死神の涙は美しい
宮崎 ソウ
序章 魂の管理者達
死神――それは現世から死後の世界において全ての魂を管理する名誉ある役職であり、生身の肉体を持つ者達の首を刈り取る悪と認識された存在でもある。空間で彷徨う魂を行くべき場所へと誘導し、時には現世へ足を運び、寿命を終えた魂を迎えに出向く。それが死神であり、死神の使命である。
我々死神は、私達を統治する王というべき人物から依頼を受け、それを確実に実行しなければならない。魂の回収、先導……場合によっては寿命を終える前の魂を刈る時もある。
王から言い渡されるまで、仕事内容は明かされない。どんな魂か、何をするのか、どこに行くのか。私達は知らぬまま王の言葉に黙って耳を傾ける。
例えそれがどんなに残酷で惨いものであっても、私達は王より与えられた仕事を遂行しなければならない。背けば最後、もがき苦しみ、消滅という死を受け入れるよりも恐ろしい事を味わいながら魂が朽ち果てていくのだ。その魂は生命の輪廻より外れ、二度と生を受ける事はなくなる。
では、ここに綴ろう。
生前のドミンゴの竜騎士時代から、肉体を失い、死神として初めての任務を受けた頃。そして、私の戦友ヨエルとの短いようで長い歴史。それは目を覆いたいほど残酷で、強欲者の愚かさを知らしめる物語。
今や国は四つになってしまったが、これから語る話は約三十年前に白の大陸に存在していた三つの国の出来事である。何かを欲して全てを犠牲にした成れの果てや、戦争の無意味さ、馬鹿馬鹿しさを痛いほど伝えることだろう。
私はこの物語を、偉大なる戦友ヨエルに捧げる。私の全ては彼のために。
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