第25話 貴重な出会い
今日からボクは二日間の休暇に入る。
「じゃあ、ミレイさん宜しくね」
「はぁい。行ってらっしゃい! お土産宜しくねぇ」
お土産を要求された。
まぁ、何か用意して帰ってこよう。
街の人達に挨拶をしながら街を出た。
久しぶりに空を見た気がする。
変な形の雲があるなぁ。
こんなに青かったっけ。
ボクの前髪を風が揺らす。
なんだか草の香りが漂ってくる。
こんな匂いがするところだったっけ。
良い環境になったってことなのかなぁ。
遠くには森が広がっているのが見える。
その森を越えると村があるらしい。
「あぁー。なんかいいなぁ。のんびりしていて」
ゆっくりと歩いて森へと進んでいく。
森に入ると薄暗くなり、周りからは木々のざわめきが聞こえてくる。
しばらく進むと草木を折りながら進んでくる音が響き渡った。
ボクはそのまま進んでいると射ノシシが姿を現した。
「【止まれ】」
ボクは『辞』の言霊を使った。
ピタッと止まる射ノシシ。その猪の首を手刀で『斬』り落とす。紐に吊るして血抜きをして、そのまま持ち歩く。
これは飯にしよう。
「そっかぁ。この辺の森にはまだ字獣がいるんだねぇ。浅い所にはいないけど、村の方は出るのかもしれないな。それは何か対策を考えないとね」
村へと進む足を速めた。少し字獣を狩っていった方がいいかもしれないね。
その後から出てきた字獣は片っ端から頭を刎ねて行く。
三体ほどを狩ったあたりで森を抜けた。
「おおぉぉぉ。なんかちゃんと畑に実ってるねぇ。すごいなぁ。肥料がちゃんとしてるんだなぁ」
そう思い畑の土を触ってみる。するとフカフカの柔らかい土だ。これはいい土だな。
「あんたぁ誰だぁ? ワシの畑でぇなぁにしてんだぁ?」
「あっ、すみません。この領の領主になった者なんですが、少しこの畑についてお話を聞いていいですか?」
「あぁ。かまわねぇよぉ? っつっても、この辺の畑はみーんなシゴクから指導してもらってんだ。すんげぇ子だよぉおぉ」
「それは凄い。私にそのシゴクの居所を教えて貰いたいんですが?」
「シゴクはぁ、この先にある白い屋根の家だぁ」
お爺さんにお礼を言ってその場を後にした。
こんなにいい土をどうやって作っているんだろう。
何か秘密でもあるのかな。
家を見つけたので、ノックしてみる。
「すみませーん!」
返事がない。留守にしてるのかな。
家を回り込んで様子を伺うと畑を手入れしている少年がいた。
「すみませーん!」
「あっ! はい! なんでしょう⁉」
振り返ったその顔は日焼けして小麦色をしていた。
目鼻立ちのはっきりとした丸坊主の活発そうな少年だ。
「ボクは、この領の領主になった者なんだけど……」
「あっ! あなたが荒れくれ者達を大人しくさせたと名高い領主様なんですか⁉ 本当に感謝しています。有難う御座います!」
「平和な領にしたくて今頑張ってるんだけど、その畑の土、よくできてるね。どうやって作ったの?」
「ワッシは小さい時から畑のことを知りたくて色々試していたんです。そしたら栄養がたくさんあるフカフカの土を作ることに成功しました!」
「そりゃ凄い。ご両親は?」
「私の両親はもういません。去年、粗暴な男たちに殺されました」
下を俯いて寂しそうに肩を落とした。
「そっか。ボクはシュウイっていうんだ。君はシゴクだよね?」
「そうです! なんで名前……」
「そこのお爺さんに聞いたんだ。ちょっと相談なんだけど、畑の土の作り方教えてくれないかな? もちろん、お礼は支払うよ」
目と口を見開いて固まっている。
何をそんなに驚いたんだろう。
「どうしたの?」
「みんな教えて欲しいって来るんですが、お礼をもらったことなかったんです。みんな、困ってんだから教えろっていうんです。ワッシが作り上げた土を……。ちょっとおかしいなと思っていたんです」
「その技術は売れるよ? 村の人達も人が悪いね」
「でも、両親が亡くなった時には泣いてくれました」
「まぁ、それとは話が別だよ。ちゃんと生み出したシゴクには敬意を表さないと」
首を傾げて瞬きをパチパチとさせた。
「そんなもんですか?」
「うん。ちょっと気になってたんだけどさ、シゴクの天漢ってなに?」
「これです」
見せて来たのは内ももだった。そこには『極』とある。
目立たない箇所にあるのは珍しい。
そして天漢も珍しい。
この感じとシゴクのやってきたことを考えると、何かを極められる星の元に生まれているのかもしれない。
「ねぇ、いやじゃなければだけど、ボクと一緒に来ない? 平和な世を広める手伝いをして欲しいんだ」
「それは、戦争に参加しろということですか?」
「さすが、察しが良いね。ボクももちろん参加するんだけど、シゴクは強くなれる素質がある。どうかな?」
「ワッシに勝てたらいいですよ。実は父から武術を習っていました」
それは手強いね。弱い人の下にはつけないもんね。
「よし。やろう」
少し家から離れた広場で向かい合う。
シゴクは手のひらをこちらに向けて立っている。
手でクイッとされた。
頬が上がるのが分かる。いいねぇ。
しっかりと踏み込み払えと拳を放つ。
突如浮遊感に襲われた。
空が下になってる?
そう思った時には頭が地面に激突していた。
「いでっ!」
久しぶりに頭へ傷を負った。
この闘い。やばいかも。
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