僕の推しはフローリスト
ゆうせい
第1話 彼女
グミやん「おはぽーん!」
ぽん…あまりにも自然に
今思えば彼女の口癖が移ってしまったそれだけ長く一緒に居たということなのか
ああ、懐かしいことを思い出した
彼女の入れたコーヒーを啜りながらそっと眺めようと…するとにっこり
彼女の名前は「恵」通称グミやん
僕の天使なのか女神なのか…悪魔なのか地獄なのか…
ただひとつ言えることは…
いつものようにメダルゲームのクール104をやっているとこのゲーセンで仲良くなった友達がカラオケへ誘ってきた
「ゆうせい君カラオケ行かない?女の子も来るよ」
他のゲーマーも来るみたいで乗り気じゃなかったけど交流も大事かと思って参加するも案の定孤立してしまう
友達の歌唱力に聴き入るほど特に人と話すこともなかったし
おしゃべりは嫌いじゃないけど話題によってあまり話せないし
自分のことはよく知っていて得意な分野だけしか話せないオタク気質だったから進んで話すこともなく…
ふと向かいの左斜め前に同じような孤立した女子が見えた
一瞬自分と同じかなって思ったけどだからって仲間ってわけじゃないんだし話しかけるのもな
ただ視界に入ってしまう
クラスによくいる一番可愛い子ってレベルを凌駕していた
赤髪ボブにギャル系の格好で透き通るような白い肌
こんな子が同じクラスにいたらずっと眺めてただろうに危ない危ない
必死にカラオケ画面へ目を向けるヘタレだ
声を掛けようか頭の中で何度かシュミレーションしてみたが音と歌声でかき消されそうで
もーどうでもいい…
お腹空いたってことで参加者半分がファミレスに行くこととなった
順番これで良かったのか?歌から入りたかった友達のプランって感じだったのか?
入店するとき彼女の姿を見た瞬間そんなことがどーでもよくなるほど嬉しくなった
なんとなく予測通り4人の席順はさっきと似た感じで今度は正面に彼女
友達を中心に歌の話からゲーセンの話になってさっきよりはまとまってきた?わけではなく…
なんとなく気付いた友達がそっぽ向いて孤立してた彼女へ話題を振った
「モンハンやってるんだって?」
彼女は友達を見て
「やっとオンしてみたけど全然わかんなくて街入ってブラブラしてたら挨拶も出来ねーのかって言われちゃった笑」急に目をキラキラさせて話した
「俺オンゲーわかんねーけどゆうせい君が始めたって聞いたよ」
「あ、うん、世界観が好きで楽しみにしてたからやってみたけどオフのクック怖くて挫折してた笑」
彼女がクスって笑ってくれたかのように見えた
「今度オンしてみるよ」
ハンバーグステーキを頼んだメニュー被ってたけどそこには触れず食べるときはいったんおしゃべり中断して彼女は真剣にそして優雅に頂き時より魅せる笑顔が最高だった
モンハンのモの字も話せなかったかもだけど意外にも盛り上がったもしかしたら僕の思い過ごしかもだけど
「ゆうせいさんに送ってもらいたい」
「あ、はい」一瞬耳を疑った
友達の妹の同級らしく「お兄ちゃんゲーマーだからって話で機会あって来てみたけどオンゲーわかんないってゆうせいさんいなかったら私意味不で4んでた笑」
彼女の家に着く
連絡先も知らないのに家がわかっちゃった複雑な距離感けどそれは今日で終わり舞い上がった気持ちを落ち着かせた
「それじゃおやすみなさい」
「ねね、ゆうせいさんいつオンするの?」
胸が高鳴った
髪型見せたくてヘルムを付けないグミやん
スキルが発動せず4にまくる彼女はパーティー内で批判される
「そんな言わなくてもなぁへこむ笑」
「大したスキルも防御力も変わらないのに人のせいにしたいだけだよ手数があればヘイトも上がるし活躍した証拠」
まーそんなの誰も聞いてくれないしこーゆーのって上手い人、強い人、開発者とかしか発言力弱いよね勝ち負けの話じゃないのに…
グミやんはそれからヘルムを装着するようになった
それがどこか悔しかった
僕は格ゲー強過ぎて対戦相手がいなくなったため謎のローカルルールに則りまったりプレイから別の楽しみ方と弱くなっていった悔しさでモンハンに逃げてきたわけだったけど
逃げた先でも同じこと似たようなことは起こり得て…
自分が最強にさえなっちゃえば周りから小言なんて言われずに彼女と楽しく遊べるんだ!ってどーしてそーなったって思える思考回路
歪んだゲーマー魂に火が付いた
ところでモンハンの最強ってどんなん?しかもオンラインで笑格ゲーみたくプレイヤー同士で戦えないしレーシングゲームでもないから討伐タイムアタックってのも微妙
結論
みんなから一番上手いって言われて崇拝されれば良いのかな
グミやんはソロで小ネタを見つけては僕に教えてくれてその小ネタをものにして野良で披露すると僕の知名度が上がっていきいつしかわざわざ会いに来てくれる猛者達がいて次第に増えていって…
するとその都度彼女は不機嫌になった
「私はゆうせいと二人で遊べればそれだけでいいの」
「私は二人だけで遊びたいゆうせいを独占したい」
彼女は人が苦手で距離を取る
だけど仲良くなるとすごく明るくて元気
距離も近くてたまに行き過ぎた病的な言動も笑ヤンデレか?イヤ…画面越しだけだからなのかデレの感じは伝わってこない笑
「おねーちゃんのお古だから服がギャル系なんだけど私清楚系だからね」
物静かに働く彼女は確かに清楚そのものだった
仕事が終わると立ち読みしている僕のところに来て
「お疲れんこん!」「今日も来てくれたんだね」
僕たちは意外にも近くに居た
彼女は本屋さんでアルバイト僕はその近くのスーパーテナントの花屋で働いていた
いつしか一緒に帰ることが当たり前になっていき彼女が終わるのを待って晩御飯に行ったりもしくは彼女が先に終わっているとだいたい立ち読みしてるから探して声をかけた
「グミ洗脳完了お仕事やるぞー」
どうやら自己啓発系のビジネス書を読んでいたらしい
「グミやんのテンションにはついて行けない笑」
グミやん「もう1年か新しいの出ちゃうね」
ゆうせい「楽しみだなー次はどう攻略するか」
グミやん「…そ…だね」
公園のブランコに腰を下ろした
グミやんは立ち漕ぎ「元気だね笑」
「私ねー、生まれて初めて本当に毎日が楽しかったの」
「おーいどーしたー急に笑」
「私って根暗だから多分この世界を楽しんでこれなかったってわかったの」
「えーそんなことないって最初っからすごく元気テンション高すぎだったよ」
「ぅんーん、それは違う私を見てくれてたから、だから私が心から見せたいって…思えたから」
「普段の私は距離取ることもあって人と触れ合うことなんてほとんどなかったもん」「だからオンゲーの世界でほんのちょっと人とチャットしたり小さなアクションだけでも刺激が強くて、けどそれがちょうど良かったのかも」
「大袈裟かもだけど私ー、人生をやり直したというか一度クリアしちゃった感じ」
「ゆうせいがモンハンで一番になるって言ったとき私のためだって思ったの」「あ、最強になるって言ったけどどーなっただろモンハンで。なれただろうか笑」
「私を知ってる私をちゃんと見てくれているって…だから頑張ろうって思ってついて行った」
「今まで何にも面白いことなんてなくて生きてる意味とか4んじゃってもいいのかなって思う時さえあった」「けどホントはやりたかったこととかあったのかも、ゆうせいが見てくれるからいっぱい見せたくなっちゃって面白くなったの」
「頂点を見せてくれたこれは私の財産、大切な宝物だよ」
「私、ゆうせいのことが大好き」
ある雨の日のこと
「雨降るとお客さん減っちゃうのよね」オーナーがため息混じりに言うと「お店辞めちゃおっかなー」続けて「やる気あるなら譲るよ?」
え?ちょっと待って
急な展開にパニックった
仕入れもやったことなかったしどれくらい利益が出るのかなんてわからない
オーナーが帰りしばらくお店で佇んでいると彼女が来て「あれ?マズかった?」「全然来てくれないから来ちゃった」
かくかくしかじか…「僕には無理だな」
正直なところ今の生活に不満がない繁忙期じゃなければ定時に帰れてグミやんとも遊べる何不自由も無い今が最高なんだと思っている
すると彼女から告げられた
「ヘタレちゃんですか?笑」
モンハンでは高い地位にいた感覚があって忘れてたけど僕は社会的弱者なんだ
実は図星でちょっと傷ついた「僕には無理なんだ、笑ってもいいよ」
座り込んだ僕の前に座り込み両手で僕の頬を軽く叩くとそのまま両手で挟んで額と鼻をつけてきた
「そんなことないんだから自信持って、私手伝ってあげるから」「今度は私の番」
「あなたを社長にしてあげる」
今ひとつだけ言えることがある…それは
彼女は最強である
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