弱いと思われていたユニークスキルで、後輩ヒロインを最強に仕立て上げます

harumageddon

第一章 せっかく異世界へ呼びだされたのに、ユニークスキルの使い道がよくわからない

第1話 ラノベ同好会



 俺、鈴原吟すずはらぎんは、小柄でコミュ障だ。


 昔から病弱でアレルギー体質だったことから、ありとあらゆる食物に対してアレルギーがあった。


 そのため、米は食えず、粟とか稗を食していたため、栄養が偏ってしまったのだろうか。子供の時から俺は平均男児よりも一回りも小柄だった。


 また、入院生活が長く、兄弟もいなかったため、同年代の子たちと接する機会も極端に少なかった。どのようにコミュニケーションを取ればよいのかもわからなかった。


 情報収集もできないので、流行についていけず、彼らとどんな話で盛り上がればよいのかがわからなかった。


 もしかしたら、発達障害があると思われていたかもれない。そのせいで俺の小学校生活は常に孤独だった。


 もとより、他の小学生男児のように休み時間や放課後で鬼ごっこやドッジボールに興じれるほど、当時はまだ丈夫な体ではなかった。また、彼らを誘ったり、彼らの誘いに乗れるほど友好的に接することができなかった。


 そんな俺は、教室の休み時間は誰とも話すことなく、机に突っ伏して寝ているフリをしたり、自由帳にラクガキをひたすら書いたりしていた。友人と呼べるような人を一人も作らず、6年間を過ごした。


 しかし、今思うと、孤独であるほうがはるかにマシだったのだ。


 小学校を卒業し、これからは心機一転、バラ色の中学校生活を期待していた俺に待ち受けていたのは、体の大きなヤンキーたちによる壮絶ないじめの日々であった。


 第二次性徴期のピークを迎え、筋力、体格を得た彼らにとって、体が極度に小さかった俺は、万能感、征服欲を満たすための格好の餌食だったようだ。


 ことあるごとに金銭をせびられ、所持物は破壊・汚損され、なにか事件があった際は冤罪を着せられる。


 抵抗しようとすると、圧倒的な体格差による暴力で黙らされる。同年代の女子より小さかった俺が、体格も大きくて鍛えている彼らに敵うはずがなかったのだ。


 また、そのいじめをうすら笑いを浮かべながら鑑賞している同級生たちに、ヤンキーたちにおびえて注意ができず、いじめを看過する教師たち。そこに俺の味方はいなかった。


 はらわたが煮えくり返る気持ちだったが、さらなる暴力を恐れてやり返すこともできない。かといって親に頼るようなことをしたくもなかった。


 とうとう俺はうつになり、希死念慮をもつようになり、スマホで自殺する方法を検索していたりしていた。


 そのとき、俺はとあるネット小説と出会った。それはファンタジー小説で、現世で体が弱かった主人公が異世界転生し、魔法を駆使して無双するという典型的な俺TUEEEE系の異世界転移モノだった。


 俺は体格で劣っても、魔力さえあれば、魔法で対抗、圧倒できるそのシステムに憧れた。その主人公と自分を境遇を重ね合わせ、自分も異世界で無双する妄想をする。


 勿論、俺をいじめていたヤンキーを魔法で虐殺する妄想は毎日のようにした。そうすると、心が満たされていった。


 おかげで不登校にならずに済んだ。相変わらずヤンキーたちによる陰湿ないじめは続いたが、頭の中では「いつでもお前らのことを魔法で殺せるんだ」と妄想することで耐えることができた。


 厨二病極まりない発想だが、そのおかげでつらい中学校生活を乗り越えることができたのだ。


 何も考えずに進学した中学校がヤンキーまみれだった反省を生かし、頑張って学力を伸ばした結果、地元ではそこそこ偏差値の高校に進学できた。学費がかかることもあり、そこには俺をいじめてくるようなヤンキーはおらず、生活水準の高い余裕のある学生しかいなかった。


 ここでようやく、人並みな学生生活が送れる。そう思ったのも束の間、周囲の同級生はいち早く共通の話題を見つけ、友人関係を構築していくのに対し、小学校・中学校とまともに他人とコミュニケーションをとっていなかった俺は、誰とも仲良くできなかった。


 中学生の時のようないじめはなかったが、そこには孤独が待っていた。


 人と話すことが次第に嫌になり、クラスの中でもだんだんと孤立していった。休み時間にスマホとにらめっこしてネット小説を読んでいる俺なんかに話しかけようとする人がいるわけないのだが……。


 そんな俺に、もう一つの苦痛が訪れた。なんと、学校の方針で生徒は必ず最低一つの部活に所属しなければいけなかったのだ。


 極度のコミュ障である俺が、部活動で部員たちと仲良くできるわけがない。部活なんて御免被る、と考えていた際、ラノベ同好会という少人数の部活動を見つけた。


 そこは仲のいいオタク友達同士で結成された同好会で、文字通りラノベや漫画、ネット小説を読むだけの集まりだった。


 不得意な運動をするわけでもなく、部室でただ書籍を読みふけっているだけでいいこの部活の存在は、コミュ障の俺からするとまさしく天からの贈り物だった。


 他の部員たちもオタク気質なところもあり、また同じくラノベやネット小説を愛好する者同士で通じ合うものがあり、彼らと過ごした1年間はかなり充実したものとなった。


 しかし、問題だったのは彼ら全員が3年生だったことである。


 1年後、彼らは卒業し、ここラノベ同好会から去ってしまった。そして、残る部員は2年生になったこの俺一人になってしまったのだ。


 部活動の規定によると、部員が2人以上在籍していなければ、部活動として承認を受けられないため、このままではラノベ同好会がなくなってしまう。


 ここの部活がなくなれば、俺は新たに他の部活に入らなければいけなくなってしまうのだ。


 1年生のときですら部活に入ろうと思わなかったのに、2年生になってすでに関係を構築し終えた同級生たちや先輩たちに交じってに部活動することなんて、コミュ障の俺は絶対に嫌だった。


 ラノベ同好会を存続させるには、新入部員を募集しなきゃいけなくなってしまったが、入部してくれと頼めるような間柄の同級生はいないし、コミュ障の俺が見知らぬ新入生を勧誘できるわけがない。


「一体どうしたらいいんだ……」


 俺一人となったラノベ同好会の部室の中で、俺は頭を抱えた。


 









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