第12話 若き詩人の歌

師よ、私の師よ

私はまだ若く

寄りどころは想像力の翼

太陽が西の果てで眠りにつく間

私はまだ知らぬ東の地へ

思いを馳せているのです


そこでは日々繰り返される

コーランの調べも

日々何度も繰り返される

礼拝の厳粛さも

壁という壁に蔦のように描かれた

神聖な文字もすべて

十字架の元で育った私を

心地よく迎えてくれるのです


そして腰にダマスクスの

半月刀をきらめかせた

勇敢な男達と共に駱駝(らくだ)を駆り

私もまた戦いへと赴くのです


焼けるような砂漠の熱を肌に感じ

オアシスに湧き出る水で喉を潤し

夜になり地平線に昇る月を眺め

故郷の美しい娘達の切れ長の瞳

黒い髪に香る没薬の甘い香りを思い浮かべ

白い天幕の中で眠りながら


そして友と共に勇敢に戦った私は

華々しい勝利を手に凱旋するでしょう

すると人々の手で祝いの花々が撒かれ

石畳から白い砂埃と共に舞い上がり

砦の祝砲が一斉に打ち鳴らされるのです


そして師よ、私の師よ

私はまだ若く未熟な若輩者

とはいえ

勝利の盃(さがづき)に注がれる

強く芳醇な美酒の味や

宴の後に待つ乙女との

甘美なあのひとときを

筆先に迸る(ほとばしる)

想像力の翼のままに

夜毎(よごと)羊皮紙に綴ることが

悪いことであるはずはない

そう信じております

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