第2話 大学の講義 神谷京介

 神谷京介かみやきょうすけは都内のA大学に通う大学生だ。今年、大学二年生になり生活にも慣れ、ありふれた毎日を過ごしていた。

 最寄り駅から京介が住んでいるアパートまでは賑やかな商店街を抜け少し歩く。


 理学部物理学科。二年生になって専門的な科目が増え、益々、何をやっているかわからなくなってきた。

 高校までの物理の授業とは別物過ぎる。あの簡単な公式は何だったんだろう。

 高校の物理という科目に対して「おれは物理が得意」とか「おれ電磁気わかんないや」などと言っていた、あの頃の自分に、この講義を受けさせてやりたい。そうすれば高校時代の物理も少しは違った理解ができたかもしれない。

 もっとも、この講義を聞いた後、物理学を専攻したかどうかは別としてだ。


 しかし、こんな理解に苦しむような授業にも、きちんとついていけているやつがいるらしい。

 久木哲也ひさきてつや、高校時代からの学校や塾の友達らしい男女五、六人の学生がいつも彼の前後左右の席を陣取っている。

 いろいろな学部学科で、京介のような地方から来た者と違い、都内の進学校出身者たちの中には、こういうグループがあるようだ。

 つまり入学した時、いや入学する前から『こいつは勉強ができる』と周りが認めた友達同士のグループ。

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