第20話 柿崎浜の戦い
今回の概要
越後軍(主人公側)3000 大将:上杉輝虎(謙信)
VS
揚北衆 8000 大将:本庄繁長feat.中条藤資
戦力差2.5倍を知恵と工夫と軍神パワーでどうにかなるんか寿四郎!?
※ 2/23 加筆修正しました。
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春日山城から海沿いに北上して6里(約24キロ)
上杉家の重臣、
ここで上杉軍と俺達(っても軍に編入されてるけど)は迫りつつある
寒い!!クッソ寒い!!!
海沿いは雪解けが進み暦の上では3月とはいえ、早春の海風は冷たい。いや、冷たいなんてモンじゃない。こんなトコでずっと突っ立ってたら普通に凍死するんじゃないかってぐらいだ。同じ海でも駿河の海とは大違いだわ。
敵がある程度近付いたら知らせが飛ぶらしいので、それまでは漁師の使う船小屋に数十人単位で隠れているが、それでもクソ寒い。
不謹慎だけど早く敵が来てくんねぇかな、なんて思うのは俺だけじゃないはずだ。
こっちの布陣は前衛にサバ・マグロ・魚兵衛兄の3トップと
北条家から与力として預かった相模国衆の
同じく武田家から預かった
後衛に俺と島次郎、それから上杉軍の
弓兵を率い、遊撃役として上杉家の
さらにその後ろに総大将の上杉輝虎という布陣だ。
作戦なのか輝虎は敵には総大将であることを明かさず、旗印も『毘』と書かれた旗印は使わないので総大将は寒ブリこと桓武、という事になっている。
上杉家の武将で主だったものは居ない。
ほとんどがまだ関東で足止めを食らっているか、春日山城に居た者は『武田が万が一の時への備え』と称して城に残ったからだ。
ホントにこの状況で大丈夫なのか不安になる。
それも相手の油断を誘う為の作戦かもしれんが。
「ふわぁーーーやっぱ海は良いよなー海は!! 燃えるぜぇぇぇぇ!! 」
こんな寒いのに魚兵衛兄は海の近くにいる事でテンションが上がっている。
たしかに雪ばかりの山中を一か月も歩かされたからな、気持ちは分かる。
でも……燃えるとか、寒くないのかよ!!
「敵襲!! 先陣・本庄繁長隊、こちらに向かってきます!! 」
見張りの大声で船小屋から一斉に飛び出すと遠くの方から味方を蹴散らしながら馬で駆けてくる集団が見える。
戦っているのはこの辺りの国衆だが相手が強すぎるらしく、ほぼほぼワンサイドゲームだ。
中でも陣頭に立って戦っている二騎の騎馬武者はとんでもない勢いで味方を薙ぎ倒している。
一騎当千、ていうのはああいう奴か。
「ちったぁ骨のある奴が居るみてぇだな!! 」
「それでこそわざわざこんな所まで来た甲斐があるというものよ!! 」
「手始めに先頭のクソ強そうな奴を集中して倒すぞ!!
野郎どもっ!! 手柄ぁ立てたい奴は付いてこいやぁ!! 」
士気の上がった徒歩の槍兵たちがそれに釣られて突っ込んでいきあっという間に乱戦に突入した。相手の主力は騎馬とはいえ、越後国内を抵抗する国衆と戦いながら何日も南下してきて疲労が濃いのか、移動速度は遅い。
先程まで勢いよく味方を蹴散らしていた騎馬武者のうちの一人は味方に囲まれて身動きが取れなくなっている。
だがもう一人の一騎当千は高笑いを上げて薙刀を振り回しながら乱戦の中をこちらの陣へと斬り込んでくる。
「フハハハッ!!我こそは上杉四天王が一人、
相手になると思う輩は掛かってこい!! 」
「おぉ、おお!! あれこそまるで三国志に出てくる呂布の如き!
相手にとって不覚無しじゃ!!
我こそは
エビは嬉々とした表情で呂布もどきに突っ込んでいき、彼に付いた騎馬隊も続く。
それに対して呂布もどきこと北条高広は
「北条!? あれ!? 敵のアイツ、旗に
とめっちゃ混乱している。あ、こいつバカだわ。
そんなこんなで槍隊は本庄隊、騎馬隊は北条隊と激突し始めたが、混戦なので俺達の弓部隊は味方に当たる危険も考えると攻撃できない。どうしたものかと思っていると
「まだ後方には鮎川・色部などの隊が控えております。連中はこの後衛を狙ってくるかもしれません」
と島次郎が教えてくれる。言い終わるが早いか、混戦を避けてそいつ等は目の前にやってきた。
「いや、ちょ……準備が!?」
そう、弓などの遠距離部隊は近接戦に弱い!
対して騎馬隊との距離は100メートルちょっとぐらい。馬で詰め寄れば10秒ちょっとで槍が届きそうな距離だ!! 矢を一矢つがえて射るのが間に合うかどうか。
それで倒しきれなければ弓兵ではとても太刀打ちできない。
ここで俺、死ぬのか!? マジかよ!!?
「皆の衆しゃがめえええええええ!!! 」
大声で誰かが叫んだので矢をつがえるのを中断してその場にしゃがみ込む。すると次の瞬間、詰め寄ってきた先頭の騎馬隊の足元で地面が爆発した!
爆音に驚いて立ち上がった馬を御せずに何人もの騎馬武者が落馬し、その煽りを受けて後ろの騎馬も混乱している。
「我ら穴山党、この
アナゴはそう言ってニヤリと笑うと手元に手榴弾風の何かを見せた。
風、というか完全に手榴弾だよなアレ? メカニズムは分からんけど。多分忍者武器的なナニかだよな、そう思っておこう。
こうしてアナゴ隊が定期的に焙烙玉で混乱させながら俺と島次郎、ノドグロで矢を撃ちまくり近付かせずに敵の数を減らしていく。
それでも詰め寄せた敵は寒ブリ隊が馬に乗って太刀を振るって応戦する。
完璧なフォーメーションだ。これなら!! 勝てる!!!
気がする。
そうして小一時間も戦闘を繰り返して数を減らしていくと後方に控えていた敵の大将部隊が見えてきた。
「ここから先は私がカタをつけるッ!!
上杉輝虎隊、全員突撃ッ!! 」
今まで後方で動かなかった輝虎が叫び、一緒に待機していた騎馬隊が一斉に鬨の声を上げる!! それと同時にノドグロ隊が『毘』の旗を上げた。
「おりょ!? 何故こんな所に御屋形様が!!?
き、北条高広、御屋形様がいるのならそちらに付きますぞ!!」
先程までエビ隊と斬り結んでいた北条は輝虎の姿を見るなり、こちらに付く。
慌てふためく敵本陣だが時すでにお寿司、いや遅し!!
あっという間に色部勝長・鮎川清長の首謀者二人は捕らえられ、完全に包囲された形の本庄繁長も最後まで奮戦していたが最後は輝虎に槍をへし折られた。
だが穂先をへし折られた後のただの棒をブン回し、周囲を取り囲む兵から槍を奪ってまだ戦おうとしていたらしい。とんでもない奴だ。
中条藤資は無抵抗のまま、両手を挙げて降伏した。だがその姿は負けて悔しいと言った感じが一切無く、ニコニコとした好々爺のような雰囲気なのが不気味だった。
ともあれ、こうして俺達は越後国内の反乱を鎮める事に成功したのだ。
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