幻の料理

Grisly

幻の料理

K氏は一流の料理人。

それも、かなり特殊なタイプ。


一子相伝の幻の料理、

「ニマナクライ」を正式に引き継いでいる。


K氏は、腕試しのために、

料理のコンテストへ出場。


審査員達は言う。

「この口溶け、素晴らしい。

 まさに高級和牛のように

 すっきり消えていく。」


「はじめは、リゾットのような

 料理と思ったが、全く違う。

 これは革新的だ。」


「トリュフを上にまぶしてみて、

 新しい味わいを加えるのはどうか。」


「塩味が足りない。

 もう少しアクセントを。」


「いや、私は逆に塩味が濃いと感じた。」


「彼らの言うことは両方正解で、

 どっちかに振ったほうがいいと私は…」


議論はヒートアップし、

皆、もっともらしいことを言っている。


しかし、よく考えてみると、

彼らは確かに一流の料理人ではあったが、

この中の誰も、

この料理を作ったことはおろか、

見たことすらないのだ。


記憶の中から、近いものを引っ張ってきた、

かなり適当な、感想だと言える。



もっとも、世の中のコンテスト等、

ほとんどこのようなものでは…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

幻の料理 Grisly @grisly

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ