまとめたんス!」


 彼女は自信満々に胸を張っている。


「いつ誰がこの世に復活したジャンヌダルクとか言ったよ……」

「それは、りりあさんの役割っスよ。ブス……いえ、不美人代表として、不当に貶められてきた人たちの代わりに立ち上がるんス! りりあさんは、美人たちの人権と地位向上を背負った革命児なんスよ!」

「センス無い……」

「えっ⁉︎」


 よしひとはわかりやすくショックを受けてた。


「つか、なにこの投稿も。『ブス諸君、立ち上がれ!』って、ウチ政治家なん? こんなんでバズるわけないっしょ」

「でも、フォロワーは百人いるっスよ」

「フォローのほうが多いんだから自慢なんねぇよ。貸してみ」


 ぐぬぬと唸るよしひとの手から、スマホを奪い取る。

 このままコイツに暴れられたら、ウチの恥だ。


 ウチはよしひとから奪ったスマホのインカメをサクッと起動。上から角度をつけて自撮りする。

 カシャ――ッ。

 撮れた画像は、そこまで盛れてなかった。けど、ウチの顔面はそもそも爆盛れなんでオッケー。

 無加工であげても平気ってことが、強者の証なワケ。


 ウチは慣れた動作で写真をアカウントにアップした。


「り、りりあさん……今なにを……」


 よしひとが目の前で震えてた。



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