第9話


「救国のお礼に爵位いらん?」

「貴族はコリゴリ」

「じゃあ、うちの息子いらん? 皇族離れて無爵位なんだけど」

「いただきます!」

「ちょっとまて。なんの話をしてる」

「「褒美」」

「……俺はなんだ」

「息子」

「同級生発、共同経営者経由、恋人行き。たったいま入り婿に乗り換えが確定した優良物件」


そんなやり取りで、私は恋人止まりだった関係から彼の父親の後押しで入り婿をゲットしました。

そうなると俄然、義父はヤル気を出した。


「よくも息子の嫁を好き勝手にしてくれたな」

「そ、んな……」

「知らなくて」

「知らなかったら何してもいいんかあ!!!」


すでに平民に落ちたにも関わらず相手に態度をかえないとは…………


「ちょいとそこのお義父とう様」

「どうした?」

「その二人には身元を明かさず、牢にぶち込みましょう」

「それではつまらん」

「ですが、皇帝陛下に対しての不敬罪に無礼に……」


その場合、その身を置かれるのは……


「ああ、面白そうだ」


元の国の貴族が多く入っているその牢は半地下で薄暗く、人の姿は判別しづらい。

そこは、まあ簡単に言えば雑居房なんですけどね。

ただし、という書き出しで始まる但し書きがございまして。


「お二人様、ご案内あんな~い


三ヶ月に一度の庶民の娯楽、『公開処刑』という名の舞台に立つ役者の控え室でもあります。


「我々がどうしてこんな場所に!」

「だって、あなたたち…………お義父様、私の夫のお父様なんですけど……」

「なんだ!」

「早く教えろ!」


言い淀むと鉄柵を乱暴に揺らします。

猛獣のように威嚇を繰り返しています。


「この帝国で一番いっちゃん偉い皇帝陛下、なんですよ」

「「なっにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」」

「ですから~、私の夫は皇子なんです。正確には私とデイジー商会を始めるにあたって本店、いまは規模も大きくなって本社ですが。帝国に置く際に『共同経営者』と言う形で名義を借りたんです。でも、そのまま経営が面白いと言っちゃって。皇籍を放り出しちゃったですけどね」

「「聞いてないぃぃぃぃぃぃ!!!!」」

「だから、いま話しました」


残念ながら、今日舞台の幕が上がったばかりのため、控え室は貸し切り状態です。

舞台に上がれる役者の定員は30名様なんですよ。


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