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 彼は苛立った様子で私の背後に回って蹴りを入れようとするが、私は槍の一番下を持って背中に手を回し、槍の棒で攻撃を防ぐ。それを振り払って体を後ろに向かせ、足元に落ちているヴァロの槍を掴んで彼目掛けて投げ付けた。


 それは簡単に手で掴まれ、刃を私に向けて投げ返してきた。私はその槍を払って走り出す。


 激しい攻防が続いた。攻撃しては防御を繰り返し、一瞬でも気を抜けば敗者となる状況だ。しかし、決着はあまりにも早く訪れた。


 全体重を込めた体当たりでヴァロが怯み、隙ができたところに槍を振り下ろそうとしたが――突如として表れた男の槍によって私の攻撃は阻まれた。


「そこまでにしてもらおうか。今回は我らの負けだ」


 この男は何を言っているのだ。負けといっても一騎打ちだけの……と思っていたが、気付いていないのは私だった。


 戦いに夢中になっていたためか、知らぬ間に周囲はドミンゴ兵で埋め尽くされているではないか。どうやら殿下がエッケハルトとドミンゴの連合援軍を送ったようで、ユルゲンの半分は既に制圧済みであった。


 私の背後にはずらりと武装したドミンゴやエッケハルト兵の姿が並んでいる。


「お前達の目的は処刑の阻止であろう? 今の時点で目的は果たせたはずだ。これ以上に何を求める?」


「兄上、邪魔をするなと申したのだが」ヴァロが男に向かって怒りを露わにする。「我の目的は黄金色の竜を滅する事、何故邪魔をする。一騎打ちを中断させるなど非道ぞ!」


「とどめを刺される寸前で救ってやったのだ、ありがたく思うのが道理だと思わんか?」男は彼をぴしゃりとたしなめ、私を睨んだ。「さあ、早くユルゲンから出て行け。手加減しているうちが花だぞ」


「アリウス、俺達は大丈夫だ!」

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