第10話 避難先の友人宅で妹に嫌われている

週末。

僕は友人の家に行くことが多い。

理由は色々あるのだ。

リリア姉さんのスキンケアに付き合わされたりとか、レイミが返事に困るセクハラダジャレを連発してたりとか、ジェレスカ母さんの生徒さんのオフ講座があって、やたら薄着のお姉さん方が家にいたり――大人気のジェレスカ母さんのセミナーは定員の都合で美人しか入れないらしい――とか、幼馴染が遊びに来て、子どもの頃と変わらないような遊びをやろうとしたりする。

そのうち、家族と幼馴染が揃って盛り上がり出すと、勝った人が負けた人達になんでも命令出来るという王様ゲームみたいなテレビゲーム大会が始まったりする。

もうこなると、とんでもない。


みんな物凄くゲームが上手いのだ。

なので基本的に最下位が僕は決定している。

ハイレベルな戦いでテンションが突き抜けると、もうとんでもない悪ノリ大会になる。


そんなわけで、まあ言葉を選ばずに言えば居心地が悪いのだ。

絶対に勝てないし……。



――ピンポーン――

古式ゆかしいチャイムを鳴らす。

「よう。相変わらず早えな」

ドタバタしながら顔を出したのは、シュッとした顔立ちに吊り目で、髪を茶色く染め、耳にはピアスの少し悪そうな雰囲気のある同級生、穴保路あなほじ すぐる

時間は朝の8時半。


「これ」

ハハハと笑って誤魔化しながら、僕は手土産のクッキーを渡す。

「お!いつも悪いな」

悪そうな見た目を裏切らずそこそこ悪いのだが、中学時代から仲が良い。


「ジェシーさんが焼いたんだよな?」

そう言う優の目がギラっとした。

ジェシーとはジェレスカ母さんのニックネームだ。


「人の親に変な目を向けるなよ?」

優は女好きだ。

そしてモテる。僕とはエライ違いだ。

今現在も何人の彼女がいるのか分からない程だ。


そんな優はジェレスカ母さんを見た時に、ビンと来たらしい。

さすがの男ウケに突き抜けた母である。

倍以上年が違うのに。


「ま、上がれよ」

「ありがとう」



☆☆☆



「くっそ!もう一回だ!次はぜってえあのポイント落とすぞ」

「いいぞー」

優はゲームが好きだ。

仲良くなったのもゲームきっかけだったし。


やっているのは、20人がフィールドに降りて、無作為に設置されたポイントを多く押さえた人が勝ちというゲームだ。

スピード重視でポイントを取りに行くのも良し、先ずはライバルたちを倒すのもよしだ。


今はそのうちの、二人一組、10組で競い合うモードで遊んでいる。


「前出ようか?」

F2装備のまま僕は優に尋ねる。

「いや、お前には頼らねぇ!」

対する優はF4とF5装備。

F2とは装備のランクだ。

上がF5、下はF1。

僕は優の練習の付き合いなのでF2までの装備で戦っている。


しかし、僕なんてホントにまだまだだ。

F1装備で5分制覇ぐらい出来るぐらいのスキルがないと我が家のゲーム大会では話にならない。

ああ、遠い。


しかし、優はそこまででもなく、ランクもその辺りなので、僕は装備を押さえた縛りプレイでサポートに徹し、優越感に浸っているわけだ。


「くっそ!コイツぜってえチートだろ!」

「いや、僕でも普通に出来るよ? リリア姉さんとか、もっとエグいよ?」

「うっせ「兄貴!!うる……うわ、スミニじゃん…」

優の部屋に勢いよく飛び込んで来た後、あからさまに嫌そうな顔をしたのは、優の妹の珠貞みてちゃんだ。

中学3年生で兄に似て少しキツイ顔立ちをした美少女だ。兄の影響か、ギャルっぽい。


ピッタリした黒いセーターは、丈が短くおヘソが見えている。

膝上までの赤色のスカートには、深いスリットが入っていて、白い太ももがチラチラ覗いている。


土曜日休みなのにツインテールにお化粧もしっかり仕上げていて、これから友達と遊びにでも行くのだろう。


伊人いひとさんは?」

部屋をきょろきょろと見渡す。

「いねえよ。部活だ、バーカ。失せろ」

珠貞ちゃんは、伊人イケメンがお気に入りだ。


「つか、兄貴、なんでコイツ連れてくんのよ?」

そして、僕はとても嫌われている。

シッシッと手で払われて、座っていたクッションから追い出される。

珠貞ちゃんはそこに座る。

態度は悪いが兄が好きな子だから、隣がいいのだろう。


「てめぇ、スミに舐めた口きいたらぶん殴んぞ!?」

「舐めてないよ。だってコイツだるいじゃん?」

だるいらしい。切ない。


「こら、テメ!」

「あ、痛い!」

優が、珠貞にヘッドロックを掛ける。

バタバタ暴れるせいで、スカートがスカートの役割を放棄してしまい、その下が見えてしまう。

すっと、目を逸らす。

中学生なのに赤いレースの……いや、僕は何も見ていない。


珠貞ちゃんは大人っぽいし、オシャレだから……。たぶん、きっとそうなんだろう。


上半身はほっそりしてるのに、意外ともっちりしたお尻と太ももだった。


いや、僕は何も見ていない。


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