第37話 おまけ
「はあ?ファルコとアンネ先輩が結婚した?え、する、じゃなくて?した?もうしたの?」
珍しく動揺したミハイルの声が、部屋に響く。
事件の詳細や会議の結果の報告の為、ミハイルの元に集まっていたいつものメンバーの元に、驚きの知らせがもたらされた。
「はい。昨日婚姻届けが出されまして。会議の関係もあるので陛下に書類が回されたら、秒で国璽が押されたそうです。」
国璽が押された婚姻届けとは。
確かにリラリナ王国内で、どの書類の裁可にも使える万能にして、最高印ではあるけれども。
「昨日釈放されて即届け出したってこと?・・・で、電光石火だなぁー。」
「まあ、あのお二人、やっぱり思い合っておられたのですね。素敵ですわ。」
目をキラキラと輝かせて喜ぶナタリー。
「え!あの二人って付き合ってたの!?」
驚くジャック。
「そんなはずはないでしょう。いくらリラリナ王国では平民が活躍してきているといえ、さすがに公爵令息と平民の結婚は議会が認めない。・・・・それなのにお気持ちを伝えられるような方ではないだろう、ファルコ様は。結婚はアンネさんが活躍して、叙爵されてからのことだろうと思っていた。」
とユーグ。
「え!ファルコ様って、アンネ先輩の事好きだったの?え!皆知ってたの?教えて下さいよー。」
驚いているのはジャックロードだけのようだ。
「いや、教えられなくても誰でも分かるだろ。」
リラリナ学園に在学中、二人が密かに温室でお茶している事は有名な話だった。
たまに空気を読まずに質問などしに加わりに行った男児生徒などは、ファルコの絶対零度の視線にさらされて、ものの5分で撤退したという話だ。
逆に、ファルコの評判が落ちた時は近づきもしなかったような女生徒たちが、何事もなかったかのようにしれっとお茶会に参加しようとしたら、アンネ先輩に悪気なく矢継ぎ早に議論を吹っ掛けられて、これもすぐに退散したそうだ。
「ということは、ファルコは昨日釈放されて、昨日告白して、昨日婚姻届けを提出して、即認められたということか。」
・・・・・先を越されたな、と少し悔しそうな、嬉しそうなミハイル。
「結婚祝いに新居でもプレゼントしようかな。」
そう、呟いた。
「いえ。最近購入されたファルコ様のお屋敷ですが、全てファルコ様個人の資産で購入されたものである事が証明されたので、没収はされないそうです。今もう新しい家具なども運び込まれているところだとか。」
知らせを持ってきた事務官が、驚きの追加情報をくれる。
「・・・今日?今??」
「新居も用意済みとは、用意周到。さすがですわねファルコ様。」
「昨日まで結婚するのは不可能な身分だったはずなのに、既に新居が用意してあったということか・・・。」
ユーグもこれには驚いた様子だ。
「・・・平民と公爵令息が出会って、結婚する確率ってどのくらいのものなのかしら?」
「確率以前に、今まで例がないんじゃないか?」
そう答えたのはアレンだ。
囮になって逃げ回ったせいで、少しだけ怪我を負ったけれど、どうやって逃げたのか無事に帰ってきてくれた。
「聞いたことがないな。でもあの二人なら、革命などなかったとしても、遠からず結婚していたイメージしか思い浮かばない。アンネ先輩の何があっても絶対出世してやると言うあの熱い執念は、そのためでもあったよね。」
「いや、もう実際に結婚する前提で準備を始めているファルコ様の方が・・・・。」
思わぬ朗報に沸き立つミハイル達だった。
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