魔法少女の放課後サーガ

ESTHEL

第1章 高梨由利子は魔法少女

第1話 あたしの名前は高梨由利子

 あたしの名前は高梨由利子たかなしゆりこ。高校2年の16歳。

 肩まで伸ばした赤髪ストレートの右側だけちょこんと結わえて跳ね上がってるのがチャームポイント。これがなかなかアホっぽいと好評である。好評なのかなそれ。


「由利子、今日ヒマ?」

「ごめーん、今日はナンパにでも行こっかなって思っててさ」

「また?」

「どうせ失敗するんでしょ?」

「言ったなー!?」


 この2人は学校の友達。中学からの腐れ縁の友達。

 ただまぁ。この2人、デキちゃってんのよね。


「ひょっとして私らに遠慮してる?」

「気にすることないのにー」


 一緒にいると楽しいから3人でいることも多いけど、でも2人きりにさせてあげたいとも思っちゃうんだよねー。

 あたしにも恋人とか出来ちゃえばいいんだけど、でもあたしはまだ恋だの愛だのは考えてないからなー。ナンパってのも半分は口実だし。


「ま、失敗したら言ってね。慰めてあげるから」

「なんなら間に挟んであげよっか?」

「そういうのいいから!」


 百合の間に挟まるとか重罪でしょ……!

 余裕で懲役10年とかでしょ……!



  ━━━━━━━━━━━━━━━━



 というわけで、日常の時間は終わり。これから――放課後は非日常の時間!


 制服脱いで普段着になって、その普段着もすぐさまお役御免。今のあたしは全身赤!

 髪が赤なら衣装も赤。燃える情熱の赤があたしのイメージカラー。


 ちなみにアイドル衣装のようなものを着ている。でもアイドルではない。コスプレとかでもないよ。ちゃんとした仕事着だよ。

 これは魔法衣ローブというもので、魔法少女が着る衣装。つまりあたしは――魔法少女をやっている。


 魔法衣ローブのデザインは人それぞれ。

 最初に変身する時に思い描いた衣装になるんだけど、あたしは別にアイドルになりたかったわけじゃないんだよね。


 今をときめくアイドルグループの衣装を見て「なんかこれ魔法少女っぽい!」って思ったのが切っ掛けだったかな。

 自分なりにアレンジ加えて、そんで実際着てみると動きやすくて実用面でもお気に入り。そりゃ本職のアイドルさんたちもこういうの着て歌って踊ってしてるわけだもんね。


 ただ、問題は……これ、ミニスカートなのよね。で、魔法少女って空飛んだりするのよね。つまり……、うん、見えちゃうわけよ。

 一応、魔法衣ローブの下はレオタードにしてあるからパンツじゃないんだけど……パンツじゃなくても恥ずかしいもんは恥ずかしいのよ。


 せめてもの救いとして、変身中は認識阻害の魔法が掛かってて一般人からは認識できなくなるというのがある。だから飛んでる時に真下に人が居ても安心!

 などできるはずもなく、人が居る時はなるべく上を飛ばないようにしてる。


 でも今は夜で人通りもほとんど無いから普通に飛んでいる。都会だとこうはいかないんだけど、今日はちょっと遠出してみたからこの辺りはまぁ割と田舎。

 遠出して何をしてるのかって言うと、それは魔獣探し。魔獣ってのは一言で言えばこの世界に害を為す存在。


 これが魔法少女の主なお仕事。魔獣を見つけ出して倒す。魔獣を倒せばポイントがもらえて、これを溜めればご褒美と交換してもらえるというわかりやすいシステム。

 ご褒美にもいろいろあって、例えば便利な魔法のアイテムがもらえたり、探しものをしてくれたり。美味しいお菓子とか料理とか出してもらったりなんてものもある。

 基本的に個人では実現不可能なことを代わりにやってくれる感じ。美味しいものってのだって「このマンガに出てくるこの料理を再現して!」なんてのもできちゃうからね。


 当然危険も付き物だけど、夢見る少女たちには見返りが大きいわけなのよ。だから魔法少女の数は年々増えているらしい。


 でも魔獣ってそんなぽんぽん見つかるわけじゃないんだよね。というか魔法少女が増えれば増えるほど、反比例して減ってっちゃうからね。

 というわけで魔法少女は暇を持て余してることが多い。1週間くらい何事も無く過ぎるなんてのもよくあること。


 って言ってたら見つけた! 魔獣……と、魔法少女だ。先客ありかー。

 あれ? でもこれはちょっと嫌な予感。行ってみよう。

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