ボタンのありか

@kosyu1007

第1話夢?

パパ何食べたい?昨日までと同じLINEを今朝も送った。パパ(愛する旦那)は1週間前から微熱と倦怠感で寝込んでいる。とはいえ、調子のあまり悪くない時もあるようで、昨夜は人気もなくなった時間に近所を散歩に行った。娘の部屋の電気がつけっぱなしだとLINEもきた。自分でコロナだと確信し、部屋からでず、私たちとは絶対に接触しないようにしていたから、LINEなのである。返事もないので、久しぶりにゆっくり眠れたのかな?と思いそっとしておくことにした。4月29日祝日である。息子は英語の試験に出かけ、娘は部屋で何かしている。昼時になったので、もう一度LINEした。「・・・」?もー、返事くらいしてよ、死んでても知らんよ!数日間の心配とイライラもあり、段々胸騒ぎが襲ってきた。そのあと数回LINEをしたが返事はない。??とりあえずドア越しに聞いてみよう。昼も過ぎたし、そろそろおこしてもいい時間だ!

コンコン!応答なし。ドンドン!返事なし、ゴンゴン!なし。

ドアをあけるよー!と声をかけ、中をのぞく。

リクライニング式のベッドはほぼ90度?かと思うくらいに立てられていた。こんなにこのベッド上がるんだー、初めて見るなぁ。

あれ?いない。

私は玄関を確認した。昨日履いただろう靴がそのままある。となると、家にいるはず。あれ?どこ?

もう一度中を見回す。

ドアのすぐ足元右がわ、テレビの前。パパが倒れている。頬を触った。冷たい。


私の絶叫で娘が降りてきた。何をどうしたか、あまり覚えてはいないが、119に電話した。私はうっすらと、これ夢だよね?こんな夢何回か見たし。となると、パパが号泣してる私を、ママ大丈夫?起きて?とお越してくれて、一件落着。あー夢で良かった!

ね?夢だよね??パパお越して!

救急車がくるまで、心配性のパパが家においていたAEDを119に電話を繋げたまま使った。これを使うのは初めてだ。何回かうけた蘇生訓練のようにパパの肋骨の間をおした。繰り返し繰り返し。骨が折れたんじゃないだろうか。これも夢だよね。

救急車がきた。わけのわからない内に、色々聞かれたような気もするが、パパと、娘と私は救急車に乗っていた。

「大丈夫だよ、パパだよ!大丈夫だよ」12歳の娘が私の手を握りながら言っていた。何回も。私は返事をしたんだろうか?救急車の中で、3人に電話をかけた。パパが弟のようにかわいがり、会社を任せていた東山さん。私たちの大事な先輩、そしてパパの兄。パパが倒れて今病院に向かっていると。病院の名前は伝えた。どこの病院だったのか、名前も思い出せない。もちろん請求書や、みたくないのに何10回も見なければいけなかった死亡診断書をみればわかるが。

処置室から私たちは出された。大好きな姪っこに電話して私は崩れ落ち、何を話たのか?娘が電話をかわって話をしてくれていた。本当に心底情け無い母だ。娘の方が辛く怖かっただろうに。

どれだけ時間が経ったんだろう。処置室からよばれ、もう蘇生はむりだからこれで終わっても、、、。みたいな事を言われ、はいと返事した。 するしかない。

何時間だったのだろう。救命士の方も先生も汗だくだった。私たちの気がすむまでなのか、奇跡が起こるかもしれない なのか、頑張ってくれていた。彼らにあの時私は「ありがとうございました」と言えたんだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る