勇者と聖女どちらを選びますか?
青太郎
どちらを選びますか?
確かに言った。
『あ~あ、生まれ変わるなら金持ちのペットに生まれたい…』
何回も言った。
でも、本当に生まれ変わるなんて思っていなかった。
まさか、国一番の権力者、王様の神獣になるなんて。
神獣の使命として魔王のもとへ旅立たなくてはいけないなんて。
目が覚めた時はまだ小さなモフモフだった。
テレビで見たヨーロッパのお城特集に出てきそうなお城の一室にて、メイドさんの様な人達に囲まれた時は自分の目と精神状態を疑った。
自分は一体なんの幻覚を見ているのか。
しかし、夢は覚めなかった。
小さなモフモフは大きなモフモフへと成長した。
1~2年もすれば、言葉もわかる様になる。
ただ、話すことは出来ない。
その時に自分が神獣だという事実を知った。
大切にはされているが、やたら余所余所しいのはそれが理由かと思った。
飼い主だと思っていた王様達がたまにしか顔を見せに来ない理由も、ペットに対して人間と同じ食事を用意する理由もわかった。
ただの金持ちのペットに生まれ変わったと思っていたのだが、まさか神獣だったとは。
しかも、神獣は時が来たら魔王のもとへ行かなければいけないなんて知りたく無かった…。
ある日、勇者召喚の噂を聞いた。
右隣の帝国で勇者召喚が行われたらしい。
暫くしたら、左隣の神聖国に聖女が誕生したという噂が流れた。
何でも前世の記憶を持つ聖女様が現れたらしい。
すごい美少女だと聞き、ちょっとだけ見てみたいと思った。
そして、どちらも魔王討伐の為の勢力を立ち上げた。
この世界にある大きな国は4つ。
軍事国家である帝国、宗教国家である神聖国、そして農業国家であるこの国。
あとひとつが魔王の治める魔王国。
人間達はいつか魔王国を倒したいと願っているようだ。
勇者と聖女が旅立ち、神獣である自分を求めてこの国にやって来た。
みんなで力を合わせて挑むのかと思いきや、勇者と聖女の仲は険悪な物であった。
揉めに揉めた末、それぞれ別々に魔王国へと向かうらしい。
そして、勇者と聖女に誘われた。
自分と共に行こうと。
両国からの要請にこの国の国王は悩み困った末に返事を丸投げして来た。
果たして自分は帝国に召喚された勇者と神聖国に転生した聖女、どっちについていくべきか…。
そう、ハーレム勇者か逆ハー聖女か一体どちらがマシなのか…。
ハーレム勇者は陰キャオタクを拗らせた厨二病味を感じる日本からの召喚系勇者。
逆ハー聖女は婚活を失敗した港区系の女子味を感じる中身年齢不詳の転生者。
権力も金も美少女も手に入れた陰キャオタクと、同じく権力も金もイケメンも手に入れた港区系女子が上手くいくはずがない。
揉めるのは自然の摂理だと思う。
今、自分はどちらかを選ぶように迫られている。
一応、2人とも国を背負った立場である。
そして、自分は国の代表としての選択を迫られている。
…しかし、同じ陰キャオタク出身の身としては、急にオラつき出した感のある勇者について行くのは嫌だ。
かといって、聖女からは過去に港区系女子(港区女子ではない)から散々な扱いを受けた嫌な記憶を刺激される。
どっちも嫌だ…。
一体、どっちを選んだら良いのだろう。
…。
…と、いうことで魔王にしました。
あの後、選び切れなかった自分は自棄になって1人(1匹)魔王のもとへと向かった。
何と言う事でしょう。
魔王のもとには巻き込まれ転生系の美少女がいたのです。
なんとその美少女は魔王の一人娘として大切にされ、スクスクと育っていたのです。
前世16歳の見た目10歳児。
育てて貰った国には悪いが、主人を変える事にした。
確かに寝食には困らないどころか優遇してもらったが、アソコは義務的に世話をされていた。
愛情は感じられなかった。
一方、この巻き込まれ転生系美少女はもふもふ好きのケモナーだったのだ。
会った当初から全力でモフリ倒されている。
食事も寝床も遜色無いどころか上回っている。
ということで、もし『金持ちのペットになりたい』と願う事があるのなら、きちんと『可愛い金持ちの女の子に愛されるペットになりたい』と願うことをお勧めしたい。
そして、最近魔王にまでブラッシングされるようになった自分は理想のペット生活を手に入れたのだと明言したい。
…それにしても、まさかこんな形で魔王のもとへ行く事になるとは思っても見なかった。
勇者と聖女どちらを選びますか? 青太郎 @aotaro_aotarou
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