第3回『秘密』参加作品

恋愛/ガールズラブ


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「ねえねえ、秘密よ?」

 あなたがそう言うときは、言いふらしてほしいとき。


「なぁに? なぁに?」


 私はわざとらしい声で聞いてあげる。

 二人だけの合言葉。


 揃いのセーター、リボンとスカート。

 肩を寄せて、顔を寄せて、とっておきの内緒の話。


「あの二人、駅でキスしてたの」


 華奢な指先の、控えめなネイルが射抜く、制服姿の男と女。

 親密なそぶりも見せない、友達にしか見えない同級生。


「うそぉ」

「ふふ」と、いたずらっぽく笑う顔。揺れる髪。


 『好き』


「あの二人、全然似合わないよね。あんな女のなにがいいのかな」

「本当だね、似合わないね、なにがいいのかな」

 彼のことが好きだったわけでもないのに、嫉妬してふてくされてる顔。


 『あなたの、全部が、好き』


「ねえねえ、秘密よ?」

 明日には、みんなに知ってて欲しいのね。


「もちろん。誰にも言わないよ」


 肩を寄せて笑い合う、揃いの靴、揃いの鞄。

 腕を絡めて、歩幅を合わせて、友達のふりする通学路。


 『ねえねえ、秘密よ?』


 

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