二話 普通を装う女子高生 其の弍
***
放課後のチャイムが鳴り響き渡るとゾロゾロと学校から帰る生徒達の姿を見ながら
遅れて来た
「遅いぞ、リコ。何故お前はそう遅れてくるんだ? 」
「すみません、荒波先輩」
「理由はきかんから速く準備をして打ち始めろ。後少しで大会もあるし、お前は夜桜第二高校アーチェリー部のエースなんだから。もっと部員の模範となるように行動しろ。分かったか? 」
「はい〜」
そして、彼女は射線に立つと矢を弦に番え、的に目掛けて機械を合わせる。
弦から手を離すとトンと言う音共に矢は消え、的にそれが吸い込まれていく。
「九点左五時の方向。最初にしては上出来だ。集中して打ってけ」
荒波の言葉は
番えては打つ。
番えては打つ。
繰り返す後、矢が重なり合いながら点が上がる。
試射が打ち終わると
「矢取りお願いします! 」
しかし、それを見ながら
そんな彼女を見ながら後ろでスコープを眺めていた荒波が喋りかけた。
「リコ、集中力が切れてたぞ。サイトをしっかり合わせるんだ」
「了解です。次行きます」
高校アーチェリーは七十メートル四分六射で、七十二本の矢を打ち切る競技であり、簡単の様に見えて実は奥が深くとてつもない集中力が要求されるスポーツである。
しかし、
天賦の才と言えばそれまでであったが彼女はそれを良いものと思っていなかった。何故なら、普通ではないからである。
そうアーチェリーと言うモノに出会うまでは。
このスポーツは一射一射に多大な集中力を用いるのに対し、
周りは打つたびに集中力と体力を削がれるのに対して、彼女は一才の息切れなく打ち続ける。
去年は新人戦で周りを寄せ付ける事なく優勝すると、そこから一気に注目の選手として名前が上がり、様々な推薦やら何やらが殺到した。
しかし、それら全ての一切合切を彼女は蹴ったのである。
普通じゃないからと言う理由で拒否したのであった。
そして、何やかんやいざこざを乗り越えて今に至る。
彼女は夜桜第二高校アーチェリー部エースであり、部の未来を担う者としてその射場に立っているのであった。
七十二射全ての矢を打ち終えると皆が自主練をしだす中、
少しして
「荒波先輩はもう打たないんですか? 」
「また、それか。お前が負けず嫌いなのは分かる。だがな、あの一回、負けた位で俺に固執するな。今のお前は去年と違って弱点はないし、あの時はお前のほんの少しだけ空いた意識の穴を通した一回限りの大博打だ。もう勝てないよ。それに俺は腕の怪我で当分は無理だ。お前は俺と違ってまだ先がある。だから、自分の事をもっと考えて練習しろ」
「それでも先輩は私に勝ったのです。普通の女子高生は多少勝ち負け拘ります。ならば、自分も拘りたいのです。まだ、腕が怪我しているなら致し方有りませんが。腕が治ったら必ずリベンジさせて下さい」
***
夕方を告げる烏の鳴き声が聞こえると荒波が練習の終了のホイッスルを鳴らす。
彼の一言で練習が終わり、部員らは帰りに何処を寄るか、今日の宿題の事をなどの話をしながら帰る準備をする中、
荒波はいつもの事と分かると
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