第9話 突発! 渋谷ダンジョン下層攻略
当初の予定では、上層でホムラちゃんと合流した後、俺の
しかし気が変わった。このまま普通に食レポを配信するだけでは、ホムラちゃんへの誹謗中傷が収まらない可能性がある。
故に、別方向からインパクトを与えて話題を逸らす。そして動画の信憑性を強める。
例えばリアルタイムで下層を攻略すれば、それなりに効果はあるだろう。多分。
「ちょ……本気ですか!? トオルさんのお店まで徒歩で向かうんですか!? 急にどうしたんです!?」
「ちょっとした腹ごなしだよ。食事の前に軽く運動すると、より美味しく感じるって話あるでしょ? あと下層の入り口までは
:!?
:!?
:コイツ何言ってるんだ!?
:料理動画かと思ったらダンジョン攻略が始まった
:ちょっと何言ってるのかわからないですね
:渋谷ダンジョンってそんな軽く攻略できるもんだっけ……?
:無理。国内じゃ最高クラスの難易度だぞ
「7階って、最深部なんですが……じゃなくて、そもそも下層の魔物はめちゃくちゃ強いですよ! 私も一人じゃ太刀打ちできません。その、トオルさんが強いのはわかっているつもりですが、大丈夫なんですか……?」
「へーきへーき。ホムラちゃんは大切なお客さんだから、もちろんバッチリ護衛するから。多分一時間もあれば着くよ」
「下層攻略を……一時間で……」
嘘は言ってない。確かに物理的な距離はそれなりにあるが、ホムラちゃんの身体能力なら大した問題ではないだろう。魔物という障害物を俺が取り除けば一時間程度で着くはずだ。
呆気に取られた表情のホムラちゃんだったが、何かに気づいたような表情を見せると、こちらに近づきマイクに拾われない声量で話しかけてきた。
(もしかして気を遣ってくれたんですか?)
(今回ホムラちゃんは大切なゲストだし。可能な限りはフォローしてあげたいと思って)
(こ、これくらいよくある事なので、気にしないで大丈夫なのに……)
(それに俺にとってもメリットがある。俺の動画をフェイク扱いしてる奴らを、そろそろ黙らせておきたいからね。……それに)
(……?)
(俺の戦い方、みたくない?)
(ッ!)
ホムラちゃんの黄金色の瞳が、蝋燭の炎のように揺れる。
さっきから実は、熱の籠った視線をずっと感じていた。
(なんで、分かるんですか……?)
(なんとなく。そんな眼差ししてる)
こういう視線を、俺は何度か見たことがある。
多分、ホムラアカリという人間の性質は、
「……分かりました。やりましょう、下層探索」
「おっけー! じゃあ早速移動しようか。しっかり掴まっててね」
ホムラちゃんの手を握って、中層5階に
渋谷ダンジョンの中層最深部だ。ここから先は下層エリアになる。
:てかマジで下層の入り口じゃん。本気でやるつもりなの?
:渋谷ダンジョンの下層攻略動画とか見たことないな……
:そりゃ高難度エリアで配信してる余裕とかないからね。余程の実力者でない限り
:下層とか写真でしか見た事ない
:もしかしたら歴代初かも!? めっちゃ楽しみ!!
:マジで生配信かよ。ネット使えるエリア増えたって噂マジだったのか……
:またあのイかれた戦闘シーンが見れるのか、ワクワクしてきた
お、やはりダンジョン攻略になると期待するようなコメントが増えたな。
やっぱり攻略動画というのは需要があるらしい。
「ホムラちゃんは下層の魔物と、どの程度戦える?」
「パーティーを組めば、何とか。一人じゃ厳しいです」
「じゃあ巻き込まれないように、後ろで見ててね」
「は、はい……ッ!? トオルさん、後ろ後ろ!」
「ん?」
振りむくと、そこには二つ首の龍、ダブルヘッドドラゴンの姿が。
ああ、中層のラスボスだっけ。いきなり中層の最深部に転移したんだし、そりゃ居るか。
:え、こいつ中層のラスボスじゃん
:ダブルヘッドドラゴンはニュースで見たことある
:ホムラちゃんが昇格した時話題になったよな、もの凄い死闘の上倒したっていう
:本物!??
:こいつ倒したらAランク探索者って認められるらしい
:前に見た映像と声も背景も一致してる。マジで本物?
「「GyaSyaaaAAA!!!」」
「お前はお呼びじゃないから」
下層探索を前にして、中層の魔物に用はないし、空間操作への対策を持たないコイツは敵ではない。
空間ごと二本の首を捻じ切ると、ドロップアイテムをぶち撒けてダブルヘッドドラゴンは消滅した。
:!?
:!?
:!!!???
:嘘だろ
:瞬殺した
:神回確定
:すげええええええ
:今何したの? なんか景色歪んでなかった?
:空間ごと首捩じ切ってるのでは!?
:空間操作系……? 一部の魔物が使うっていうアレなのか?
「……うわぁ、やっぱり規格外」
「じゃあさくっと下層行きましょうかー」
背後の巨大な門を潜ればすぐに俺のホームグラウンド、下層の入り口が見えてくる。
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