奴隷のリリイ

@mamap3427

第1話 一日目①

私はリリイ・ハーシェル、今日から新しい主人のところへ行くことになった奴隷です。


「着いたぞ!早く出ろ!」


どうやら新しい主人の家に着いたようで、馬車を引いていた人が声を荒げていた


「アインベルト様、商品をお届けに参りました」


私を連れてきた人が、家の扉をノックしてそう言った。どうやら私達奴隷は人間として見られていないようだ


「ああ、やっとか。待ちくたびれたぞ」


そう言って、強面のおじいさんが扉の隙間から顔を覗かせた


「こちらが商品のリリイ・ハーシェルになります」


私はおじいさんの前に突き出され、商品として問題がないか確認される、おじいさんがとても怖い顔でこちらを睨んできた


「確認した、金はもう払ってある。帰っていいぞ」


「ありがとうございます、またのご利用をおまちしております」


連れてきた人はそれだけ言って帰っていった


「リリイ、家に入れ、お前にはやってもらうことが山ほどある」


おじいさんはそう言って私の腕を引っ張ってきた、少し腕が痛んでくる


「わ、分かりました。具体的には何をすれば良いのでしょうか?」


おじいさんを怒らせないように慎重に言葉を紡いでいく。


「家事全般だ。お前には今日からこの家の家事全てをしてもらう」


「家事…ですか?」


「そうだ、洗濯、食事、掃除、全てお前にしてもらう」


「わ、分かりました」


正直驚きだった、そんな簡単なことでいいのか、と。買取先が男性と聞いた時は夜伽も覚悟していたが、歳からしてそれすらないようだ


「洗濯物が貯まっている、最初はそれを片付けてくれ」


「わかりました。その次は何をすればいいでしょうか?」


「飯を作ってくれ。献立はなんでもいい、出来たら言いに来てくれ」


「分かりました、直ぐに取り掛からせていただきます。」


「私は奥の書斎にいる、何かあったら呼びに来い」


おじいさんはそう言って、奥の部屋へ入っていった


「お風呂は…あそこかな?」


私はそれらしき部屋を見つけ、足早にその部屋へ向かう。案の定、そこは浴槽と簡易的なシャワーの着いたお風呂だった


「よーし、頑張るぞ」


そう気合いを入れるのも束の間、私は目の前の光景に絶望する


「流石に…貯めすぎじゃないですか…?」


目の前には、天井に届くくらいの高さまで積まれた大量の洗濯物があった


「どうすればこんなに貯まるんでしょうか…」


とはいえ、私は奴隷だ。主人に言われたことは必ず遂行しなければならない


「これは…かなり骨が折れますよ…」


私はそう呟いて、洗濯へと取り掛かった


3時間後


「やっと…全部干し終わりました…お庭が広くて良かったです…」


と言っても、一部は魔法で乾燥させたので庭はそんなに干されてはいない


「魔法…やっぱり便利です…」


魔法は、この世界の人間が生まれつき持つ「魔力」を使うことで扱える力のことで、一般的には日常生活の手助けとして使われている


「よし!あとはご飯ですね!」


私は台所へ行って、食材が入っているであろう棚を確認する


「何もない…」


棚を開けてみると、そこには何も無い空間が広がっていた


「買い出し…行くしかありませんか……とりあえずご主人様に言わないと」


私は書斎の前に足を運んで、コンコン、とノックする


「入れ」


そんな声が聞こえたので、扉を開けて書斎へ入る。書斎の中には本特有の暖かいの匂いが充満していた


「失礼します、お食事を作るための材料がないので市場へ買い出しに行きたいと思います、申し訳ないのですが少しお金を貰えないでしょうか」


「いくらいる」


「銀貨3枚ほどもらいたいです」


「わかった、この袋の中に入れておくから持っていけ」


ご主人様が懐から小さな袋を取りだして机の上に置いた。少しチャリンと音が鳴る


「ありがとうございます」


私はその袋を取って、書斎の扉を開ける


「失礼いたしました」


書斎を後にして、玄関へ向かう。本の匂いがだんだん鼻の奥から消えていく


「いってきます」


そう小さく呟いて、玄関の扉を開けた










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