第8話 始まり
次の朝、新聞を見ると、隅の方に小さく女性が死亡したという記事があった。多岐川の家の近くだ。
何か事件に巻き込まれたのかと思ったが、そう気に留めることもなく会社に出勤した。会社に着くと、いつも元気な岡崎美保の様子が少しおかしい。
「どうしたの?」
少し考えていたが複雑な表情で話し始めた。
「友達が何か事件に巻き込まれたみたいで」
「え?」
よく聞くと、今朝、多岐川が見た新聞の女性が岡崎の親友だったらしい。
「驚いたな。仲良かったの」
「ええ、つい一週間前に一緒に食事をしたんです」
「そう。それは、何と言ってあげたらいいかわからないけど。悲しいね」
「これ、彼女と旅行に行ったときの写真なんです」
悲しさのあまり何かを共有したいという思いからか、彼女のスマホの写真を見せてくれた。
「え!」
思わず声を出してしまった。岡崎が驚いて多岐川を見る。
「この彼女が親友の女性?」
「え、ええ、どうしたんですか? 多岐川さんの知り合いですか?」
「い、いや、その、昨日、同じ電車に乗り合わせて」
「そんなので覚えてるんですか?」
「それが、ちょっと、不思議なことがあってね」
多岐川は昨日のことを岡崎に話した。しかし、詳細には触れず、電車の窓から何かを見て少し怯えていたと伝えた。
岡崎は不思議な表情をしていたが、多岐川の表情を見ながら聞き返した。
「多岐川さん、彼女が『何か』を見た、と言いましたよね。
「言ってたよ。ミカドとか」
「……」
「岡崎さん、何かそのことについて知ってるの?」
「い、いえ、ただ、彼女、少し前から、そんなことを口にするようになって、最近は頻繁にそう言うようになってたんです。つまり『ミカドが現れる』と……」
「ミカド」
「そう、ついこの前、多岐川さん山田さんと話されてたじゃないですか。占い師に『ミカドが現れる』って言われたって、あの時、驚いたんですけど、なんだか話が変な方向にいって聞けなかったんです」
「そうなんだ。僕が住んでるところの最寄り駅の駅前で占いをしている人に言われたんだ」
「その人、何か知っているんでしょうか? 会ってみようかな」
「その時は僕も行くよ」
「え」
「だって、犯人かもしれないじゃない。そうじゃなくても犯人のグループとか」
「そうですね。危ないかもしれませんね」
多岐川は、その日、仕事帰りに岡崎と駅前の占い師を訪ねてみることにした。
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