異限境数環光帯
式咲チエ
序章Ⅰ
いつしかこの世界は、人類が生きた証とともにすべて消え去るのだろうと思っていた。海の大波に呑まれるように、嵐が吹きすさんで飛んでいくように――跡形もなく。幾度の奇跡も祝福も、全部巻き込んで。
「地球温暖化」がどうだ、「戦争」がどうだという話を頻繁に聞くようになってから、終末はもう目の前だと諦めたように生きてきた気がする。むしろ、これ以上生きるのを諦めている、というのが正しいか。
すっかり希望というものを見失っていた。
「アレ」が、空に顕現してからは。
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