第8話:傷ついたので、責任、とってください。

 性欲で興奮しているはずなのに、頭が今までにないくらい高速回転している。


 ――ヤっちまえ――


 とっとと童卒して、早く大人になれ。


 一発ヤれば、童貞コンプレックスなんて克服できる。


 カノジョとのトラウマだって、克服できるに違いない。



 けれど、本当にいいのか。


 今日初めて会ったような子と勢いでヤってしまって。


 それも、相手はほぼ確で非処女だ。


 いかにも遊んでそうで、チャラい。


 初めては処女と決めたはずでは……!


 その決心を曲げてしまえば、自分の今までの我慢はいったい何だったのかとなる。


 流されれば、一生後悔するかもしれない。



 たしかにこれで、童貞は卒業できるかもしれない。


 しかし、なぜだろう……。


 彼女は十分に可愛い。


 きっと、彼女の学校でも、とびっきりの美少女だろう。


 二ットでもハッキリと分かる。


 巨乳といって差し支えない胸元の膨らみ。


 それに、腰から下のラインなんか、大人と遜色ない。


 顔立ちも背格好も大人びていて、クラスの女子よりも性的に魅力的だ。


 それなのに……、反応しない。


 

 あまりに話がうますぎた。


 冷えた頭で考える。


 自分の第一印象は、決して良くはないだろう。


 少なくとも、出会って立ち話したくらいで、好かれる要素はおそらく一つもない。


 これが、美人局というやつか。


 助けられたのは事実なのに、つい疑ってしまう。


 どちらも未成年とはいえ、性交の売り買いをしたら、それは犯罪になってしまう。


 目立ちたくない。


 性行為をしたことで親に迷惑をかけたら、恥ずかしさで死んでしまうだろう。


 性交の噂が広がって、他人に合わせる顔がない。


 誰かに失望される、嫌われるのが一番怖い。


 他人から嫌われるくらいなら、先に自分から振ってやる。


 ずっとそうして生きていた。


 アイツとも、それで――。



「やっぱり、ゴメン……」


「そですかー。相手ならいくらでもいるんで、別にいいですけどー」


 見た目で遊んでいそうと思っていたが、どうやら読みは当たっていたようだった。


「つれない人」とつぶやくと、自分の髪先に触れた。


「先輩が初めてですよー、私の誘い断ったの……こー見えて、と~っても傷ついたので、責任とって姉と付き合ってください」


「は……?」


「あっち向いてホイっ」


 指先をたどれば、通学バッグが、物陰からでていた。


 見覚えのある、イルカのキーホルダー。


 あれって……ッ!?


「ねえ今、『姉』って言った?」


「てへっ」


 妹がいるなんて、聞いてないぞ……。



 逆ナン相手は、元カノの妹でした。

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