第47話 戦いに向いていない
シゴクは真ん中へと歩みを進め。
橙の人も真ん中で睨み合う。
「僕を倒せるかなぁ? しぶといよぉ?」
「ワッシは強いですよ!?」
シゴクは手の平を敵に見せて構える。
「ははっ! 行くよ!」
敵は普通に殴りかかってきた。
シゴクはいつもの様にクルッと橙の人を回すと地面に叩きつけた。
「えぇ!? クソッ!」
またもやクルリと回す。
地面に背中をつけた敵は戦法を変えた。
色のついた液体を射出すると周りに色を付けてそこを渡り歩きながら攻めてきた。
だが、ことごとくひっくり返され回復して立ち向かってきたのだが。
疲れてきたところに掌を胸へと放つ。
「ゴフッ!」
胸を抑えて倒れた。
やっぱりシゴクは強い。
次は青い人が現れた。
「行くよ」
冷静に青い液体を射出してくる。しかしそれはシゴクには当たらない。またもや胸への人当てでその人も動けなくなった。
なんか、あまり強くない?
「行くぜぇ!」
緑の人は気を生やす能力を持っていた。
生やした木で攻撃してくるが、それを難なく受け流すシゴク。
緑色を放って移動しながら木を放ってくる。
シゴクは負けていない。
いなしたり受け止めたりしながらその猛攻を受ける。
林に囲まれた中で不意打ちを狙ってくる緑人。
シゴクの後ろから迫っていた。
ボクは全く心配していなかった。
シゴクは強い。
後ろから突き出された木を受け流し、地面へと投げる。胸へと掌底を放ち沈める。
ここで一気に五対二になった。こちらが優勢。これ以上やれるのか?
白い人は前へと出ると正座した。
後ろから黒い人も来て正座した。
「実は、我々は戦うことが苦手な者たちなのです。その中でも戦えるものを集めて来ました」
「あのー。一体どういう事ですか?」
「それがですね……」
ボクたちのところに攻めてきたのはこれ以上大きな国になれば攻めてくるのは目に見えていると思ったんだって。
死ぬくらいなら国民を守るために戦おうと思ったとか。その考えは立派だよね。ボクはそう思うんだけど。
でも、なんで最初から攻めてきたのかな?
最初から話し合えばいいのに。
そう聞いたところ、最近の乱世の世では話を聞いて貰えないと思ったみたい。
ボクたちの戦い方を見て話ができるのかもと思ったとか。よく聞くと『覇』領とは協力関係にあったんだって。
そこの領主が死んでしまったものだから、攻めてきてみたという事みたい。高い建物を作っているのを見て、自分達が見つかったら攻めてくると考えていたそう。
「無駄に戦うことはしないよ。話し合いで解決できるなら、ボクは選ぶよ」
「有難う御座います」
「それで、どうしたいと思っているの?」
「はい。実はこの領に私達も住まわせていただけないでしょうか? その方が安全だと思ったのです。しかし、こんな色とりどりの見た目です。人に差別されるとおもうのですが」
黒い人の言うことは最もで、たしかに本来であればそういう見た目の違いで差別があるかもしれない。でも、ボクらなら大丈夫じゃないかな。
「ボクたちの領には、獣の天漢の人もいるんです。色んな姿の人が住んでいるんですよ。ボク達はこの街に住むことを歓迎しますよ?」
その人は黒い目から透明な涙を流した。
「有難う御座います! 恩にきります! 少し時間を頂いて領民を説得したら連れてきます!」
「ねぇ、お腹すいてない? ご飯食べようよ」
「いや……」
グゥゥゥゥゥゥゥ
皆のお腹の虫が鳴いた。
体は嘘をつけない。
「おっちゃーん! 肉とサンドイッチとか食べ物ありったけ持ってきて! 酒も! 宴をするよ!」
「おぉーよ! 任せとけ!」
近くにいたおっちゃんは食べ物を用意してボクたちのところにテーブルを並べ始めた。
「シュウイ! その判断は俺たちは賞賛するぜ! 今日の敵は明日の友って言うんだぜい?」
「なにそれ? そんな言葉があるの?」
「バッカやろー! おめぇそんなことも知らねぇで領主やってちゃダメだぞ!?」
「はははっ! ごめーん! でも、いい言葉だね。正に今のボク達にピッタリだね!」
おっちゃんから怒られたボクは頭をかきながらニコリと黒い人に笑った。
「ねぇ、名前なんて言うの?」
「サンブラックです!」
「へぇーやっばり黒いから?」
「三人目の『黒』だからです!」
「安易だねぇ」
そんな話をしていたらおっちゃん達の準備ができた。
「さぁ、ご飯食べよ?」
「「「有難う御座います!」」」
ボクは肉を頬張った。鼻から抜ける香ばしい香り、甘めのタレが口に広がり舌を喜ばせた。甘めの清酒を飲んで仄かに酔った。
「ねぇ、サンブラックさんが領主なんですよね?」
「はい! そうです!」
「領には、どのくらい人が居るんですか?」
「大体五十人位でしょうか」
それは予想より少ない数字で驚いた。
「この世でよく生きてましたね?」
「それが、以前の『覇』の領主であるお方に守って頂いていたんです。後ろに隠れる形ですが」
そういう事だったのか。
わざわざ自分を悪者のように言ったのはボク達を警戒したからだね。領主を殺すような人だから話なんて聞いて貰えないと思ったんだね。
その夜は話を詰めた。
一週間後に『色』領の人達はこの『集』へと集まることになったのであった。
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