第40話 乱入者

 おっちゃん達は飲み始めていた。

 

 飲みながら店をやり始めたのだった。


「シュウイ! 俺達はもう我慢できん! 飲むぞぉぉぉぉ!」


「「「「おおぉぉぉぉ!」」」」


 おっちゃん達は一致団結して酒を飲み始めた。


 樽でもってきたエールというもの。

 ポップという実から抽出したエキスでつくったんだとか。

 シュワシュワしているから刺激的らしい。


「おぉぉい! シュウイも飲めよぉ」


「えぇぇ? ボク飲んだことないよ?」


「でももう年は20くらいだろ?」


「かなぁ? 数えてないからわかんないけど」


「じゃあ、いいんだ! 飲もうぜぇ!」


 ちょっと興味はあるんだよね。

 金色の飲み物。泡がプクプク出ていて凄い不思議。

 渡された器に入っているエールを一口飲む。


「うわぁぁ! 口がビリビリする! にがっ!」


 口には苦みが広がり、舌はビリビリと飲み物が暴れているような感覚だった。


「ハッハッハッ! シュウイにはにげぇってよぉ!」


「まだまだおこちゃまだなぁ!」


「うるっさい! 別に清酒飲むからいいもん!」


 ボクにはエールは合わないんだ。

 清酒を飲もう。こっちは甘くてまったりしていて凄くおいしい。

 清酒をチビチビと飲んでいると続々と周辺の領からおっちゃん達が集まってきた。


「なぁ、酒あるってホントか?」


 白い装束を着ているということは『覇』領の人だろう。


「えぇ。お好きなのをのんでください。そこに樽があります」


 その人の好みはエールだったみたい。

 器で掬うとがぶ飲みした。


「っっっあぁぁぁぁ! こりゃうめぇぇ!」


「そんなに美味しいですか?」


「いやぁぁ。酒はいいな! 兄ちゃん、そういやここの領主だっけ?」


「覚えていてくれたんですか。そうです」


「酒が飲める領になるかね?」


「はい。そのつもりです。ボクも清酒好きですし、製造している田舎の人達から買い取って売り出すことで皆が潤うと思うんですよ」


 構想を話すとその人は空を見ながら何かを考えているようだった。


「うん。それはいいな。オレもここの領民になろうかな」


「是非。みんなで良い領にしていきましょう。その為にはまず、この領に住む場所を作らなきゃなりません。店はこうやって出店で良いんですが」


「手伝わせて頂こう。オレの天漢は『建』でね。主に建物を建てる仕事をしていたもんさ」


「それは心強いです!」


 こういう人の繋がりって大事だよね。

 人と人が繋がって、一つの集団となり領となっていく。その人たちの向かう先が一緒なら幸せな領になるんじゃないかな。


「おっ! 本当に酒があるぜぇ!」


「本当だな! おい! 我らに寄越せ! おっ! 別嬪さんも居るじゃねぇか! こっち来いよ!」


 横暴な態度で現れたのは『象』と『豹』の獣人だった。


 まだこういう輩がいたか。

 おっちゃん達から器を奪って飲み始めた。

 抵抗はしない。何故なら、僕がすぐそばにいるからだ。


「はい。すみませーん! ここは皆で楽しむための祭りです! 個人で楽しみたいかたは別の場所で飲みましょう。もちろん、別嬪さんも付きません」


「あぁ!? なんだてめぇ!? 俺たちがだれか知らねぇのかぁ!?」


 凄んできたのは『豹』の方だった。明らかにボクを下にみているのはわかった。

 胸ぐらを掴んでいた手を『力』任せに振り払う。


「なっ!? なんつう馬鹿力」


「あんた達、あの戦いに居なかったってことは、その辺のゴロツキなんでしょ? じゃなきゃ、ボクの顔を知らないはずがない」


「あぁ!? どういうことだよ!」


 本当に何も知らないらしい。


「獣王を殺したのは、ボクだよ」


 凄んでいた『豹』はゴクリの喉を鳴らした。

 少し後ずさりする。


「お前さんが、旦那を?」


 静かにしていた『象』はボクを下から上へと眺めた。すると、立ち上がり顔を近づけた。


「我らは力がある人の下につく。そうやって生きてきた。今更、それを変えるつもりもねぇ」


「それはご勝手に」


「どうだい。我らと手合わせしないか?」


 そう来たか。祭りの最中だからあんまりそういう事はしたくないけど。少し悩んでいるとミレイさんがやって来た。


 ボクに顔を近づけると。


「ねぇ、やってあげたら? 盛り上がるわよぉ? 子供達を安心させるのにもいいと思うわよ?」


 そんなことを言われてはやらざるを得ない。

 はぁ。全く。仕方ないなぁ。


「いいよ。じゃあ、ちょっと離れようか」


 少し離れたところで見合う。


「そっち二人でもいいよ?」


 ボクはそう提案した。

 面倒だから、まとめて相手した方が早い。


「我らをなめているようだ」


「別にどうでもいいよ。早くかかってきたら?」


「このクソガキャーーーー!」


 挑発に乗ったのは『豹』の方。

 割りと素早い動きで殴りかかってきた。

 けど、ただそれだけ。


 地面を蹴って『跳』ぶと『力』を乗せて地面に蹴り飛ばした。


 そこにタイミングよく『象』が突進してくる。

 面倒だから『辞』の言霊を使う。


「【止まれ】」


 今いる位置から動けなくなる『象』。


「【謝れ】」


 すると跪いて土下座をした。


「すみません……でした……くっ!」


 悔しそうにしているから、こんな所で許してあげようかな。


 寝転がっていた『豹』も『治』して『象』へと返す。


「こんなに歯が立たないとは……」


「分かってくれた?」


「すまなかった。なめていたのは我らの方だった。傘下に入ろう」


 二人との跪いて頭を下げた。


 なんだかよく分からないけど、部下を手に入れたみたい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る