3-4
私達は揃って城へ戻る。
やはりもう殿下は行動を起こしていた。城内は騒がしく、張り詰めた空気が漂う。
急いで大公の間に行くと、既に竜騎士の者達が集結していた。中には父の姿もある。
「殿下、エッケハルトが……!」
「落ち着け、アリウス」殿下は私の肩に手を置く。「エドウィンからまだ返信は来ていないが、救援要請を待っている時間もない。ガルシア、一部隊を率いて即座にエッケハルトへ向かうのだ」
「承知」
「ヨエルもガルシアに続いて自分の部隊と共に行け」
「了解しました」
「アリウスは緊急で作った竜騎士部隊に入り、先陣を切ってエッケハルトへ乗り込み、エドウィン王およびエッケハルトの国民の確保、敵部隊を壊滅させよ。以上、解散!」
父が大公の間を出る時、後に続くヨエルを私は呼び止めて一言、伝えた。
「私の死後の話を聞かせるまで、勝手に死ぬ事は許さないぞ」
彼は微笑して頷き、走り出した。私は向き直り、同じ竜騎士の者達と合流する。
「指揮は俺が執る」竜騎士の中でも最年長であるピエルが言った。「現地に到着したら単独行動に切り替え、エドウィン王とその他生存者を安全地帯へ誘導する。まずはそれを最優先に、生存者の確保が完了したら戦闘を開始する。敵の情報はなく、もしかすると例のマリオネットだとかいう兵器が投入されているかもしれない。気を引き締めろ。……出発だ」
私を含めた五名の竜騎士が城門で待機していた漆黒の馬に乗り、西に数キロ先のエッケハルトへ一番に向かった。第二陣が来る前に任務を終らせ、被害者を最小限に止めなければ。
しかし、意外だった。我がドミンゴよりも巨大なエッケハルトを狙うなんて。以前もユルゲンに襲撃されていたが、その時はそれほどの被害は出なかった。小国と呼ばれるドミンゴを先に潰した方が利口なのだが……。
全速力で草原を駆け抜け、間もなくエッケハルトに到着した。酷い有様だ。家屋は無残にも破壊され、地面にはエッケハルト兵の死体と、砂――どうやらマリオネットも来ているらしく、この様子からユルゲンの本気が伝わってくる。果たして生存者はどれくらい残っているのか。
「行け!」ピエルが大声を上げた。「生存者を最上部の宮殿に集めるんだ!」
それを合図に私達は解散し、私は右側の東地区へ向かう。ここも無傷とは言えないが、他所よりは被害は少ないようだった。
しかし、少ないと言っても戦場である。壁に寄りかかるように死んだ兵士や、うつ伏せのまま命を落とした国民の姿。これが戦争。これが醜い争いの結果だ。
私が大路を通りかかると、右へ行く路地の方から女性の悲鳴が聞えた。
すぐさま向かってみると、女性と数人の子供達が行き止まりに追い詰められている。そこにはマリオネットの姿が……私は容赦なく背後からマリオネットを破壊し、怯える彼女達を導く。
「上の宮殿に逃げろ! ここは危険だ、早く!」
私の言う通りに上への階段を上っていく彼女達に着いて行くと、またしても途中でユルゲン兵と剣を交えるエッケハルトの兵士を発見した。三対一と不利だったものだから、私は手早くユルゲン兵を片付ける。
「ああ、竜騎士様! 国の一大事に……感謝いたします!」
「これはお互い様だ」私は続ける。「エドウィン王はどこに居る?」
「まだ宮殿の方にいらっしゃるかと思いますが……」
「分かった。まだ戦えるか?」
「何とか」
「ならば、ドミンゴの総攻撃が始まる前に生き残った国民達を宮殿に集めてくれ。頼んだぞ」
それだけを言い残し、私は宮殿へと急行する。お願いだから、無事で居てくれ……!
幸いにも宮殿は無傷であったため、避難所としてはもってこいの場所だった。宮殿の下層には竜騎士達の活躍により避難してきた人々の姿があり、負傷者の応急処置等が行われていた。
私は安心し、長い階段の上にある上層を目指した。が、そこには無傷とは言い難い光景があった。
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