7-2

 今日はよく驚きの真実を聞かされる日だ。


 ロレンツィオは元々人間ではなく、生まれながらの死神だったとは誰が想像できた事実だろうか。王やジゼラを退けるために“闇”で私やファビオを次々と暗黒に引きずり込もうとし、更には戦力上昇を図るためマリオネットの製造を、最大の戦力を持つユルゲンに漬け込んで大量生産していたのか。クリスタ自身に自分は味方であると思い込ませて。


 しかし、ベクで会った彼に魂の制限時間が迫っているような切羽詰った様子は伺えなかった。気にしていないのか、それとも絶対に消滅しない自信でもあるのか。前者は確実にありえない。自らの存在に執着している彼が魂を放り出すはずがない。と、すれば後者に可能性はある。白の魔法石の力でも使うつもりなのか……だが、ジゼラに言わせれば、それはロレンツィオに何も与えないらしいが、一体どういう事なのか。


 白の魔法石は白の大陸を支える、いわば大黒柱のようなものである。そんな強力なものが何も与えないとは――理解不能だ。正直に言えば私も白の魔法石についてはよく知らない。知っているとすれば、強大な力を持つ事くらいだろうか。


 仕方ない、ここを出たら殿下に話を伺うとしよう。私が“ここを出る事ができる状態”であれば、だが。


「これをどう抑制するかが問題か……」


 この腕の――私に侵入した闇さえコントロールできれば、暴走は起きない。どうしたものか。真の死神だのと都合の良い事を言い振り回すロレンツィオが憎くて仕方がない。彼を殺せばこの呪縛は解けるのか?


「アリウス!」


 勢い良く階段を駆け下りて来て牢の鍵を開けるヨエル。


「どうした?」


「既にエッケハルトが進軍した! 俺達もすぐに出るぞ!」


 私に絡まった鎖を外し、腕を掴まれて上に戻る。私は槍を渡され、そのまま城門で待機していた馬に乗せられる。どうやら殿下と会って話せる時間はないようだった。


 今回、ドミンゴの部隊を別々に進軍させるわけではなく、全ての部隊を合流させてから突撃するようだ。隣では慎重な面持ちのピエルが手綱を握って遠くの景色を眺めている。


「死ぬのは怖かったか、アリウス」ピエルがそう問う。


「いや」馬に跨った私は笑った。「大切なものを失うよりずっと怖くないさ」


「上等な答えだ」


 彼が手綱を思い切り引くと、前足を高々と上げた馬が嘶く。

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