6「王都脱出」
「すいません、お世話になります」
「ガハハハハ! おう、嬢ちゃん、乗れて良かったぜ! 任せときな!」
御者台にて二頭の馬を操るトスマルにアンが荷台から挨拶をすると、彼は振り返りながら白い歯を見せた。
そのまま東城門に近付いて行き、スピードを緩めようとすると――
「おパンツ男、どこですのおおおおおおおおおお!?」
「「「!」」」
――背後から目を充血させ涎を垂らしながらディクセアが猛スピードで走って来た。
両手に持っていた氷槍と雷槍は消えており、その代わりブンブンと鋭く腕が振られる度に、恐ろしい程に加速、風を切って追走して来る。
まるで悪夢のような光景に、ティーパに頼まれる前に、トスマルは――
「すまねぇ! 今回は顔パスって事で!」
「おわっ!」
「おい! トスマル!」
――加速しながら城門を通過――慌てて避けた衛兵二人の声が、後ろから聞こえる。
「待て!」
「どういうつもりだ!」
抗議の声を上げる衛兵たちだが――
「おパンツ男おおおおおおおおおおおおおおおお!」
「うひゃああああああ!」
「アヘエエエエエエエ!」
――更にその背後から地響きと共に現れたディクセアによって、吹っ飛ばされた。
身体強化魔法でも掛けているのだろうか、見た目は可憐な巨乳少女にしか見えない彼女だが、全身を鎧で包まれた衛兵たちは、まるで赤子のように軽々と飛ばされた。
一方、二頭の馬が全身の筋肉を躍動、街道を東に向かって高速で走り続ける馬車だったが――
「どこですのおおおおおおおおおお!?」
「ウソ……!? どうなってるの!?」
――ただの人間であるはずのディクセアが、グングンとスピードアップ、あっという間に距離が縮まって行き――
「こっちはもう限界だぞ!」
――悲鳴のような声を上げる御者台のトスマルに――
「どうすれば良いの……?」
――背中を伝う冷たい汗を感じながら、アンが呟くと――
「誤魔化せ」
「!」
――再度、先刻と同じ台詞をティーパが吐いた。
荷台の縁に隠れつつ――
「『
――パンツを被って、顔を隠しつつ。
「また!? 幾ら何でも、もう通用しな――」
「良いから、誤魔化せ」
「………………」
最早顔パンツに対する突っ込みをする心の余裕も無いアンが、異論を唱えようとするが、ティーパは有無を言わせず――
「ああもう! 分かったわよ! どうにでもなれ!」
アンは、荷台から身を乗り出すと――
「おパンツ男おおおおおおおおお! どこですのおおおおおおおおおお!?」
「ヒッ!」
――いつの間にか眼前にまで接近、再び右手に出現させた雷槍を振り翳し、こちらに対して狙いをつけ、今にも投げようとする、爆走赤髪王女の咆哮に対して――
「あ、あっちに走って行ったわああああああああああ!!!」
――たった今出立した王都を指差しながら、負けじと叫び返すと――
「感謝いたしますわ! 待ちなさい!! おパンツ男おおおおおおおおおお!!!」
(ええええええ!? だから、何故ええええええええええええ!?)
――ディクセアはその言葉を妄信し、砂埃を上げながら強引に止まると、猛スピードで元来た道を戻って行った。
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