いつか勇者となる君は
Norinα
プロローグ
僕の名前は、
僕には妻と2人の子供がいる。
5歳の女の子と、2歳の女の子。
可愛い盛りだよ。
下の子はスーパーイヤイヤ期に突入したけどね。
ハイパーイヤイヤ期と称しても良い。
目を離せば、すぐにどこかへ駆けて行く。
だから、
くしゃみですら怪しい。
もし道路へと飛び出そうものなら、命を張ってでも、助けるよ。
それが親だし、僕だから。
いつだって、脳内シミュレーションしていた。
どんな場面に遭遇しても、いつでも体が先に動くように。
ただ、やり過ぎてしまったんだ。
仕事帰りということで、疲れていたこともあったのだろう。
職場の近所の保育園に、見知らぬ母親が迎えに来たのだろう。
たくさんの荷物を持って、子供が勝手に出られないようにと、保育園の柵を開閉していたのだろう。
ほんの一瞬、子供の手を離してしまったのだろう。
子供が、道路に飛び出していく。
僕の体は勝手に動いてしまった。
見ず知らずの子なのに。
運悪く、スピードの乗ったトラックが子供を撥ね飛ばす――前に、僕は子供を捕まえ、歩道に引っ張り、投げるようにして、体の位置を入れ替えた。
僕がどうなったかなど、誰が見ても分かるよね。
知らないのは僕だけ……とはならなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
いつの間にか、病院に居た。
真っ白なベッド。
僕は見下ろしていたんだ。
死んでしまった僕の体を。
妻は僕の手を握り、顔を伏せて泣いていた。
上の子は、妻の頭をヨシヨシしていた。
下の子は、僕の腹に跨って、胸の辺りをポンポンと優しく叩いていた。
はやくおきて。
そう言っているように見えた。
「ごめんな、パパはもう、そこには戻れないんだ」
自然と涙が溢れ出る。
僕の声は誰にも届かない。
この貴重な時間は、きっと神様が与えてくれたもの。
そう信じ、感謝の祈りを捧げて逝こうとした。
『待たれよ、青年』
声だけがした。振り返るが、誰もいない。
爺さんの声だけが、僕に聞こえた。
『我は、お主の言うところの神である。見所がある故、厳しい条件ではあるが、蘇生の可能性を与えよう。どうする?』
詐欺だろう。
と、一瞬思ったが、この状況は飲まざるを得ない。
何をしてでも、僕は生き返る。
その可能性があるなら、掴み取ろうじゃないか。
僕は頷いた。
『その意気や良し。お主の言うところの異世界にて、大厄災【魔王の
そして、爺さんの声が消えると同時、僕は光に包まれた。
目覚めたのは森の中。
こうして、僕の魔王を倒す冒険譚が、始まるのだった。
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