霊話・浮世離れな探偵・御子神 霊子。

猫野 尻尾

第1話:心霊探偵。

一話完結です。


御子神 霊子みこがみ れいこ

彼女は霊や肢体と話ができて、霊が見える・・・イタコの末裔。

年齢不詳・・・推測では二十五歳前後だろうと言われている。


イタコは、日本の東北地方の北部で口寄せを行う巫女さんのことで、

霊子も東北地方出身らしい。


彼女は事件が勃発するとどこからともなく現れる。

霊感が異常に強いため、どこかで奇妙な事件が起きると即感知する

能力に長けているようだ。


うわさによると普段は解体を免れた人里離れた古ぼけた洋館に

井戸端 会議いどばた かいぎ」というこれまた一風変わった男と一緒に住んでいるらしい。

むろん井戸端 会議なんてふざけた名前は偽名。

本名は本人しか知らない。


井戸端は今時にしては珍しく着物に袴を着ていて足には下駄を履いている

と言う、ちょっと変わった男。


ふたりが知り合ったのは、男の頭部だけが残されて胴体はどこかに紛失した

状態のそんな奇妙な事件が起きた時だった。


残された頭部から、その男が井戸端の知り合いだったことで彼らは知り合う

ことになる。


霊子は残された頭から、状況を把握してそこから犯人を割り出した。

どうやら胴体はそいつに食われたようだった。


よく鶏を襲って胴体だけ食って頭だけ食わずに並べていくイタチみたいだ。


そんな変な殺し方をする犯人の正体はもちろん人間じゃない。

それは魑魅魍魎ちみもうりょうと言って、人間が見てる前では実体化しない、

いわば幻のような存在。


だからこの世に、そんな怪しい者が存在することなど人間には感知せざること。

なんせ見た者は、その場で命を失うことになるんだから・・・。


だからそいつが犯人だと警察に訴えたところでオカルト好きの変な女だと

思われるのが落ち。


で、その事件で知り合ったのが井戸端・・・この男がこれまた普通の男じゃ

ない。


井戸端は実は、昔絶滅した日本オオカミの末裔で夜になるとオオカミに変身して

霊子の身辺を守っている。

まあ、その気になれば昼間でも変身できるようだが・・・。


ちなみに日本オオカミは昔は真神まかみと呼ばれ「まことの神」「正しい神」

を指す言葉で神聖な生き物だったようだ。


その中でも井戸端は、いわゆる付喪神つくもがみと言う存在。

「つくもがみ」とは、日本に伝わる長い年月を経た獣や道具などに精霊

(霊魂)が宿ったもののことを言う。


イタコの末裔と付喪神、なかなかこういう奇妙でナイスな組み合わせは珍しい。


さて男の胴体を食った犯人・・・なんせ相手は得体の知れない魑魅魍魎ちみもうりょう

魑魅魍魎って言い方がまず、曖昧。


魑魅魍魎とは、山の怪物や川の怪物のことをいうらしく様々な化け物妖怪変化の

ことで、その姿形もさまざま。


麗子と井戸端はそいつらが見えるのだ。

だから魑魅魍魎が絡んだ事件は彼らにしか解決できない。


魑魅魍魎は日頃から人間界をうろうろ徘徊している訳ではなく猿や猪、熊

などと同じように人里に下りてくる。

で、悪さをして山に帰っていく。

味をしめて、また同じ事件を繰り返す魑魅魍魎がたまにいたりする。

そういう化け物は山には帰らず事件を繰り返す。


事件を起こした魑魅魍魎を発見したら霊子は印を切りながら九字護身法くじごしんぼうを唱え彼らを浄化する。


九字護身法とは、主に「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」の九字の呪文と

九種類の印によって除災戦勝等を祈る作法である。

霊子のそれは特に強力なため九字護身法を唱えられた魑魅魍魎は、たいがい

この世からチリのように消え去る。


その間、霊子に多少なりともスキができるため井戸端が身を呈して彼女を

守っている。


そうやって微妙な事件が起こるたびに御子神 霊子と井戸端 会議はどこからとも

現れて事件を解決して、ふたたび闇の中に消えていくのだった。


おっしまい。

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霊話・浮世離れな探偵・御子神 霊子。 猫野 尻尾 @amanotenshi

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