第6話 顔合わせ
最初に面接した雑居ビルに来ていた。
今日からここで俺の仕事が始まる。
「おはようございます」
「おう。おはよう。スーツ似合ってるな。昨日は休めた?」
「はい。しかし、習慣とは恐ろしいもので……トレーニングをしてしまいました」
眉間に皺を寄せている。
しかし、口は笑っている。
「ホントに亮はいい方向に変わっちゃったんだな」
「恐縮です」
「くっくっくっ。こっちだ。皆に紹介する」
面接した部屋とは別の部屋に通される。
そこにはスーツを着た九人が並んでいた。
「おはよう」
「「「おはようございます!」」」
一糸乱れぬ揃った挨拶だった。
流石だなと感心してしまう。
「新人を紹介する! 舘 亮だ。コイツは入社して一年だけの鍛錬で玄龍先生お墨付きの漆黒レベルまでになった。期待のエースだ。皆よろしく」
こちらをチラリと見て顎で挨拶しろと合図される。
「初めまして! ご紹介頂いた通り、新人の舘 亮です! 初めての身辺警護なので、ご指導の程、よろしくお願いします!」
「よろしくー!」
「凄いな君は」
「良いねぇ」
一人目はふんわり系の女性。
二人目は貫禄のあるおじさん。
三人目は小柄なマッシュの男性。
なんか、意外と雰囲気が良い感じな気がする。
「それでは、右からそれぞれ自己紹介!」
右から自己紹介を始めた。
「
オールバックのマッチョな男性。
歳はとってると思うが、いい身体をしている。
雰囲気が優しそう。
「
さっき俺の自己紹介に返事をしてくれたふんわり系の女性だ。
茶髪で肩まであるボブ。
その下には目を見張るものが実っている。
「俺は
ツーブロックの逆立てた髪。
先輩風を吹かせているヤンキーのような男。
無視する。
「おい! 無視────」
「
「あっ、はい」
なんか絡まれた。
適当に返事をする。
「護さん、コイツ大丈夫なんですか?」
「あぁ。玄龍先生のお墨付きの漆黒レベルだ」
「はぁ? 本当ですか? おい! おまえ、この後手合わせしろ」
「えっ?」
俺が怪訝な顔をすると護さんがニコッとしてこちらを向いた。
「相手してやれ」
「は、はい」
「次いい?
細身のセンター分けの男性。
隣が武道さんというらしい。
「
坊主の細マッチョの男性。
無口そうな感じ。
「
金髪のモデルのような女性。
目が青い。
何やらウインクされた。
俺は別に女を探しに来た訳じゃないからな。
けど、スタイルがいい。
「俺は
スキンヘッドのゴリマッチョ。
この人はなんか重量感がありそう。
「最後は僕だね!
ニコニコしながら自己紹介してくれたのは。
俺の自己紹介に反応してくれた最後の人。
マッシュな髪型にタレ目で丸顔な人。
凄くいい人そうな雰囲気を醸し出している。
「皆さん、よろしくお願いします!」
自己紹介が終わり再度皆さんに挨拶をする。
約二名の目が鋭く戦闘態勢になっている。
参ったなぁ。
ホントにやるの?
着替えなきゃないじゃん。
ネクタイやるの結構苦労したんだけど……。
「「「よろしく!」」」
「じゃ、早速実力を見せてもらおう」
流さんが手合わせしたそう。
ホントにこれは、逃れられないな。
「えーっ? ホントにするんですかぁ?」
護さんを見るとサムズアップされた。
やってみろって事ですか?
はぁ。やりますよぉ。
「漆黒と言われながらやられるのが怖いか?」
「正直どうでもいいです」
「なに?」
「俺は人を守る為に来たんです。仲間と争うために来たんじゃない」
「ほう。言うことはいっちょ前だな。じゃあ、俺達の足でまといにならないかかかってこい」
「わかりました。では」
頭の前で両手を構えて身体は自然体に。
流さんも同じように構えて。
目がマジだ。
流さん結構マジでやる気なんだ。
俺も真剣に相手しないと。
身体に気合いを入れる。
空気が変わった。
ピンッと張り詰めた空気が漂う。
「フッ! シッ!」
左のジャブはフェイント。
右の肘で打つ。
咄嗟にガードされた。
すぐに肘を引く。
掴まれないようにするためだ。
今度は流さんが俺が引いたと同時に右肘で追撃してきた。
流れに任せるように回転し。
横から左サイドパンチ。
「がっ!」
腕を入れたようだが、ダメージはある。
そのまま回転し回し蹴り。
しゃがんで避けられる。
軸足を狙われた。
蹴られた方向に側宙。
流さんの着地して伸びてた足をとる。
仰け反るように絞める。
「がぁぁ! クソッ!」
床をタップした。
すぐ足を離す。
「はぁ……はぁ……あそこで側宙なんてできるかよ!」
ダンッと床を殴る流さん。
そんな事言われましても。
出来るように指導されましたけど。
「分かったか? 今の亮の実力?」
「悔しいですけどね。新入りとして認めますよ。まだ本気じゃないですしね!」
護さんの問いに子供用な返し。
そんなに悔しいかな?
「あの流君が……」
「へぇ。やっぱり凄いのねぇ」
他のチームリーダーが感心している。
顔合わせは結果的に良い方にいったようだ。
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